時事寸評 ストロンチウムの検出と反社会的報道 (7/26)
昨年3月、4月に測定されたストロンチウムの汚染がそれから1年3ヶ月ほどたった2012年7月に発表された。発表された値について、長く「被曝の危険性」を報道していた朝日新聞は一転して「大気圏核実験より少なく、チェルノブイリなみだから大丈夫」という記事を出した(2012年7月14日朝日新聞デジタル)。
この記事には科学的に3つの錯誤がある。第一の錯誤は、「大気圏核実験より低い」ということが「安全だ」という結論になっているが、大気圏核実験による被曝が健康に問題がなかったという証明はない。当時の発がんの大半が大気圏核実験である可能性を残している.だから「核実験の時より低いから安全」という結論はまったく科学ではない。
第二の錯誤は、「ストロンチウム90の危険から国民を守る法規」について言及していないことだ.これは原発事故以来、政府が終始一貫、とっている政策だが、マスコミが政府に唯々諾々と従っているわけではないと思う.ストロンチウムの規制値は厳然として存在する.
政府は放射性物質について法規とその精神によって国民を保護しなければならないし、マスコミは法治国家として報道するべきである.法規を無視した発表や報道は反社会的である.暴力団などの反社会的団体がなぜ「反社会的」であるかというと、国民が合意した法規と法規の精神に反した行動を取るからだ。
第三の錯誤は、測定点が少ないときに、それが日本の全体の汚染を示してもいないし、もっと高い測定値がある可能性が高いことに言及しておかなければならない。とくにもっとも汚染されていると考えられる福島の測定値がないのだから、新聞として言及しないのは故意と勘ぐられても仕方が無く、この記事によって被曝する人がでる可能性もあることから、報道としてはやや犯罪的とも言える.
第二に、測定結果が1年以上も遅れたこと、もっとも数値が必要な福島県の数値がないことについて、文科省は「福島県の測定器が壊れている.ストロンチウムよりセシウム、ヨウ素の測定を優先した」とコメントしている.
このことも2つの科学的ではなく、反社会的な内容を含んでいる.まず第一に「土壌の汚染度を測定するのは、福島にある測定器出なくても良い」ということだ。測定するものを運搬してしかるべきところで測定するのは当然である.最も汚染された福島のものを最優先で測定するのは当然である.たとえばインフルエンザが流行したときに、流行していないところを測定しても意味が無い。
第二に、ストロンチウムの測定は長くて2週間程度かかるが、1年も時間を要するものではない。またセシウムとともに原子炉中に6%も存在するストロンチウムであるから、多くの地点を測定しなければならない。
いずれにしても「国民を被曝の危険に晒す」、「自ら法規の精神に反する反社会的な報道を続ける」という点で、誠実ではない。
(平成24年7月26日)
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少し急ぐ内容ですので、時事寸評として掲載したいと思います。ストロンチウムの汚染の状態が発表されました。時期がまたひどく非常識的なんですが、昨年3月、4月に測定されたものを一年3か月たって発表するということも、きわめて異常でありますが、これについて被曝の危険性を報道した朝日新聞がですね、実に大きな三つの錯誤をしております。このぐらい大きな錯誤ですとね、朝日新聞にも科学部の記者がいるという点を考えれば、やや作為的かなと思われても致し方のない大きな間違いだと思います。
まず第一の自然科学的な錯誤はですね、大気圏核実験より低いというグラフを出しておりますが、そして安全であるという結論になっとりますが、大気圏核実験の時の被曝でですね、健康に障害がなかったかという証明はありません。当時の発ガンの大半が大気圏核実験であった可能性はあるわけですね。従って、核実験の時より低いから安全であるっていう結論はまったく科学的ではありません。
このような幼稚な間違いはですね、時々学生…それもですね成績の悪い学生で見られることで、大学の先生はそういう時ですね、「なんでそんな結論になるの?」と言ってですね、柔らかく注意をすれば、かなり成績の悪い学生もですね、気がつくような間違いであります。
それからもう一つはですね、この記事に安全性とか危険性を論じているんですが、ストロンチウム90に関する法規について、もしくはその法規の精神について、まったく言及しておりません。自らの判断を…記者の自らの判断を述べております。まず私たちは社会でどのくらいの放射線であればいいか、それも核種ごとにすべて決まっておりまして、セシウム、ストロンチウムもちゃんとした表として載っとります。土壌の汚染についてもしっかりとしたものがあります。それに対してどうであるかということを書かなければいけません。
つまり政府もマスコミもですね、法治国家てして法規とその精神によって国民を放射性(物質)の被曝から防がなければならないので、この法規を無視した発表とか報道は反社会的ですね。よく暴力団が反社会的団体と言われるわけですが、なぜ暴力代が反社会的かと言うとですね、我々が合意した法規とか法規の精神に反した行動を取るからにほかなりません。つまり現在は残念ながら政府も報道機関のある所もですね、実は暴力団並みの反社会的団体であるということになりまして、とても理解しにくいところであります。
第三の錯誤はですね、今回のように測定値が少ない時にそれがあたかも日本全体の汚染を示すような記事にしたり、もっと高い所がある可能性が高いことについて言及しないっていうのは問題であります。特に今度は福島の測定値だけ「ない」ということですね。これは考えられません。日本で原子力発電所の事故があったのに、中国の測定値を出すようなもんですね。
こういう場合は最も可能性の高い所、汚染の強い所を出すべきであってですね、それについては文科省がですね、福島を抜いてストロンチウムの値を発表したということは、普通ではですね…普通の朝日新聞ならですよ、これまでの朝日新聞なら、政府を強く批判し「ストロンチウムの値を出すなら福島を出せ」というふうな記事を書くのが朝日新聞の記者でありましたので、これについても私もほんとにビックリいたしました。
この測定結果が一年も遅れていること、福島県がないことについて文科省は「福島県の測定器が壊れている」ということと、「セシウム、ヨウ素の測定を優先した」という二つを挙げております。「もう少しうまいウソをつけ」なんて言っている人がいますけど、それはウソはよくないことですが、福島県の測定器が壊れているから福島県の土は測れないというのは、あまりにも幼稚な虚偽であります。もちろん福島市の土を取って別の所で測定すればいいわけですから、なんの問題もありません。
例えばインフルエンザが流行している時に、わざわざインフルエンザの流行していない所に行って測定してですね、「菌が見つからなかった」と言っていることと同じですね。「インフルエンザが流行している所はなぜ測らないんですか」と言うと、「流行してたら怖いから行かなかったんです」と、こういった話と同じですから、まったく意味をなしません。
それからストロンチウムの測定は確かに二週間程度かかる場合もあるんですけども、一年というのはその常識を反しております。またセシウムとともに原子炉中に6%も存在するストロンチウムですから、必ず測定はしなければいけません。
ま、こういう点でですね、国民を被曝の危険にさらすという政府の方針、自らの法規の精神に反する反社会的な報道を続けるというような態度でおいてですね、私は非常に誠実味の欠ける政府であると思います。実は今日、別件で厚生労働省の大臣が、「法規は守ってもらわなければいけない」というコメントをしておりました。いったい誰が何を言っているのか、それについてもですね、政府内の統一を求めるところであります。