日本だけ(8) プリンスオブウェールズ | お手伝いさんたちのブログ

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中部大学 武田邦彦先生のブログの中で、音声収録のみのものをテキスト化して掲載しています。
テキスト化及び掲載にあたっては先生から許可を頂いています。

日本だけ(8) プリンスオブウェールズ (6/2)




日本だけの第8回は第二次世界大戦の緒戦の様子です。日本の歴史上、世界の歴史上、実に大切な海戦で私たちがその詳細を知らなければならないものの一つです。科学と同じに歴史もできるだけ思想を排して事実を見つめる勇気が必要です。当時、マレー沖でなにが起こり、それが世界にどのような影響を与えたのかを話しました。


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(平成24年6月2日)




--------ここから音声内容-------




えー、日本だけという話もですね、戦争の時期に入りますと、まあ軍事的な色彩を帯びてくる訳ですね。現在の日本はですね、第二次世界大戦って言いますか太平洋戦争、もしくは大東亜戦争と呼ばれるんですけども、この大きな戦争で負けたためにですね、戦争の事をあまり話さなくなっちゃったんですね。





ショックもあったでしょうし、悔しいっていう事もあったでしょうし、それから変な左翼運動って言ったらちょっとアレなんですが、自分の国の歴史を見ようとしないという、そういうような言わばインテリ層って言いますか、左翼層って言いますか、知識階級って言うか、そういうのが日本に出現しまして、そのために戦後70年になってもですね、重要な日本の歴史というのに触れられないようになっています。





ここはですね、第二次世界大戦の始めに日本の海軍…海軍って言っても航空隊ですから、今で言えば空軍ですけども、それがですね、インドシナから飛び立ってシンガポールに駐留していた大英帝国の旗艦プリンスオブウェールズと戦艦レパルスを撃沈したという、非常に大きな歴史的な事件がありました。





この事件はですね、戦争に入った訳ですから当然敵国の戦艦を撃沈しても構わない訳で、東洋艦隊…大英帝国東洋艦隊って言いますとですね、世界に冠たる艦隊で、なかなかその、イギリス艦隊をですね、破るっていうことは無かった訳ですね。イギリス海軍自身もそう思っておりまして、日本には勿論、その、海軍、航空隊がある事は知っていましたが、まあ蚊トンボみたいなもんで、そんなのが来てですね、戦艦を沈めるなんて事は出来るとは思っていませんでした。





って言うのは勿論多少の攻撃は受けてもですね、戦艦っていうのは部屋ごとに…例えば穴が空いたらそこの部屋を分離するといいますか、ドアを閉めて全体の沈没に至らないように出来ますので。それから鉄板も非常に厚い装甲板を使ってますから、なかなか沈めるっていうのは難しい訳ですね。1番危ないのは魚雷攻撃ですね。ですから急降下爆撃機が降りて来て魚雷を飛行機から海上に投入し、その魚雷がスクリューで走って戦艦の脇腹に当たるとですね、まあ結構これは大きな痛手になる、と。雷撃機(航空魚雷による対水上艦攻撃に特化した軍用機)は注意しなきゃいけないですね。





ところが雷撃機はですね、割り合いと低空で入って来なければいけないので、撃ち落とすことが出来るっていう事ですね。あとまぁ高高度で来る爆撃機はですね、お腹に500キロ爆弾とか800キロ爆弾を抱える訳ですが、それをですね、目測で落としますからね。ところが戦艦の方は蛇行して避けられますので、狙って落としても当たらないんですよ。





つまり戦艦の上に落としても駄目で、戦艦のいない所に落とさなきゃいけないんですね。進路を予想して落とさなきゃなりません。これはなかなか難しい事で、ここに写真貼っておきましたけども、航空機から見た戦艦レパルス、これは丁度プリンスオブウェールズとレパルスが現に沈みかけてる時の映像なんですね。





