正しい電気供給量と電気料金(2) 適切な電気料金 (7/20)
外国からも電気が輸入され、公正取引委員会が監視し、正当な競争が行われていたら、電気料金は公平な競争のもとで自然に決定されますので「適切な電気料金」などを議論しなくても良いのですが、日本は島国で外国からの電気の輸入はできず、独占的環境で電気が供給されていますので、適切な電気料金を決めなければなりません。
これまで政府と電力会社で電気料金を決めてきたのですが、これは「仲間内」の協議のようなもので、政府(官僚や政治家)も電力会社も電気料金が高い方が良いので、少しずつ高くなっていきました。そこで、今回、原発事故をきっかけにして日本の電気料金が奇妙な規則(コストで売値を決める)によって決まっていることも知られるようになりました。
自由な社会で「競争がなく、コストがかかったらそれで売れる」というような商品はもともとないのですが、電力はその特殊なケースです。従って「原発を止めると石油を買わなければならないから」というようなことで電気料金を決めると「コストがかかればそれだけ高くなる」という罠にはまってしまいます。
これを防ぐためには類似の産業を比較対象とすることで、たとえば鉄鋼業と電力業を比較します。
最終製品を見ると鉄鋼業は鉄、電力業は電気ですから全く別ものですが、製造方法はほとんど同じです。鉄鋼業は石炭を買ってきて溶鉱炉で燃やして鉄を作ります。この場合、原料となる鉄鉱石から鉄になる「物質の流れ」は「賃加工」としてみれば考えなくても良いものです。
これに対して電力は同じく石炭を買ってきて発電所で燃やして電気を作ります。だから、コスト構成は鉄鋼ときわめて類似しています。日本の鉄鋼は約9000万トン生産し、その約4割を輸出していますが、輸出競争力は充分です。
従って、鉄鋼が国際価格で商売をしているので、電力も国際価格で販売できるというのがこの場合の基準になります。従って、日本の家庭用電力料金は国際価格の2倍です。また、原発をやるかどうかは国際価格には関係がありませんし、原発の廃炉、安全性や廃棄物を含めてのコストであることも当然のことです。
従って、「適正な電力料金は国際競争力のあるものであり、それは現在の2分の1程度」というところから出発する必要があります。
原発の廃止に伴って電力料金が上がるという計算がありますが、内容を見てみると「コスト」からスタートしています。コストからスタートすると、日本の電力会社のように、設備の発注は市場価格の2倍で、燃料の買い付けも市場の2倍でというような放漫経営ですから、高いコストがかかっています。
産業界に少しでも身を置いた人ならわかりますが、時として「そんなコストで本当にできるの?!」ということが起こるのですが、なんとか頑張っているうちに数年前には考えられないほど安く製造できるようになるものです。日本の鉄鋼が世界に通用するのは、そのような厳しい競争環境を切り抜けてきたことによります。
このように鉄鋼生産などから「基本的に適正な電力料金」をまず決めて、それからスタートしないと電力料金が高く、それは日本の発展に大きな阻害要因になるでしょう。この問題を抜本的に解決するのは「適正な競争環境」であることは、先日アップした「正しい電力供給量」でも同じ事が言えます。
(平成24年7月20日)
--------ここから音声内容--------
昨日、正しい電気供給量というものを示しましたが、二回目は「正しい電気料金、適切な電気料金」というものを考えてみたいと思います。
仮に電気がですね、外国からも電気が輸入されて、公正取引委員会がよく監視をし、国内でも正当な競争が行われておればですね、電気料金っていうのは自然に決定されるわけですね。ですから、「適切な電気料金」というものを議論しなくて良いわけであります。例えば、日本の中の自動車であるとかですね、そういったものが典型的なんですが、「日本の車は非常に安くて性能が良い」と、こういう状態になるわけですね。日本人は非常に技術力が高いんで、工業的な製品っていうのはですね、非常に安くできるわけです。
ところが、電気だけは国外から輸入ができないので、しかも国内の産業を独占的に決めてしまったということで、これはですね、別途に適切な電気料金を決める仕組みが必要なわけですね。で、今までもそれはやってたと言やぁ、そうなんですね。政府とか電力会社の間で電気料金を決めてきたわけですが、これはいわば「仲間内」なんですよ。なんで仲間内かと言いますと、電気会社が儲ければ、その儲けのうちから官僚や政治家にカネを出す。そのカネを貰って、政治家や官僚が楽しむというか、仕事をするっていうか、まぁそういうふうになりますんでね。政府と電気会社の間で電気料金を決めるっていうのは、言ってみれば、「仲間内」で決めるわけですから、だんだん高くなってきたということですね。
この根源は、「かかったコスト分だけは必要ですよ」という、なんか、なんとなく分かりやすいような言葉なんですが、実はこれは非常に非常識なわけですね。我々のような自由な社会ではですね、「競争がなくて、これだけコストがかかったらそれで売れる」というような商品はもともとないんですよ。勿論、この食品業なんかもそうで、近くに良い店ができて、美味しくていい店ができたらですね、泣く泣く値段を下げざるを得ない。最近では土建業もそうでですね、最低入札価格で入れて採算度外視して受けると。その中でなんとか頑張るというのが普通のケースなんですね。
