原発短信:誠意が大切(瓦礫と汚染)・・・環境を守る人の基本 (6/19)
低レベル廃棄物やクリアランスレベルなどの「これ以下なら放射性物質として取り扱わなくて良い」という基準はそれほど統一されているものでもなく、基準も場合によって異なります。でもおおよそ1キロ100ベクレル、1年10マイクロシーベルト程度で、普通の規制値の100分の1ぐらいにしています。
つまりセシウム137の場合、「これは放射性物質だ!」という基準は1キロ1万ベクレルで、普通は測定誤差やここに書く「総量規制」の問題があるので1キロ1000ベクレルで取り扱っていて、その10分の1(元の規制の100分の1)ということで1キロ10ベクレル以下のものを「普通のもの」として扱っています。
また、被曝という見地では1年1ミリシーベルトですから、その100分の1の1年10マイクロシーベルトを「気にしなくて良い被曝」としています。このように、100分の1などの数値が出てくる理由を説明したいと思います。
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ある毒物の規制が1キログラムあたり100ミリグラムだったとします。その毒物を扱っている工場が1キログラム10グラム(100ミリグラムの100倍)の毒物が入った廃液を持っていたとします。
担当者「規制値の100倍の濃度ですから、業者に持って行ってもらいます。費用は1キロ1万円しますから全部で100キロありますから、100万円かかります」
重役 「えっ!100万円! そんな金出せないよ。規制値の100倍なら海水をくみ上げて100倍に薄めて流せば良いじゃないか。だって100倍に薄めたら、法律は問題ないんだろう」
担当者「そ、そうなんですが。毒物だから規制値があるので、薄めて流すのはどうかとおもいまして・・・」
重役 「おまえ、なにを考えているんだ。会社のことを考えろ。環境団体じゃないんだから!」
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法の網の目をくぐって実質的な法律違反をする人が絶えないのはこの世のことで仕方が無いのですが、「善良な国民」というのは、法律の趣旨を理解し、できるだけそれにそって他人に迷惑をかけないということが大切です。
とくに国の首脳部やお役人は法律を守る立場の人たちですから、間違っても「趣旨に反する」ということをしてはいけないのも当然です。
瓦礫の問題では、1キロ100ベクレル以下というのは、規制自体に次の仮定があります。
1)放射性物質が出るのは、原子炉などの特殊な場所で、その場所を管理する人は誠意を持って日本国を放射性物質の汚染から守ることができる、
2)放射性物質の総量(一つ一つの「濃度:1キロ何ベクレル」)の他に全体で何ベクレルというのを把握できる、
3)世の中に広く散らばった後は規制値で良いが、発生源では故意に薄めるなどをしない、
ということです。ここでは「放射性物質を扱う人の倫理」が求められます。倫理は法律ではないと言われますが、公務員倫理法というのがあるように、社会の常識(毒物を薄めない)などは存在します。
また、「もの自体は規制値にかかるけれど、何かをくっつければ規制値の範囲外になる」という網の目のくぐり方もあります。たとえば、1キロ200ベクレルのものを「重たい袋に入れれば、袋全体では1キロ100ベクレルを下回る」とか「1キロ200ベクレルのものをトラックに乗せてトラックごとはかれば1キロ100ベクレルを下回る。」というような場合です。
このようなことをしてお役所にお伺いを立てれば「ダメ」と言われます。つまり、放射性物質のような毒物を含むものは、「そのもの自体やそれがある操作で高くなったとき(たとえば焼却してハイになった場合)」を考えなければならないのです。
法律ではややこしいのですが、一般家庭ならごく常識的なことです。たとえば腐っているものの、腐っていないものと混ぜれば良いなどと言うお母さんはいません。「危険なもの」は避けるのが「守る」ことの常識です。
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濃度(1キロ100ベクレル以下)という規制だけでは、悪辣な人が多く環境を守れない場合は、総量規制(全体で何ベクレルを漏らしてはいけない)という規制も必要となります。
福島第一の場合、私が常々言っていることですが、総量では80から90京ベクレルですから、これを日本人一人あたりに直すと80億ベクレル程度になり、日本人全員が死にます。
つまり「総量ではまったくダメな量」なのですから、瓦礫などの個別なものについては、「採取、運搬、取り扱い、貯蔵、空気中や土壌への拡散」などのあらゆる面で、「1キロ100ベクレルを超える事が無いように」というが環境を守るために絶対に必要です。
