人生講座(2)節約したお金を狙う人たち (8/11)
人生講座の第一回に「貨幣経済のもとでは節約することはできない。かえって節約は消費の増大になる」ということを書きました。第2回目は「そんなことはわかっているのに、なぜ政府や偉い人は節約を国民に勧めてきたのか。その目的はなにか?」を考えてみたいと思います。
もし世の中が安定していて、年金なども崩壊しなければ、いざというときに少しの貯金は別にして、その年に稼いだお金はおおよそその年に使ってもそれほど不安はありません。というのは、人間は小さい頃から勉強し、がんばり、仕事をしてお金を稼ぎます。そうして少なくても多くても、稼いだお金で楽しい人生を送るのが本筋だからです。
もちろん、楽しさはお金の額とは直接的には関係がありませんが、小さい頃にお母さんに「一所懸命、勉強しなさい」と言われるのは、お母さんは子供に、少なくとも人並みに、できれが人より少しは良い生活をさせたいと思うからです。
だから、月給が20万円より、30万円の方が良いと素直に考えた方が良いでしょう。買いたい物も買えるようになりますし、たまにはおいしい物も食べられるからです。
30万円使って楽しい生活をすれば良いのに「地球環境のために」 「節約する」ということは、お母さんがせっかく与えてくれたチャンスをいかさずに、無理矢理、暗い人生を送ることを意味します。
もちろん、30万円を節約して20万円で生活しても12月になったら12ヶ月の間、節約して貯めた120万円を下ろしてパッと使うというのならよいのですが、それでは節約には入りません。
毎月使わずに一度に使うというのは、個人としてはお金をいつ使うかの問題だけですし、環境としては120万円がダブルで使われる(銀行からお金を借りた他人が120万円、それにさらに自分が120万円使う;前回説明)、余計に環境に悪いのです。
・・・・・・・・・
それではなぜ、政府は「もったいない」とか「節電・省エネ」とかいうのでしょうか? まず考えられることは、国民が節約するとそのお金が政治家や官僚に入るからかもしれません。
つまり、かつて(たとえば、戦後や高度成長時代)は国民が節約したお金は銀行を通じて民間の企業に行き、そこで国民が欲しい製品を作ってくれました。つまり、普通は「節約すると、そのお金で企業が自分の欲しいものを会社が作ってくれた」ということになります。銀行はその仲立ちをして社会に貢献していました。
簡単に言うと、ある人が100万円を預けると、企業が100万円を借りて、120万円で売れるものを作り、自分は10万円を稼ぎ、銀行に110万円を返し、銀行は5万円をとって、その人に105万円を返すという具合です。これなら、預金した人は5万円、銀行も5万円、企業も10万円と全員が喜んだ時代でした。
ところが今から20年前にバブルが崩壊して、成長が止まりました。経済成長の時代に100万円借りていた企業が(簡単に言うと)居なくなってしまったのです。同時に「環境の時代」になり「もったいない、節約しよう」という人が現れました。かつて100万円を銀行に預けた人は節約して150万円預けるようになったのですが、借りる企業が居ないので銀行にお金が留まるようになります。
企業は経済成長が止まるだけでも困るのに、「節約ブーム」で50万円を残すようになった(100万円貯金していた人が150万円貯金するから)ので、それだけ売り上げが減って、お金を借りて増産するどころか、事業を売らなければならないようになります。
この150万円が1年もたたずに引き出して使ってくれるとまだ何とかなったのですが、「年金不安」と「環境を悪くするから」ということで預金を下ろして消費することもしなくなったのです。
・・・・・・・・・
そうすると、銀行にお金があふれたので、まず金利をほとんどゼロにしたのですが、それでも銀行が赤字になります。そこで銀行の首脳部が政府にかけあって「余ったお金で国債を買いますから、国債を出してください」と言います。最初のうちは政府も「赤字国債になるからダメ」などと言っていたのですが、企業が借りなければ政府が借りないとお金のつじつまが合わないので、赤字国債を発行し始めます。