で、上に貼った物は九六式陸攻(きゅうろくしきりっこう)って言ってですね、陸上攻撃機なんですね。それでインドシナからちょうど今のホーチミン辺りですけども、それからシンガポールの方に出撃する、と。何回か出撃するんですね。で、実際はまあ雷撃機なんかも行ったんですけども、500キロ爆弾とか、800キロ爆弾を見当つけて落とす訳です。なかなか当たらなかったんですけども、そのうちドカーンと後部甲板に当たったんですよね。当たりますと戦艦の速度が緩くなったり回避活動が出来なくなるから、益々当たり易くなるって事で、大体2~3発当たった段階で沈んじゃうんですね、船は。それでプリンスオブウェールズとレパルスが沈みました。





まあこのニュースはですね、非常にビックリしたニュースとしてヨーロッパに伝えられました。勿論アメリカもそうですね。って言うのは、まあ日露戦争における日本海海戦と一緒なんですけども、まさか東洋の小国の日本がですね、大英帝国旗艦プリンスオブウェールズを撃沈するなんて事は、まあ普通には考えられない訳ですよ。って言うのは、今まあアメリカならアメリカ、もの凄く強いわけですけど、そのアメリカに向かって突撃して行ってですね、主力艦隊やっつけて来るなんて事は無いんですけども。





これでですね、イギリスの東洋艦隊は壊滅してしまいます。ほとんど戦闘能力を失ってイギリスは太平洋地域、もしくはインド洋地域でですね、大きな後退を余儀なくされる訳ですね。この前後にイギリスの空軍ですね…航空隊の基地も相当爆撃されまして、日本軍に。ほとんどの飛行機を失う訳です。





このあの、プリンスオブウェールズとレパルスの撃沈に成功した1つの理由はですね、護衛する航空機を全部やっつけちゃったって事ですね。先手を打って飛行場に止まっていた飛行機をですね、爆撃してやっつけてしまいましたので、イギリスは日本軍が爆撃するに任せられたと、こういう事ですね。これが1941年である事を考えますとですね、その後4年ぐらい経って今度は日本の戦艦大和が航空機で撃沈される訳ですね。





もうこの時代には既にですね、プリンスオブウェールズを撃沈したっていうこと自体が飛行機の時代を思わせるんですけども、それでもあの、日本軍はそれ程直ぐには分からないんですね。自分がやった事が分からないってのはよくある事で、まだ大艦巨砲主義をとる訳ですね。まああの日本が飛行機で勝ったのに、日本が飛行機に対して戦艦で戦いを挑むという、変テコな事になりました。





えー、しかし私はですね、このプリンスオブウェールズの撃沈は大変に重要な事件であると認識しております。と言うのはですね、やっぱりアジア…アジア諸国っていうのは長らくヨーロッパ諸国の植民地になり、例えばインドはイギリスにずっと支配され、インド人で優秀な人が出てくると両手首を切られるとかですね、山脈が白くなったけど、あれはインド人の骨であるとか、色々そう言われるような…まあ少し誇張がありますけども、それ言われるような、まあ苦心惨憺の日々を送っていた訳ですね。





別にヨーロッパ人が白人だから有色人種を支配して良いなんていう事はあり得ません。どちらが人格が高いかも分かりません。力で捻じ伏せてあらゆる所を植民地にした訳ですね。その植民地にした白人を日露戦争でロシアを破り、太平洋戦争の初戦でプリンスオブウェールズとレパルスを撃沈したというのは非常に大きな精神的な影響がありました。日本がアジアにした最大の功績の1つだという風に思いますね。これは大きな功績です。





これが功績であるかどうかっていう事には異論があると思いますが、少なくとも日本で功績であるかどうかを議論する必要があります。『戦争は悪だ』と、それは相手が善人だったら戦争は悪ですが、相手がイギリスですからね。悪逆非道なイギリスですから。これは別に、このぐらいの事はやってもですね、それ自体は批判されるっていう事は無いと、私はそう思います。





いずれにしても日本だけが、有色人種で大英帝国旗艦を撃沈させた、これには当時のイギリス首相チャーチルが、ガックリきたという歴史も残っております。


(文字起こし by まあ)