1キロ100ベクレル以下の瓦礫を燃やしたら、その灰は8000ベクレルになるとしたら、まず第一に法の目をくぐることになりますし、第二に放射性物質を取り扱うことができる施設で監視が必要です。
あらゆる面で瓦礫の搬出と焼却は、環境を守るという見地からはまったくダメで、これを政府が進めると国民は「法の目をくぐることは正しい」ということになり、日本は崩壊します。「増税はしないと言って当選し、増税に政治生命を懸ける」という政府ですから、このぐらいのことはやりかねないので、国民が「お前達は何をやっているのだ!」と主人として叱らなければならないでしょう。
(平成24年6月19日)
--------ここから音声内容--------
えー、ある読者の方からご質問を頂きまして、読者の方はですね、大変に謙遜して“ま、小さな事だけども・・・”という質問がありました。大変重要な内容を含んでおりますので、ここに「原発短信」として書きました。低レベル廃棄物とかクリアランスレベルっていう放射線の規制はですね、「これ以下なら放射性物質として取り扱わなくても良い」と、つまり、普通の焼却炉とかそういうもんで取り扱って良いっていう基準なんです。
これはそれほど、がっちり統一されてるわけじゃないんですけども、おおよそ1キロ100ベクレル、1年10マイクロシーベルト程度で法律的にも決まっておりますし、クリアランスレベルについては1年以下の懲役だとか、100万円以下の罰金というですね、きちっとしたそういう規則もあります。全体としては普通の規制値の100分の1なんですね。
例えばセシウム137の場合ですね、「これなら放射性物質だ!」という基準は、1キロ1万ベクレルなんですよ。これは何で1万ベクレルかということはですね、ちょっと後に説明したいと思いますが、一応通常は1万ベクレルですと、大体1000ベクレルぐらいを超しますと、「放射性物質」として扱うんですね。
何故かって言いますと、ちょっと一部を測りますでしょ、そしたらこれが3000ベクレルだ、と。そいでちょっと隣の、10センチ離れたところの何か粉を測ると1万2000ベクレルだった、なんてことが起こりますんで。ま、やっぱり1000ベクレルぐらい、(基準の)1/10ぐらいですとですね、やっぱりちょっと警戒しとかんといかん、ってことですね。これ全部、誠意がある場合ですよ。誠意が無いっていう場合はですね、ちょっと考えてもしょうがないんですよね、これはもう犯罪ですからね。
で、その1/10、つまり元々の規制の1キロ1万ベクレルの100分の1の「1キロ100ベクレル」ぐらいをですね、「普通のもの」として扱うっていうことですね。被曝もそうで、1年1ミリシーベルトが基準ですから、「1年10マイクロシーベルト」っていうクリアランスレベルの基準はですね、「気にしなくても良い(被曝)」という100分の1基準を使います。
これはあの、食品の農薬の規制とかですね、添加物の規制なんかもみんなそうであります。「100分の1ルール」と言ってですね、これが世の中の常識になってるんです。何故そうなるかって言うとですね、世の中にちょっと悪辣(あくらつ=あくどい)な人もいるわけですよ。
ここにちょっと会話を書きましたが、担当者がですね、(上司に)「今から廃液捨てようと思うんですが、規制値の100倍の濃度ですから業者に持ってってもらうしかありません」と、「費用が1キロ1万円しますから全部で100キロありますから100万円掛かります」と言うと、重役さんがですね、「えー、100万円も掛かるの!そんな金出せないから、規制値の100倍だったら海水汲み上げて100倍に薄めて流しゃいいじゃないか」と。っていうような事が起こるんですね。
で、こういうことも起こりますし、それから食品買う時ですね、お母さんがほうれん草買った後、小松菜を買うと・・・色んなもんを買いますからね。一つ一つが規制値以下でも、10個買えば規制値の10倍になっちゃうってこともあるんで、そういう時に安心して食べ(ら)れない。これは同じ内容なんですよ、実はちょっと違うように感じますが同じような内容です。で、法律の目をくぐって違反する人もいます。だけど、まぁ善良な国民でなきゃいけないですね。
それから、例えばギリギリを設定しますとね、ある工場で規制値の0.8っていうのを流したと、これはまぁ良いですね。隣の工場で、規制値の0.8つうのを流しますとね、濃度としては1キログラム何ベクレルとか、1キログラム毒物がどう(=値)とか言ったら良いんですけども、全体の量は超してしまいますね。ですから、そういう風な色々なケースを考えて、大体100分の1になってるわけですね。