これでとりあえず日本のお金のつじつまは合うようになりました。(簡単に言うと)ある人が150万円を銀行に預けると、国が赤字国債を出して銀行がそれを買い、国は1年に5万円の利息を銀行に払います。もちろん、国の仕事は福祉にしても教育にしても(お金を配るだけのことで)赤字ですから利息に払うお金も国債を売って何とかします。
つまり「国民が節約し、企業が借りなくなったので、国が国債を出して借りる」ということが20年間にわたって続いてきたのです。国に集まったお金は、1)お役人の給料や国の施設、2)天下り先の給料(天下り先には国債のお金が行く)、3)箱物行政で施設ができる(八ッ場ダムのようなもの。半分がムダで、半分ぐらいは国民のためになる)、4)ムダな補助金を配る(たとえばバイオ燃料開発に6兆円を出し、すべて失敗して失う)などとして消えていきました。
・・・・・・・・・
そして20年。ついに赤字国債が1000兆円に近づいたので「財政健全化」のために消費税の増税を行います。つまり、国民が節約したお金は国に渡り、政治家やお役人本人や、彼らと親しい人のところにいきましたが、なにしろ効率の悪い仕事に使われるので、半分ぐらいはムダに消えていったのです。
節約して150万円預金した人はどうなったでしょうか? 国が150万円を借りて、半分は役人の天下りなどに使い、半分は預金した人も利用した箱物(公民館など)を作り、そこに働く人の給料を払い、冷暖房費で消えていったのです。簡単に言うと、150万円のうち、100万円を捨て、50万円ぐらいを公共サービスとして受け取ったということになります。
かくして国民が節約したお金は政府が使ったので、環境という面ではなにも変化はありませんでした。つまりこの場合も「節約」は「環境を改善する」事にはなりません。
さらに、国の借金が増えたので、「財政再建」のために消費税を増税することになり、その人は税金で150万円を取られます。国民はますます不安になり、銀行に預けてある150万円は引き出さず、税金は150万円取られるので、使うのを150万円減らさなければなりません。ますます不景気になり、政府に親しい一部の人を別にして、国民総貧乏化が進行中ということになりました。
でもお役人は裕福になります。なにしろバブルが崩壊してから20年。国民に節約さえ呼び掛ければ赤字国債を出してお金が入ってきますし、赤字国債が貯まりますから、それを補填するためにさらに消費税を上げればまたお金が入ってくるからです。奇妙なことですが、善意で節約をしてきた人はずいぶん日本国民を苦しめましたとも言えるのです。
「環境のために節約を呼び掛ける」というのは「お役人がお金をもらう」ということでもあったようです。(さらに、消費税を増税したお金がどこに行くのか、私たちの人生はどうしたらよいのかなど次回以後に踏みこんで考えてみます。)
(平成24年8月11日)
--------ここから音声内容--------
人生講座の第二回であります。人生講座と称しながら、お金のことばっかから入ってるんですが、まぁのんびりとやりたいと思います。人生講座の第一回はですね、「貨幣経済のもとでは節約はなかなかできない」と。「節約をすると消費は増大する」という簡単な関係を書きましたが、そんなことはですね、経済をちょっと知ってるっちゅうか、別に経済を知らなくてもですね、ちょっと考えれば分かるということなのに、「なぜ政府や偉い人は節約を国民に呼び掛けてきたのか。その目的はなにか?」ということを普通に考えてみたいと思います。
もしも世の中が安定していてですね、年金なども崩壊しないということになりますとですね、ちょっと病気するとかそういう、いざというときの貯金を別にすればですね、その年に稼いだお金はだいたいその年に使ってもそれほど不満はないですね…不安はない。だいたいですね、人間は小さい頃から勉強したり、がんばったり、仕事をしてお金を稼いだりしますね。で、どうしてそんなにお金を稼ぎたいのか?っつったら、「楽しい人生を送りたいから」と。まぁ、簡単に言えばそういうことですね。
もちろん「楽しさ」っていうのはお金の額とは直接的に関係がないんですけども、たとえばお母さんの立場にしてみればですね、「一所懸命、勉強しなさいね」って言うのは、お母さんとしては、子供が心配なんですよね。大きくなって人並みに、できれば人よりか少しは良い生活させたいと思うので、お母さんは子供に「一所懸命、勉強しなさい」とこう言うわけですね。っていうことはどういうことか?って言ったら、月給が月々20万円よりか、30万の方が良いということが素直な感じなんですね。ま、買いたい物も買えるし、たまにはおいしい物も食べられると。
