日本の子どもに贈るもの(4) 年金:使い込んだから頼む | お手伝いさんたちのブログ

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中部大学 武田邦彦先生のブログの中で、音声収録のみのものをテキスト化して掲載しています。
テキスト化及び掲載にあたっては先生から許可を頂いています。

日本の子どもに贈るもの(4) 年金:使い込んだから頼む (6/9)




1961年、日本で年金制度が出来たとき、国民には「揺り籠から墓場まで」、「これからは家族ではなく社会が老人をみる時代」、「若いうちから自分で貯めて老後に備えよう。企業も協力して」と言った。



でも、同じ時、厚労省の高官が「どうせ、積み立て式年金はなくなってしまうのだから、そのうち賦課式(若い人が負担する)に変え、最後は税金だ」と考えていたことをこのブログで紹介しました。



事実は計画通り(??)進み、積み立て年金は社会保険庁(厚労省)がすべて使い込み、突如として「若い人が老人の面倒を見なければならないから、少子化対策だ」と言い始めました。



おそらくマスコミも専門家もこの言い換えを知っていると思いますが、知らない顔をして「少子化になると若い人何人で、老人何人」などという新しい説明をし始めました。



でも、「800兆円必要だ、それを準備するから積み立てろ、揺り籠から墓場まで面倒を見る」と言い、それが不可能なのは今から20年ほど前にわかっていたのに放置し、やけになって記録をつけなかったり改ざんしたのは厚労省です.



でも、厚労省も「我々の世代(今、50才以上)」であることは確かです.だから、我々の世代の誰が悪いかではなく、まずは我々の世代が悪いのですから、年金の受け取りを止めようではありませんか・



それでは生活が成り立たない人もおられるので、50才以上は50才以上でつじつまを合わせ、決して若い人に「年金を使い込んだ」と言うことの影響を与えないようにしたいと思います.賛成される人はおられないでしょうか?



・・・・・・・・・


このままでは、私たちは「自分たちが使いこんだ年金を子ども達につける」ということになります。それが賦課型でも、消費税でも、社会保険と税の一体改革でも、みな同じ結果になります。



それでは私たちのプライドが許しませんし、偉そうなことも言えません.ここは一つ、老人パワーを炸裂させて、「50才以上は自分たちで年金を出し、使い込みは自分たちで責任を持つ」としないと、子ども達の時代には、


1)親の使った原発の電気の分の核廃棄物は引きうけ、

2)親が使い込んだ年金は子どもが払い、

3)電気もエネルギーも少なく力もない、


ということになってしまいます.


(平成24年6月9日)




--------ここから音声内容--------




ちょうどこのブログを、記事をあげるのが土曜日になりまして、ちょっとゆっくりと考えてみたいという風に思うんですが、私たちは『子供に贈るもの』の第4回目ですね。今から約50年ぐらい前になるんですが、日本で年金制度が出来ました。これまで軍人恩給とかですね、公務員の年金に相当する物はあったんですが、まあ国民全体のものはありませんでした。





それまでは多くの国民はですね、自分の子供とか家族に老後をお願いしとった訳ですね。ところがまあ、それは古いんだと、大家族から小家族になり、そこでですね、国はですね、『揺り篭から墓場まで』の時代なんだ、と。これからは家族でなくて社会が老人を看る時代になるんだ。そのために若いうちから自分で積み立てて老後に備えよう、と。これには企業も協力しようと、こういう風に呼びかけました。





まあ現実にもですね、そうしなきゃいけないっていう事で、小家族化が進みですね、それから企業も一生懸命従業員の為に半分の年金を納める、というような事を続けて来ました。しかしそれは本当に表面だけだったんですね。厚生労働省…昔は厚生省ですけども、高官がその当時、『どうせこんな積み立て式年金っていうのは、時代と共にお金の価値も無くなっちゃうし、駄目になっちゃうんだから、その内、若い人が年寄りを支えれば良いよ、という風に変わる事になるだろうし、まあ最後は税金でやるしか無い』という風に考えていて、それもまあ、回顧録なんかで書いているっていう事も分かってきました。





実際にですね、年金をスタートしますと、計画通りに進みまして、積み立て年金は社会保険庁がほぼ全部使い込み、えーそれが無くなった時点で突然ですね…大体年金が始まってから30年ぐらい経って、「若い人が老人の面倒看なきゃいけない。ところが最近は少子化だ。少子化だから年金は上手くいかないんだ」という風に言い始めた訳ですね。





