4号機の燃料プールの計算・・・危険か安全かを科学のレベルで議論しよう! | お手伝いさんたちのブログ

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中部大学 武田邦彦先生のブログの中で、音声収録のみのものをテキスト化して掲載しています。
テキスト化及び掲載にあたっては先生から許可を頂いています。

4号機の燃料プールの計算・・・危険か安全かを科学のレベルで議論しよう!(5/15)




4号機のプールが危険だという人が多いのですが、その根拠が学問的に示されず、ただ「危険だ」、「人類の終わりだ」ということが先行しています。ここで「4号機の問題を科学で考える」ことを試みます。もしご異論がある方は科学的な反論を期待します。


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原子炉は停止すると核爆発は止まり、その後、最初は短寿命核種が崩壊してその崩壊熱が高いが、短寿命核種は早い時期に崩壊するので、どんどん崩壊熱は低くなる。



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東北大学流体力学研究所がネットに一般公開している論文(この図)によると、この図のように原発を停止してから3日ぐらい経ったときに、約8メガワットぐらいの出力がある。もともと運転中は核爆発による質量欠損を加えて800メガワットで、そのうち10%が崩壊熱とされているので、停止の時が80メガワット、さらに3日後にその10%の8メガワットになっている。



さらに原子炉の方は1年後には、さらにその10分の1の0.8メガワットになっている。つまり原子炉は、運転中:停止直後:停止3日後:停止1年後=1000:100:10:1となっていることがわかる。



一方、使用中および使用済み核燃料の方は短寿命核種がないので、崩壊熱も徐々にしか減らない。たとえば4号機は事故の時に4メガワットだったが、1年後はその2分の1の2メガワットにしかなっていない。つまり、かつては1号機から3号機の方が崩壊熱が高かったのに、今では4号機のプールがもっとも崩壊熱が高いことになる。これが「4号機が危ない」ということになっている原因と思われる。



ところで、エネルギー換算では1キロワット時は860キロカロリーだから、動力単位で2メガワット(メガは10の6乗)は2000キロワット(キロは10の3乗)、つまりエネルギー単位で1時間で2000キロワット時になるので、それをエネルギー単位のカロリーで表現すれば172万キロカロリーである。燃料プールの中の水が突如として無くなり、空だきになったときには、毎時172万キロカロリーの熱が出ることになる。


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一方、20℃で1キロの水を燃料プールの投入すると、それが100℃まで上がる時の熱(顕熱)80キロカロリーと100℃で蒸発するときの潜熱539キロカロリーの合計だから、1キログラムの水で619キロカロリーの熱を奪うことができる。つまり、172万キロカロリーを619キロカロリーで割ると2779キログラム=約3トンの水ということになる。



1時間あたり3トンの水を4号機に投入できれば、4号機の燃料プールは100℃にすることができる。蒸気がでるので少し気持ちが悪いけれど、セシウム化合物の沸点より低いし、ヨウ素などの気体の放射性物質はすでに少なく、かつ100℃では燃料の被覆に使われているジルコニウムなどが水と反応するような高温ではない。



つまり若干の放射性物質が出る可能性もあるが、「すべてが終わり」というような状態とは全く違う。だから問題は1時間3トンの水を4号機のプールに入れることができるかということだが、2011年3月20日、つまり事故直後に消防車が4号機に注いだ水が1時間80トンだったから、その20分の1以下の水量だから、十分過ぎるほどで、水の蒸発はほとんど無く4号機のプールから放射性物質が大量にでることはないことがわかる。蒸気の計算に20倍の甘いところがあっても大丈夫ということになる。



また、プールが崩壊して燃料棒が4号機の床に落下してもその上から水をかければ良いので、これも同じである。従って、4号機のプールが破壊して燃料棒が落下しても、プールは破壊せずに水だけが抜けても、若干の消防車が駆けつければ冷やすことができる。燃料同士がバインドされていないので、大規模な臨界に達することもない。


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このような計算をすると、「4号機が危ない」ということにならないのだが、計算が複雑だから私が間違っているかも知れない。読者の方のチェックを期待します。

(平成24年5月15日)

(注)東北大学のご論文はネットでオープンになっていましたので、それを使わせてただきました。




--------ここから音声内容--------




えーっと、福島の4号機が非常に危ないという話がもう繰り返しされておりましてですね、まあこのブログでも何回でも書いたんですが、何か無くならないんですね。それで無くならないんで、私もですね、自分が間違ってるんじゃないかと思って随分そういう風な(記事を)見るんです。





根拠が書いてないんですよ。「危険だ」とか「人類の終わりだ」とかって事を書いてあって、それではですね、ちょっと私たちの役には立たないんですよね。ですからここで、まあ、科学で書きましたので、もし御異論のある人は、これに御異論を出してもらって、私が必ずしも合ってるかどうか、分かりませんのでね。科学的な議論をしていきたいと思います。



原子炉はですね、動いている時は核爆発が連続しているわけですね。これで止まりますと、最初は、まあ非常に短い、1秒以下の短寿命核種が崩壊して、崩壊熱が高いわけですね。どんどん、どんどん崩壊しますから、すぐ弱くなります。まあこれを東北大学が計算した(論文を)、ネットに公開しておられますので、それを、ちょっとこう、利用させて頂きますと、大体3日ぐらい経った時に約8メガワットぐらいの出力ですね。えー、元々その、運転中は非常に大きいから800メガワットぐらい。その内の10%が崩壊熱とされているので、大体まあ、そうかなと。





