人生の節目・衝撃の一言:「平和目的だから日の目を見ませんよ」 (6/28)
若き頃、私は原子力の研究をして、日本原子力学会から最高の栄誉である「平和利用特賞」を受賞しました。でも、その前後に私が原子力を止める一つの原因となった衝撃の一言がありました。
「武田さん、あなたの技術は平和目的にしか使えませんから、日本政府は実施しませんよ」
つまり、日本の原子力は核武装するためであって、建前となっている平和利用の技術など日の目を見るはずもない、何を錯覚しているのですかという忠告でした。
2012年6月(今月)、原子力基本法と宇宙開発関連法が改定され、核兵器の開発が可能になりました。「日本人はバカだから、国民が議論することはまかり成らぬ」ということですが、まさに私の経験と一緒です。民主主義はボヤっとして守れるものではなく、不断の戦いがいるという言葉を思い出します。
私の尊敬する人で核武装をした方が良いという方がおられます。私とは意見が違いますが、私は民主主義信奉派なので意見の違いがあることを尊重します。その点でもっとも大切なのはダダ漏れ議論とおもいます。
(平成24年6月28日)
--------ここから音声内容--------
ええっと、私、若い頃ですね、原子力関係の研究をしとりまして、日本原子力学会からですね、私の記憶ではまぁ、個人名での受賞というのは確か初めてだと思いますが、原子力学会始まって、まぁ二十何年のところですか、「平和利用特賞」という学会賞をいただきました。ええまぁ、大変に研究生活・・・私の研究の利益としては、まぁ名誉あることでありましたが。その前後にですね、大変に・・・私が原子力をのちに止める原因となった、一つの衝撃的な言葉がありました。
それはですね、多くの人が私に、「武田さん、あなたの技術は日の目を見ませんよ。平和目的ですから」と、まぁこういう風に言われたわけですね。それまで、ややですね、「平和だけに利用できる原子力技術というのは大切だ」とこう自分で思ってたわけですね。「原子爆弾を作る技術はダメだけど、原子爆弾ができない原子力の技術をですね・・・安全な原子力の技術を作れば、それは人類に役に立つんじゃないか」と思って、私、若い時代に研究してたわけですがね。
ところが、「何を錯覚してんですか?」と言われたわけですね。「日本の原子力っていうのは核武装するためであって、平和利用なんていうのは建て前だけですよ」と、「だから、そんな平和利用特賞なんて貰って喜んでちゃいけませんよ」っていう、まぁそういう話なんですね。それからもうずいぶん長い年限が経ちました・・・もう30年ぐらい経ちましたか・・・20年ぐらいですかね。
今年の6月に原子力基本法と宇宙開発関係の法律が改正されまして、核兵器の開発が可能になりました。その時に自民党の首脳部が言った言葉ですね、意味としてはですね、「日本人はバカだから、国民がどうせ議論することはダメだ」ってなこと言いましたね。ええと、まぁあの、直接的な言い方はですね、「言っても無駄な人には言わない」というコメントだったと思いますが。おそらくその意味はですね、「もう議論しても意味が無いんだ」と、「どうせ軍事の事、分かんないんだから」とそういう感じがいたします。
私はですね、この「衝撃の一言」というのに、これをちょっと挙げてみたわけですね。それと共に私はですね、「民主主義はボヤッとしてて守れるもんじゃない」と、「不断の戦いが要る」っていう言葉を誰か偉い人が・・・確かヨーロッパの人だと思いますが書いたことを思い出しました。
私の尊敬する人で、核武装した方が良いと言われる人がおられます。私とはまったく意見違いますが、その方を今でも尊敬しております。何故かって言いますとですね、民主主義っていうのはですね、意見の違いを尊重することなんですね。大切なのは「ダダ漏れ議論」とまぁ私言ってるわけですが、オープンな議論が必要で。
心の中では“核武装が必要だ”と思ってるけども、「どうせ国民はバカなんだから言ってもしょうがない」っていうのがですね、最も危険な思想ではないかと、私はまぁそう思ってるわけです。むしろはっきりとですね、「日本は核武装した方が良い」と言う人の方がですね、民主主義を守る、もしくは日本の発展を願うという点では正しいんではないかと、私なんかそう思うんですね。
えー、ずいぶん20年も研究して、やっと「学会賞」を貰った私にとってみればですね、「あなたの研究は核兵器につながんないから、どうせダメだよ」なんて言われてですね、“いや、まぁ自分が浅はかだった”と思うべきなのか、そいとも“自分のやってきたことは正しかった”と思うべきなのか、まぁその時はですね、考え込んでしまったということですね。
(文字起こし by danielle)