だまされるエネルギー2 地熱発電はどうだろうか? (6/16)
この頃、日本の「指導的立場の雑誌」というのは「ゴロ」の一種ではないかと思うことがある。先日、ある雑誌で「地熱発電は有望だ。アイスランドでは電力の4分の1が地熱発電.日本でできないのは温泉業者が反対するからだ」というような趣旨の記事があった。
これほどばからしい記事に感心する人がいたらその方が問題とは覆うけれど、書く方も書く方だろう.アイスランドの人口は30万人。日本の人口で考えれば、地熱発電は0.06%である。現在、日本の地熱発電量は約50万キロワット、電気設備総量の1.8億キロワットの約0.3%で、すでに日本の地熱発電はアイルランドの5倍である.
記事ではこのような定量的な数字は一切無く、ただアイスランドの大使の「日本でも地熱発電が有望だ」というコメントを出している。読者を馬鹿にするのも・・・という感じだ.
官僚の世論誘導というのはこう言うのを言うのだろう.NHKもわかっていて地熱発電が有望だとか、アイスランドがやっているなどという番組を組むに相違ない.視聴者は近くに電卓がない、電力の常識が無い、どうせ視聴者はバカだという前提で番組作りをするからだ。
・・・・・・・・・
大規模な地熱発電がなぜダメなのかというと、きわめて簡単で「熱した岩石から熱を取って電気を起こす」のだが、熱を取った岩石はすぐひえる。「温泉が枯れる」のと同じである.岩石はそれほど熱容量(熱を抱いている量)は多くないから、熱を奪うと冷える.
ところが、地下に差し込んだパイプはおいそれと熱いマグマに差し込めない.第一、材料が持たないし、第二にマグマの中に突っ込むだけの巨大な機械を地下深くに持って行くことができない。
だから、熱い岩石層を通ってきた熱水などを利用するのだが、温泉ならともかく、発電所のような巨大なものを動かすことは出来ないので、火力、原子力が100万キロワット規模なのに、地熱はその20分の1も行かない.
温泉業者が反対したり、国立公園の開発の問題があるのはむしろ当然である.石炭、天然ガスがまだまだ1000年もあるというこの時期に、わざわざトリックをかけて日本の自然を壊そうと言うのだから、日本の将来より別のことを考えているのだろう。
エネルギー産業は東電のように巨大だから、自分が有望だと思ったら国のお金を当てにしないで、自分で有望な電力源を開発するのが良い。またすでに私たちは電気代の0.15%を「電力の将来の研究のために」拠出している.これも報道されないが.
(平成24年6月16日)
--------ここから音声内容--------
この頃、日本の雑誌を見てますとですね、それも割合と「指導的な、立派な雑誌」を見てますとですね、“いや、これは雑誌と言うよりか、むしろ「ゴロ(ゴロツキ/ゴロマキ)」ではないか?”と思うことがあるんですね。何故そんな風になったのか? 私はですね、この立派な雑誌っていうのは必要なんですね、情報源として。こんな状態が続いたら、ほんとに雑誌の衰退につながると思います。
で、先日、ある雑誌を読んどりましたら、「地熱発電が有望なんだ」と、「アイスランドでは電力の1/4が地熱発電なんだ」と、「日本で出来ないのは温泉業者が反対するからだ」というような記事がありまして。一応、丁寧に読んでみましたけど、“まぁこんなに馬鹿らしい記事に感心する人がいたら、そっちが問題かな”と思ったりですね。これはあの、指導層が読む雑誌なんですね、ま、“書く方も書く方だ”と思いましたね。
アイスランドの人口って30万人なんですよ。従って、1/4の電気といってもですね、日本の人口で考えれば、地熱発電が0.06%に相当します。現在、日本の地熱発電量は約50万キロワットで、電力設備総容量の1.8億キロワットを基準にしてもですね、0.3%あるんですね。日本はすでにアイスランドの5倍なんですよ。それね、1/4とかいうのは人口のトリックで、あの、こんなことは多分・・・読んだ人、判るんじゃないかと思うんですけどね。
