日本だけ(10)・・・広島 | お手伝いさんたちのブログ

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中部大学 武田邦彦先生のブログの中で、音声収録のみのものをテキスト化して掲載しています。
テキスト化及び掲載にあたっては先生から許可を頂いています。

日本だけ(10)・・・広島 (6/8)




日本だけももっとも辛いシートにさしかかりました。明日を明るくするために私たちは直視しなければならないでしょう。


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(平成24年6月8日)





--------ここから音声内容--------




ええと、人にはですね、どんなに辛くても通らなきゃならない道があります、仕方ありません。人間ていうのは、そういう哀しい存在ですね。この「日本だけ」というのを話すときにも、どうしてもこの一枚の写真を避けて通るわけにはいかないわけですね。私、もう全然これ話したくないんですが、仕方ありません。





えー、これは広島原爆が落ちて、「広島市立女子中学校2年1組」が全滅した、その生徒さんの写真であります。先生を中心として、みんな真面目にきちっと直立不動の姿勢をとってますですね。1人病気かなんかで、風邪かなんかで休んでた子がですね、丸い横にちょっと書いてありますけども、私も小学校ん時やっぱそうでしたね、休んだ人は端にこう、丸で囲まれておりました。みんな仲良かったでしょうね、そして将来の夢を持ってお母さんになったでしょうね。





全部、一瞬のうちに死にました。私の記憶ではこの広島市立女子中学校2年は1組から6組まであってですね、1組、2組、3組ぐらいが全滅し、4組、5組、6組ぐらいが5人から10人ぐらい生き残ったという、そんなような状態じゃなかったかと思うんですね。爆心地に近かった。





その下にあるのが、緑色の方が広島に落ちた原爆、黒い方の少し丸っこい方がファットマンと言われる、長崎に落ちたプルトニウム爆弾ですね。ええっと、私は科学というものをやっとりましてですね、この写真を二ついつも出すんですよ。他の組み合わせの時もありますけど。つまりですね、原爆というものはまぁ人間が作るわけですが、それは非常に無味乾燥なもんで、この兵器がですね、爆弾が大量殺人の兵器であるということは良く分からないですね、それだけ見ても。あるいはかっこいいという風に見えることも実はあるんですよ。





ところがこの、広島市立女子中学校の写真はですね、我々が科学の名において何をしたかということを、まぁ非常にハッキリと分かるわけですね。人間はですね…現在、民主党が政権を取って、減税をするもしくは増税をせずに財政再建をすると言って政権を取り、その中で増税が・・・「政治生命を懸けて増税をする」と言ってるっていう、このくらいのことをですね、人間はするんですよ。





同じようにですね、科学者もですね、自分がやっている科学と、その科学がもたらす結果というのはですね、実はそれほど強く結びついてないんですね。ここに、こういう残虐兵器が生まれる。今度の福島原発の事件もそうなんですね。





今でもそうなんです。「電気を貰う」ということと「あの悲惨な事件」とがですね、結びつかないんですよ、人間ていうのは。それは我々もですね、いわば減税の方向を掲げた、つまり増税をしないということで、政権を取った民主党が「増税に政治生命を懸ける」ということに違和感を感じない、ま、感じてる人もいますけど、感じないのが人間なんですね。





原爆というこの兵器についてはですね、こういうことを言うことができるんですよ。「こんな悪魔の兵器だ」とか、なんか言うことができます。しかし、それだけではやっぱりこれは不十分なんですね。何故科学者は原爆を作ったのか?と、何故それが使われたのか?、何故こんな女の子たちを全部殺してしまう必要があったのか?、一体何の間違いがあったのか?、人間とはどういうものなのか?、やっぱり、どんなに辛くてもですね、この写真を私たちは直視しなきゃいけないとも思うんですね。





もう一つはですね、何故「日本だけ」に原爆が落ちたのか?ということですね。もちろん落としたアメリカが悪いんですが、日本に原爆が落とされたというのにはそれなりの訳があるわけですね。イギリスでもなければドイツでもない、イタリアでもない。アフリカにも落ちないし、中国にも落ちない。どこに落ちたかったら「日本だけ」に落ちた。それは「アメリカと戦争をしてたから」っていうんじゃないんですよ。アメリカと戦争をしてた国は他にもあります。しかし、日本に落ちました。





何故、アメリカは日本に原爆を落としたのか?ま、黄色人種であったから、手強かったから、なかなか降参しないから・・・色々ありますよ。だけどもソ連だって、そりゃドイツもそうだし、イタリアもまぁそうだったわけですね。だけど「白人」だったですからね、彼らは。「黄色人種はサルである」と、こういう風に考えたのか?、どうして日本に原爆を落とさなきゃいけなかったのか?、フィリピンじゃなかったのか?、インドじゃなかったのか?、これはですね、我々考えてみなきゃなんないことなんですよ。





えー、簡単に答えることが出来ます、それはね。アメリカが日本と戦争してて、ちょうど原爆が間に合ったんで落としたと、だけどそれだけじゃないんですよね。ここに私がですね、「日本だけ」というこのシリーズん中に、この「原爆」を出したのがそれなんですね。日本は世界と比べて極めて特殊な国なんですよ、恨まれることも特殊だし、褒められることも特殊だし、そいからやることも特殊なんですね。





今ですと、民主党ばかりじゃないですよ。地球温暖化でCO2を減らしてんのは日本だけとかですね、節電なんかしてんのは日本だけとか、もういっぱいあるんですけど。この「日本だけ」というのが何故起こるのか?その中で良いことをピックアップすることは我々できないのか?、これですね。他の国がやらないこと、良い面、悪い面もほんとにまとめてやってるんですよ。そのほんとの根本原因、我々が反省したり、ま、反省しなくても良いですよ、良い点を認めても良いですけど、いずれにしても、我々だけが、日本だけが行う。





この中学生が亡くなったの・・・それはもちろん、朝日新聞とか読売新聞の責任ありますよ。戦争を賛美しましたからね。相手は原爆持ってる国なんですから、簡単には戦争をしちゃいけないのに、ま、戦争しましたね。ここに亡くなった人たちは朝日新聞の責任だと言っても良いんですよ、何と言っても良いんですね。つまり、何が本当にこの少女たちを殺したのか? 何故「日本だけ」に原爆が落ちたのか? この問いをですね、何回も何回も考えてみる必要がある、と私は思うのでこの写真を苦しいけど出したと、そんな感じですね。


(文字起こし by danielle)