ところが、こうせっかく20万円を30万円になってもですね、「地球環境のために」とか「節約が大切だ」ということで、せっかくお母さんが一所懸命勉強させてくれたのに、チャンスをいかさずに、無理矢理って言いますかね、暗い人を送ってる人もいるんですよね。ただ、30万円節約して20万円で生活してもですね、毎月10万円ずつ貯めて、それを12月の終わりに120万円下ろしてパッと使うんならね、これは別にどうってことないですね。これは使い方が違うっていうか、使う時期が違うだけですからね。
ただ、毎月毎月使い切ってしまって銀行に預けなければ、それだけ銀行に預かった金を使う人がいませんので、その方がほんとは節約になるんですね。変なことですけど、30万ずつ給料を貰ったら、30万全部使うのが一番節約になって。ま、見かけですよ。もう少しこう物凄い複雑なことを考えると別なんですが。ま、ここだけ考えればですね、こういうことになる。
で、ところが一回、一年間120万円を銀行に預けて、それで銀行からたっぷりそれを使ってもらって、それで更に自分が下して120万円使うと倍の消費になるってことは前回説明しました。そうするとですね、政府とかそういうのは「もったいない」とか「節電とか、省エネ」つってんのは、あれ何なのか?ということを考えなきゃいけない。もしかすると、国民が節約すると、そのお金はどこに行くのかな?っていうと、どうも政治家とか官僚にいくのかもしれませんね。そうしたらまぁ、「お金が欲しい」ということを「もったいない」という言葉で言うと。「節約」という言葉で言うということも考えられるので、一応そこをチェックしてみたいと思いますね。
簡単にまぁこれを言いますとですね、ある人が100万円銀行に預けて、企業が100万円を借りて、120万円で売れる物を作り、自分は10万円稼いで銀行に110万円を返すと。そうすると、銀行はそこから5万円を管理費で取って、それでその人に105万円を返すと。預金した人は5万円の利子を貰い、銀行も経費5万円を貰い、企業も10万円稼ぐと。まぁ、全員が「いいな」という時代だったわけですねぇ。これはまぁ「消費時代」ですね。
ところが20年ぐらい前にバブルが崩壊して、成長が止まるわけですよ。非常に簡単に言うと、100万円借りてた企業が、借りなくなるわけですね。同時に「環境の時代」とか「もったいない」ってことになって、100万円余してた人が、150万円余すということになりますね。それで、しかも、「年金も不安定」だということで、今までは消費時代でしたから、たとえば節約して10万円ずつ貯めても12月の末に120万円下すというようなことをやってたんで良かったんんですけども、「年金も不安定だし、環境も悪くするから」とみんなが言うんで、この150万円をですね、そのまま銀行に預けとくというようなことになってきたわけですね。
つまり、国民の貯蓄がどんどんどんどん増えていくというような時代に入っていくわけですね。そうしますとですね、これどうなるのか?と。銀行は困っちゃうですね、まずね。預金はしてくれるんだけど、借りる先が無いと。で、このまま銀行に置いとけばですね、銀行はまぁ、たとえば100万円当たり5万円経費が掛かるとすると、どんどん赤字になって潰れていきますよね。ま、潰れていった銀行もあるんですが。
そこでしょうがないから、政府にかけあう以外無いわけですね。政府にかけあって…裏でかけあってですよ、表からかけあうと新聞なんかに出ちゃいますから、バレちゃうんでですね。「余ったお金で国債を買わざるを得ないんで、国債を出してください」と言うわけですよ。政府も最初は渋ってですね、「赤字国債だからなぁ」と言ってるけど、そのうちもう、どうせ日本の中で余ってる金は誰かが借りなきゃいけないんで、しょうがないから政府が借りるわけですよ、赤字国債。