で、もちろん瓦礫の1キロ100ベクレルっていうのもですね、何か「低すぎる」って言う人いるんですけど、決してそうじゃないんですよ。つまり普段はですね、こんな原子力発電所の事故っていうのは考えておりませんから、放射性物質が出るのは原子炉なんかの特殊な場所で、電力会社は誠意があると、ちゃんとした会社だっていうことを一応基本にしております。それからそういう会社はですね、ちゃんと管理されてて、「どのくらいの汚染物を出したか?」っていうことを、例えば役所の方で問い合わせれば、答えることが出来るわけですね。
ところがあの、今度の福島原発みたいに全部に広がっちゃったっていうとですね、一軒一軒の家が自分の家の中にある放射性物質を、もう測定すること出来ないわけですね。それでまぁ、それからもう一つは、発生源では故意には薄めないと、つまり電力会社とかそういうとこはですね、そういう犯罪的なことはしないということも一応、仮定の中に入ってるわけですね。
で、もちろんこういった倫理なんですけど、「倫理は法律じゃないじゃないか」って言うけど、そんなことないんですね。公務員倫理法というのがあるぐらいで、ま、倫理と法律、一応違うんですけど社会的にですね、わざと法律の目をくぐるっていうようなことはしないと、いうようなことも含めてなってるわけです。
例えばですね、1キロ200ベクレルのものがあったとしますね、これ2倍ですね、規制値の。「これを重たい袋に入れれば、袋全体では下回る」ってこともあるんですよ。それから「1キロ200ベクレルのものをトラックに載せて、トラックごと測れば(1キロ100ベクレルを)下回る」とかいうへりくつもあるんですね。
で、こういうことはもちろんお役所にお伺い立てれば、お役所は「ダメ」と言うのが普通なんですよ。いや、今度は違いますけどね、お役所がこういうことやろうとしてるんですけど、普通はそうじゃないんですね。それから「焼却したら(灰になったら放射線量が)高くなる」っつうのもダメなんですね。
これはまぁもちろんその、社会の事で面倒臭いんですけど、一般家庭では簡単ですよ。例えば腐った食品があって、倍に薄めれば良いとか10倍に薄めれば良いってことで、お母さんが腐ったものをですね、腐ってないものと混ぜるなんていうことしませんね。これはまあ、「危険なもの」を避けるときの当たり前のことで。「海水に薄めて流したら毒物は毒物でなくなるか?」って、いや、そんなことありませんのでね。他の瓦礫と混ぜれば薄くなるとかですね、そういうことないわけですね。
それでまぁ、時には総量規制っていうのを掛けることがあるんですが、普通は濃度でいくわけです。1キロ何ベクレルとか1キロ何ミリグラムっていうことをやるわけですね。ところがですね、私はまぁ常々言ってるんですけども、今度福島第一の原発事故ではですね、総量ではですね、80京ベクレルから90京ベクレル漏れたわけですから、これは日本人一人当たりに直すと80億ベクレル程度になって、全員が死ぬわけです。つまり、総量ではもうダメなんですよ。
そうなりますとね、一個一個について厳密にやんなきゃいけないんですよ。例えば瓦礫ですと、「採取、運搬、取り扱い、貯蔵、空気中、土壌」と全部やらないとですね、ダメなんですよ。こうしないとですね、変なことになっちゃうんですね。例えば、「1キロ100ベクレルの瓦礫を燃やしたら、その灰が8000ベクレル」、これもう全然ダメなんですけども、こういうやつは法の目をくぐるわけですよ。そういったものはもちろん、放射線の取り扱う施設が大切なわけですね。
で、これらでお分かりだと思いますが、環境を守るっていうのはですね、やっぱりそれを守ろうとする人の国民の誠意が第一なんです、当たり前ですけどね、誠意が第一ですね。「誠意」っていうのは、「放射性物質で国土を汚さないようにしよう」と、その前提がまずあって、それで具体的な規制値、『1キロ100ベクレル』っていうのを参考にしようということですね。
これは国が決めたんじゃないですよ、国民同士の約束ですね。それを監視すんのが、政府です。その意味ではですね、もちろん1キロ100ベクレル以上の瓦礫を運び出してはいけないってことがまず一つと、焼却炉で焼却している焼却装置の中に、1キロ100ベクレルを超えるようなものが出てきたら、それはできないってことなんですね。
これはまぁ、ここに論理的に書きましたから、これでも理解できると思いますけども、それにプラスしてここで強調したいのはですね、『法の目をくぐることはしない』ということですよ。これ、特に政府とかそんなのがしちゃいけないわけですね。ただ、今の政府は「増税はしない」と言って、当選したら「増税に政治生命を懸ける」といった、そういう政府ですから。まぁ、このくらいのことはやりかねないですね。
そいから環境省っていうのはですね、やっぱり『誠意を持って環境を守る』ってことなんですよね。だから、今回の瓦礫の問題はやっぱり国民がですね、「お前たち、何やってんだ!」と、国民が主人ですから、主人として政府とか首相とか環境省を叱らなきゃいけないでしょうね。そうしないと、やっぱり良くならないと思います。
(文字起こし by danielle)