その3日後には更にその10分の1の8メガワットになってる訳です。それから1年経つと更に0.8メガワットぐらい。ざっとですね。そうしますと原子炉っていうのは簡単に言うと運転中と停止直後、停止3日後、停止1年後っていうのは、大体1000対100対10対1になっているという事ですね、崩壊熱が。熱がですね。えー、そういう事なんで現在は運転中から見れば1000分の1、停止直後から見たら100分の1と、こんな感じなんですね。





一方あの、使用中及び使用済みの核燃料の方は、短寿命核種が少ないので崩壊熱も徐々にしか下がりません。このグラフで分かるように、4号機は事故の時に大体4メガワットだと、このグラフでは計算されておりますが、1年経って10分の1になるんではなくて、えー、たった2分の1にしかなってない、と。





まあこれは、あの、元々その短い崩壊時間の元素が、もうありませんから、短寿命のヤツが。まあ当然ですね。だから、1号機から3号機の方が元々、崩壊熱が高かったのが、今では4号機が1番高いってのも、これも良く分かりますね。これはまあ、4号機が危ないって言われてる原因になるんじゃないか?と思うんですよ。これを計算しなきゃいけないって事ですね。





エネルギーでは1キロワットが860キロカロリーですから、1キロワット時ですね。これちょっとややこしいんですよ。キロワットっていうのは動力量で、キロワット時になるとエネルギー量になるんですね。エネルギー量はカロリーと比較できるって、ちょっと面倒臭いんですけども、これ、しょうがないですね。





で、まああの、動力単位で2メガワット、つまり4号機の燃料プールの出力っていうのは、2000キロワットになりますからね。えーっとそこで、えー、エネルギー単位で1時間で2000キロワット(時)になる訳です、時(じ)になる訳ですね。そうしますと172万キロカロリーのようです。これちょっと「ようです」って言うか、計算がですね、こういうのずっとやってると、計算はやっぱり間違うんですよ、個人は。





昔、まあ学生が横にいる時には一緒に計算して、(数値を)突き合わせてたんですけどね。今はちょっと(それは)できないので、読者の方で、ちょっと計算されて頂きたいと思いますが。そうすると空焚きになった、つまりプールから水が抜けちゃったという時には、毎時172万キロカロリーの熱が出るわけですね。





そうしますとこれで(を)水を(で)冷やせるかっていう事ですけど、水は20度で1キロの水を燃料プールに投入しまして、まあそれが100度まで上がった時の、これを顕熱って言うんですけど、これが80キロカロリー。それから100度の所で蒸発する時の潜熱539キロカロリーの合計ですから、1キログラムの水で619(キロ)カロリーの熱を奪うことができる訳ですね。





そうしますと172万キロカロリーを619キロカロリーで割りますから、大体2779キログラム、つまり約3トンの水っていう事になります、1時間でですね。1時間に3トンの水を4号機に投入できれば、4号機の燃料プールが100度にすることができるので、えー、それは問題が無いかな、と。




それからもう温度はそんなに高くないんで、セシウムの沸点にはまだいかないし、それからヨウ素なんかの放射性物質…気体の物は少ないし、それから燃料棒として使ってるジルコニウムが水と反応して水素を出すって事でも無い。となると全然、全てが終わりと全く違うんで、ちょっと計算間違ってるかなと思うんですね。私これ、計算間違ってたら直ぐに撤回します。





あの、こんな事言ったら無責任ですけども、だけど科学ってのは議論をして間違ってる時は『すみません』って言うのは、これ、仕方無いんですね。っていうのは、2011年の3月20日に、えー、消防車が来て4号機に水を注いだわけですが、この時の流量を調べますと、どうも1時間80トンのようですね。1時間80トンは、注入できるって事になりますと、まあ20倍余裕があるという事になります。





それからもう1回、もう1個はですね、えっとプールの水が無くならないで、燃料棒が床に落ちた場合ですね。この場合は、えーっとまあ、その瞬間的に臨界になる事はあるんですが、まあバインド(結束)されてないので、燃料同士が。大した事無いっていう事になりますね。そうすると4号機が危なく無いって事になるんですけど、それもちょっとね、何となくおかしいかな、と。





って言うのはですね、これだけ危ないという専門家が多いって事はやっぱり根拠はあるわけですよ。本当はそう(科学的根拠を)書いて頂いた方が良いんですけど、ちょっと僕の計算が3桁間違ってるとかね。これの1000倍だとかいう事、あり得るんですね。ちょっとどこかの単位、間違いますとね、そういう風になるんですよ。





本当はこういうのは全部ですね、同僚とチェックをし合った方が良いんですけど、今はちょっと適切な、暇(時間に余裕のある)な同僚がいないもんですから、えーっとまあ、あの読者の方に一応聞いてみて、それで計算がこれなら(合っていれば)安全だし、もしこれが3桁ぐらい間違っていればですね、まあ、対策をもう1個練らなきゃいけない、と。





じゃあ、4号機をどうするのか?と、まあ、(そう)いう事になりますんでね、前向きになりますね、議論が。本当に危ないんだったらば、勿論人は逃げなきゃなりませんからね。それはまあ、ケリを付けるのはちゃんと科学者の役割で、ネットもありますし、科学者もいっぱい居ますから、私のこのブログが間違ってるんではないか?という事を含めて、実は(計算結果を)出したいと思うんですね。





人間はこう恥をかくとかいう事に、ちょっとこう心配しちゃうんですけど、まあ恥をかいても健康を守る方が大切ですから。えー、間違ってたら直ぐ訂正します。ですから是非宜しくお願いしたいと思います。


(文字起こし by まあ)