簡単に言いますと、ある人が150万円銀行に預けると、国がこの150万円借りて、それで1年に5万円の利息を銀行に払うっていうことになるわけですね。銀行もカスカス…昔は5万円貰ってたやつを4万5千円ぐらいにして、5千円は借りた人に利子をつけるかってことで、今みたいに0.1%とか…0.1だからもっと低いんですよね。1万円もついてないって感じなんですが。千五百円の利子を渡すと、まぁこんなことになるわけですね。まぁとにかく、だけども、つじつまは合うようになるわけです。「国民が節約し、企業が借りなくなったので、国が国債を出して借りる」ということが20年間続いたわけですね。
で、この国の方に今度国民の金が移るんですが、それをどういうふうに使われるか?って言うと、まず「お役人の給料とか、国の施設」に使いますね、まずね。これはとにかく、それは使うわけです。それから「天下り先の給料」。これはまぁ、直接的じゃないんですけども。天下り先には事業が…国の事業がいきますからね。そこでお金がいくわけです。「箱物行政ありますから施設ができる」わけですね。これは全部無駄じゃなくて、我々も国民も利用できますから半分ぐらいは国民のためになるわけですね。
それからまぁ、バイオ関係…燃料やろうとか言ってですね、バイオマスニッポンとかですね、健康ニッポンとか、次々と打ち出したんですよ。これはだいたい2000年ぐらいに打ち出すんです。なんでかって言うと、「金が余ってますから使わなきゃいけないんで、政策を打ち出す」わけですね。金を多く使った官僚が出世していきます。で、それは全部失敗するのが予定されているので、もうじゃんじゃんと使うと。
ただ、そのお金を貰う人がいる。失敗するから国民のためにならないけど、貰った人は貰うということですね。こういうことを20年間続けておりましたら、赤字国債が実は1000兆円に近づいちゃったということで、今度は増税しなきゃなんないってことになるわけですね。もちろんあの、国民が節約したお金で国に行ったお金はですね、まず政治家やお役人本人が取り、それから彼らと親しい人のところに行くんですね。ただまぁ、効率の悪い仕事に使われるので、半分ぐらいはムダで消えていくわけです。
企業はですね、100万円借りたら120万円儲けなきゃいけないと、こう…120万円の物を作んなきゃいけないと思うんですけど、国はだいたい100万円を借りたらですね、20万円ぐらいはまぁ多少意味のある仕事をするんです。あとの80万円はもう消えてしまうんですよ。消えてしまうってことは、誰かがまぁ親しい人が取ってご飯食べたりなんかして、海外旅行いったりして使っちゃうっていうことを言ってるんですね。
で、これはですね、結果としてはもちろん、環境という面では何の変化もありません。つまり、国民が150万円を節約したら、お役人が150万円を使うわけですからね。お役人とお役人の親しい人が150万円使うわけですから、環境を改善することにならないんですよ。「節約」ってのは、もともと「環境を改善できない」んですよね。
で、今度は、今回のことですけども、「財政再建」のために消費税を増税することになります。で、消費税を増税するのはどれだけ増税するか?っていうと、国は150万円を借りて150万円を返せないわけですから、税金は150万円取られるんですね。そうすると、その人はですね、銀行に預けてあった150万円を引き出して、税金で150万円払えばチャラっていうか、自分の金をただ税金に払ったっていう、150万円損したってことになるんですが。
実際はですね、ますます世の中が不安定になっていくんで、その人は150万円下さないわけですよ。150万円下さずに、税金150万円払うので、さらに総貧乏化がいくということですね。だいたい半分ぐらい、これで検討は終わりました。つまり、「節約はお役人を裕福にする」んですね、ええ。とにかく、国民に「節約、節約」と言えば、赤字国債がどんどん出せてお金が入ってくるわけですね。で、赤字国債が今度貯まれば、今度「財政健全化」っていうんで消費税を、税金を上げられますからまたお金が入ってくるわけですね。
つまり非常に変なことなんですが、「善意で節約をした人はずいぶん日本国民を苦しめた」と言えるんですね。つまり、「環境のために節約を呼び掛ける」というのは、「お役人がお金を貰う」っていうことでイコールであります。ま、これからさらに踏みこんでいきますが、それはまた次回にいたします。
(文字起こし by haru)