まぁ正に、「子供ダマシ」と言っても子供に悪いというぐらいの酷さですね。しかしもっとも、今までですね、官僚とかNHKの世論誘導っていうのはこんなもんなんですよね。「どうせ、国民は近くに電卓はない」と、「電力の常識はない」と、「どうせバカだ」と、「すぐ騙されやすい」と、こういうまぁ前提があるっていうのは、まぁ僕なんか腹立たしいですね。読んでてね、“一体何なのか!?”っていう風に思いますね。しかし、この問題、もうちょっと掘り下げなきゃいけません。
地熱発電が何故発展しないのか?って言うとですね、「熱した岩石から熱を取るというのが、なかなか難しい」ってことなんですね。ええっと、あの、想像力を生かしてくださいね。熱い岩石の中を水が流れてくると、これは「温泉」になるわけですね、それを我々は恩恵を受けるわけです。ところが、その水から電気を取るってことになると、もう大変ですからね、なかなかそういうの出来ない。
そこで自然にというわけいかないんで、地下にパイプを差し込むわけですよ。それで、そこんとこ流れてるお湯を使っても大した事ないんですが、ほんとは熱いマグマにパイプを差し込まなきゃいけないですね。今、生産が盛んになっているシェールガスなんかそうなんですけども、やっぱり岩石板に人間の力で水を押し込めばですね、そっからガスを取るってことできるんですけど、マグマ、それちょっと出来ないんですよ、熱過ぎて。マグマに差し込んだら先が溶けちゃうんですね。溶けないまでも、差し込むものを…機械をですね、その熱いマグマの近くに持ってくのがなかなか難しいんですよ。
これ、将来は出来るかもしれないですよ。しかし、それはまだ技術がないんですよ、材料もないし、突っ込む機械を地下に深く置くってことも出来ないんです。要するにですね、岩石に水を差し込まないけないんですけども、差し込んだ水を暖めて持っていきます(取り出す)と、その分、岩石が冷えるわけですね、当然、石が冷えますから。何か石を使った料理なんかありますけど、アレと一緒ですね。暖めればもちろん(石は)冷えますから。その岩石が動かないんですよ、で、岩石っていうのは結構熱伝導率が低いんで、他に熱いとこあっても、そっから熱がすぐ来るわけじゃないんですね。
これはあの、火山の溶岩の流出なんか見て分かりますよね、ドロドロした溶岩が流れてきますが、先端が冷えると・・・後ろの方の溶岩が先端を暖めるってことは出来ないんですよね、熱がそう行きませんから。もう固くなっちゃってですね、そこで止まっちゃうんですよ。そうすると、そこから更にパイプを奥に差し込まんといかんわけですよ。これは出来ないからですね、発電所のような巨大なものを動かすことは出来ないから、火力、水力の発電所が一個の発電所が100万キロワットなのに、地熱はですね、そのまぁ1/20もいかないと、ま、小規模なものをちょこちょこやるということになるわけですね。
ま、ここがポイントなんですよ。この記事を書く時、技術者の一人ぐらいに聞いたと思うんですけどね。「何か?」と、「一体専門家って何なのか?」と思いますけどね。この熱伝導率を・・・まぁ僕ら物理ですけど、ちょこっと計算したらすぐ判ることで、別段難しいことじゃないんですよね。
えー、温泉業者が反対すんのは当然ですよ、だって冷えちゃうんですから。温泉が出なくなっちゃうんですから。それから、「どうしてもそうしなきゃいけない」っつうんなら別ですけども、天然ガスとか石炭がまだ1000年はあるという時期にですね、わざわざトリックを掛けて、嘘を言って日本の自然を壊そうっていうわけですから、まぁこれを書いた人とか、これを言った人は、相当、補助金に目がくらんでるんでしょうね。
ま、こういったものは共通してるんですよ。実はこの雑誌の後ろの方を読んでおりましたら、「福島は非常時だから、100人に0.5人ぐらいのガンは良いじゃないか」と、ま、こういう記事が出てきましてね。いや、まぁ私は何となく・・・えー、直接的な関連を論理的に説明すんのは難しいんですけど、何となく同じ“根”だなぁ・・・という風に思いました。
(文字起こし by danielle)