ですから例えば、今回のように、もうふざけたことばっか言ってるような、私には気がしますが、「原発を止めると石油を買わなきゃいけないから石油代が高くなる」、そんなことはありません。原発でかかっている費用が無くなりますからね。じゃ、「原発はあるんだから、かかるんだ」と。いや、それは経営責任なんですよ。それは普通の店でしたらね、出店したけども、その出店したとこがうまくいかないと。その出店のコストをですね、お客さんにかける…そんなことはできないんですよね。それは厳しい世の中ですから、原発で失敗すれば、その失敗の責任は電力会社がとるというのが普通なんですね。
ですからまさかですね、原発の事故が起こってから社長が辞めた時に5億円の退職金を出すなんてことは、勿論有り得ないわけで。その「有り得ないことを全部足してコストをかけてる」と、この罠に引っ掛かってしまうわけですね。本当はマスコミとか、識者が、ここを割合と厳しく指摘していただくといいんですけども、残念ながら日本はそういうことになってないもんですからね、ここで一応、その「適切な電力料金」とは何なのか?ということをですね、まず根本から考えてみたいと思ってるわけですね。
それにはあの、鉄鋼業と電力業を比較すると一番いいんですが。最終製品から見ると鉄鋼業ってのは鉄ですしね、電力業は電気ですから、「全然違うじゃないか」というふうに思われるかもしれませんが、製造方法はほとんど同じですね。鉄鋼業は石炭を外国から買ってきまして溶鉱炉で燃やして鉄を作ります。この時ですね、「鉄鉱石が要るじゃないか」っていうんですが、こういうのはですね、「賃加工」つってですね、基本的なコストというのは鉄鉱石を抜いて考えることができるわけですね。これはまぁ普通のやり方なんです。
これに対して電力は、「賃加工」って言えば「賃加工」なんですが、石炭を買ってきて発電所で燃やして電気を作るわけです。ですから、コスト構成っていうのはですね、鉄鋼と電力ときわめて類似しております。日本の鉄鋼業っていうのは約9000万トン1年に生産してまして、その約4割から最近では5割になろうとしてるということなんですが、輸出をしておりまして非常に安いわけですね。性能と比較すると非常に日本の鉄鋼は強いわけです。つまり、「鉄鋼は国際価格で商売しているので良い」ということですね。
ところが、家庭用の電力料金っていうのは、今は国際価格の2倍ですから、「現在の2分の1が基準になる」んですね。原発をやるとかやらないってのは、これ別の問題なんですよ。要するに、「電気会社は電気料金を2分の1でスタートせんといかん」っていうことなんですよ。今の値段から何%上がるとか下がるとかじゃないんですよね。今の料金、コスト自身が不当なんですよ、不適切なんですね。今の料金が不適切なんです。ここがもう非常に考えなきゃいけないとこですね。勿論、原発の安全性とか、廃棄物なんかの問題を含めなきゃいけません。
つまり、「適正な電気料金は国際競争力のあるものであって、それは現在の2分の1程度である」というところから計算をスタートせんといかんですよね、ええ。こういったコストからのスタートっていうのは非常にマズイわけです。例えば、日本の電力会社は設備の発注はだいたい市場価格の2倍で発注しておりますし、燃料の買い付けも市場の2倍だということはよく言われるわけですね。まぁつまり、もう「買ってやるよ」と、「どうせ国民はですね、日本国民はおとなしくて高くても電力料金を払ってくれる」と、「節約なんて変なこと言ってるから大丈夫だよ」と、まぁこんな感じなんですね。
この産業界にある程度身を置いて仕事した人が分かると思いますけども、競争社会にいますと、「どうしてそんな安いコストできるんだろうか?!」ってなことによくぶつかるんですね。「考えられない」と。すぐ「2分の1にしろ」とか、「3分の2にしろ」とか言われてもうガクッてきてですね、なんとか頑張って、まぁ数年間頑張りますと、結構当時、考えられないほどの安い値段で製造できるということを、何度も経験してるわけですね。「今のコストがこうだから」なんていう産業はほとんどありません。
このようにですね、まずは電力料金の議論っていうのがなされてますけども、私はですね、非常にこう不完全じゃないかと思いますね、議論が。私がそういう責任があればですね、まず国際的に適切な電力料金は、鉄鋼業なんかから見ると、今の日本の電力の2分の1だと。つまり、家庭用ですと、1キロワットは10円であると。この10円を基準にして、今どこが無駄なのか?なんでこんなふうになってるのか?ということからスタートしないとですね、原子力発電所をやめて、火力発電所的に何%であるという話は全然出てきません。
この「適正な競争環境」であるということが一番いいわけで、「正しい電力供給量」 「適切な電力料金」というものをですね、もう少しちゃんとしたレベルの高い状態で議論しないと、今の新聞なんかで見ます電力料金の議論っていうのは非常にこう幼稚であるというふうに私には感じられます。
(文字起こし by haru)