日本だけ(13)・・・やりたいことをやれ | お手伝いさんたちのブログ

お手伝いさんたちのブログ

中部大学 武田邦彦先生のブログの中で、音声収録のみのものをテキスト化して掲載しています。
テキスト化及び掲載にあたっては先生から許可を頂いています。

日本だけ(13)・・・やりたいことをやれ (6/19)




日本が元気があった頃、それは皮肉にも戦争に負けて10年から30年ぐらいの間でした。その頃の活発な日本を一つの小さな窓から見て、思い出してみます。

お手伝いさんたちのブログ








(平成23年6月19日)





--------ここから音声内容--------




この『日本だけ』シリーズもですね、たまにはこの日本だけではないことが入るんですが、これは日本と、まぁあと一つぐらいの国があるわけなんですが。実はあの、今の日本は非常に暗いんですけども、実は日本が明るいころがあったんですよ。それがこの、前回話したマン島レースの本田宗一郎が活躍した戦後の時代ですね。ま、ちょうど戦争が終わって10年ぐらい経ちまして、戦争の傷跡も徐々に無くなってきた。人々の活動力も上がってきた。松下幸之助がパナソニック…松下電器をやり、本田宗一郎が本田モーターズをやるという、そういう時代ですね。





この本田宗一郎が書いた…言ったこと、それをここに出しました。これはほんとに、今の時代でこれを見るとですね、なんていうか、「昔は日本はよかったんだなぁ」と思いますね。単に書いてあることは「やりたいことをやれ 本田宗一郎」と、こう書いてありますね。「そうだなぁ」と思いますね。「あの頃はやりたいことをやったんだなぁ」と。





若い人で優秀な人は海外に出て行きました。留学ですね、留学が輝かしく見えました。留学して帰ってきたら、欧米の優れた技術、新しい社会を学んで帰ってきて、日本でやりたいことをやる。今留学生はほとんどいなくなりました。今、日本から外国に行って、帰ってきたらもう日本がどう変わってるか分からなくなりました。





あの頃は、30(歳)ぐらいで「年金」なんていうことの言葉を知ってる人はほとんどいませんでした。将来は…日本の将来は、明るく輝いていたわけですね。
「それはなぜか?」やりたいことをやれる社会だったからですね。「なぜやりたいことをやれたのか?」それはですね、実は、年取った人が戦争で死んだからなんですね。






世界を見渡すと面白いことに気が付きます。戦争に勝ったイギリス、衰退していきます。フランスも発展しません。戦争に負けたドイツと日本が繁栄していきます。戦争に勝った方がいいか、負けた方がいいかっていうのは、勿論勝った方がいいに決まっています。しかし、「勝った方がその後衰退し、負けた方が発展するのはなんででしょうか?」それは、それまで力を握っていた社会の層の人たちがいなくなり、次が出てくるからですね。





つまり、社会の発展を阻害しているのは、「今権力を持っている人そのもの」なんですね。その人たちは自分が必要だと思っています。例えば今で言えば…日本で言えば、もう典型的なのが高級官僚ですね。
高級官僚に「あなたがたは必要ですか?」と言うと、山ほど必要な理由を言います。頭はキレるし、経験も積んで、あらゆることに負けないだけの精神力を持っています。しかし、自分たちがいるから日本は衰退しているということを見抜いて、それを口に出すだけの勇気と正直さは持っていません。それが衰退の原因を作ります。





この本田宗一郎の「やりたいことをやれ」という文章はですね、日本が戦争に負けたことを含んでおります。その横に小さな、本田宗一郎のオートバイに乗った笑顔を載せておきましたが、私もこの時代を非常に若くして経験しております。何でも言えました。今みたいに「こういうこと言うと人に差し障る」とか「人の心を傷つける」とか、そんなことは一切ありませんでした。事実を事実として認め、口角泡を飛ばして議論をし、そして、やりたいことをやって、ある人は敗れ、ある人は勝ち、そして日本の繁栄を築いてきました。





今私たちはですね、この「敗戦をしたあと、日本がなぜ世界一になったのか?」ドイツもほとんど同じでした。「その代わり戦争で勝ったイギリス、フランスがなぜ衰退したのか?」アメリカはもう少しもってますが、やがていなくなるでしょう。国の力が大きくなりますと、それだけ変化のスピードは遅くなりますから、国が4倍大きければ、その変化の速度は1/2になりますので、まぁアメリカが衰退するのはあと50年ぐらいかかると思いますが。いずれにしてもですね、「勝てば衰退し、負ければ発展する」ということを、この本田宗一郎が書いた「やりたいことをやれ」ということに凝縮されている、と。





もしも日本が、「日本だけ」という社会を作るんであれば、私がよく言っているふうに、「50歳以上の男性が全部引退すればいい」んじゃないかと思うんですね。ま、それを引退する必要があるかどうかは分かりませんが、私が「50歳以上の男性は意味が無い」と言うものの一つにですね、やはり、自分たちが持っている権力が、日本というもの…非常に大切な日本というものの発展を阻害しているんではないかという反省ですね。自分を見つめる力、これもですね、やはり権力者には必要なんです。日本の指導層にも必要ですね。それがこの言葉に凝集しているというふうに思います。



※口角(こうかく)泡(あわ)を飛ばす・・・興奮して口からつばきを飛ばす。激しく議論するさまにいう。


(文字起こし by haru)