これを報道したマスコミとか専門家がですね、この厚生省の責任逃れを知っていたのかどうか、っていう事ですが、勿論一応ここはですね、マスコミは「伝える立場」、専門家はそれを「解説する立場」だった訳ですから、積み立て型年金を使い込んだので、賦課型年金というものを前面に出してきた、と。まあ(そう)いう事は知っていたと思います。





つまり国民に対して嘘を言ったという事ですね。そこで突然、『少子化になると若い人何人で、老人何人を支える』という話が出てくる訳ですね。少子化対策大臣まで出来てですね、子供を増やせ、子供を増やせっていう事になります。しかしこれは誰もがですね、積み立て型年金を使い込んだから出てきた事だという事に、まあ気が付かなかったって言うかですね、気が付かないように上手くやった、という事ですね。





非常に簡単に言いますと、『将来の年金800兆ぐらい必要だと。それを準備するんだから積み立てろ』と、いう風に言ってきた訳ですね。まあ20年ぐらい前にそれが分かってきた。しかしもうその時には社会保険…年金っていうのは崩壊してましたからね。5000万人の記録を付けなかったり、改ざんしてきたりしたと、いう事ですね。





ところがまあ、私はですね、これを見過ごしたのもやっぱり我々、報道しなかったのも我々の世代のマスコミ、これを解説しなかったのも我々の世代の専門家ですね。そう言う意味では我々、今、年金を貰ってる人たちが嘘ついてきたんですよ。だから私はね、年金を貰うべきじゃないんじゃないかと思うんですね。





で、まあそれでも生活できない人いますから、50歳以上の人で区別をしてですね、若い人は若い人で新しい年金のシステムでやってもらわないとですね、『使い込んだから、若い人にお願いします』じゃですね、お父さん、財産を持ってたんだけど、財産を使い込んだから、息子に「俺、ちょっと贅沢したいから」って言うのは、どうでしょうかねえ。





先回、私熟年旅行集団の態度が悪いって言ったんですけど、その裏にはこれがちょっとありましてね、我々の世代っていうのは旅行できるんでしょうかねえ。年金使い込んで、人の…子供の年金を今、貰ってるところなんですよ。これから消費税を貰おうっていう訳です。消費税って言ってもですね、えーっと子供たちの世代、つまり若い人は使いたい訳です。(だから)消費税も払う。年取った人たちはあまり消費が無い訳ですからね。まあその点ではどうですかね。





ここまで色々書いてきて、親の使った原発の電気は親が貰うけども、核廃棄物は子供。親が使い込んだ年金は子供が払う。まあ電気とかエネルギーの少ない、仕事の少ない職場が残る…という様な社会を私たちは引き継ごうとしているんじゃないか。





しかしこの年金の問題も私ですね、こう言いながら心の中でどう思ってるかと言いますとね、やっぱり今の私たちの世代は意気地が無いから、自分たちが使い込んだヤツをやっぱり子供に頼むだろうな、と。誤魔化すだろうなという感じはしますね。いや、最終的には手伝ってもらわなきゃいけないかも知れませんが、1回我々は懺悔したら良いんじゃないでしょうかね。『すまなかった』と。『年金を使い込んじゃった』。





今ですね、子供たちにこういう事を呼びかけてるんですよ。私大学にいますけども。『20歳から払ってください』って言うんですよ、年金を。その時ね、何て呼びかけてるかって言ったら『自分の将来のために』って、こういう抽象的な言い方してるんですね。何か自分のために積み立てるような言い方はしてるんです。ただ、何故今20歳の学生にまで年金の積み立てを…積み立てって言うか拠出を呼びかけてるかっていうと、我々の年金を使っちゃったから、我々に払うためなんですよ。だからお金を人から取る時に騙してるっていう事ですね。残念ですね、実に。非常に残念ですよ。





私たちにこの…50歳以上の私たちに魂があるのか、本当に子供が大切と言ったり、日本が大切と言ったり、まあ色々な意見の載ってる雑誌とか、新聞とか社説なんか読みますと、えらく偉そうな事言ってますが、本当に我々は大丈夫なんでしょうかね、こういう精神で。ちょっと私、思いますね。えー暗いようですけどもこれね、我々が覚悟すれば明るくなると思います。こんなに誤魔化してるから暗いんですよね。





私たちは誤魔化す必要は無いんですよ。『年金は使い込みました』と。 『すいません』と。 『これだけは何とか自分たちでやります』と。しかし、そうすると飢え死んじゃう人がこのくらいいるので、『申し訳ないけどもこれだけ手伝ってくれ』と若い人に頼むという事が大切で、積み立て年金を使い込んだから、知らないうちに賦課年金にし、更に知らないうちに消費税を上げるっていうのはですね、やっぱりこれは、私としてはやりにくい、という事です。

(文字起こし by まあ)