瓦礫のトリック・・・法律を作る国会議員が「法の目をくぐる」習慣か? (5/5)
被災地の瓦礫を他県に移動するのは次の点で「法律違反」か「法律の網の目をくぐる」という範囲になるのです。
1) 1キロ100ベクレル以上は「低レベル廃棄物」(低レベル廃棄物の基準は明確ではありませんが、これまではこの程度でした)、
2) 低レベル廃棄物相当のものだから、首長や議会が単独に決められるものではなく、住民説明、住民投票などを必要とする、
3) 1年に0.01ミリシーベルトの被曝になる可能性のあるものは「原子炉で汚れたもの」として一般の社会に持ち込まない(クリアランスレベル:違反は1年以下、100万円以下の罰金)。およそ1キロ100ベクレル相当。
4) たとえ持ち込むものが1キロ100ベクレル以下でも、簡単な操作中に100ベクレルを超える行為をしてはいけない。「焼却したら直ちに8000ベクレルになる」などは法の精神から許されない、
5) 日本の法律ではセシウム137が1キロ1万ベクレル以上になると「放射性物質」になって厳密な取り扱いを求めている(放射線障害に関する複数の法律。もちろん同じ数値)。そこでその10分の1のレベルは普通は使用を制限する(10分の1については多数の議事録あり)、
6) 合計2300万トンの瓦礫のうち、400万トンだけを搬出する合理的な理由が示されていない、
7) 地元はそのほかにも瓦礫を多く抱えていて、むしろこの400トンも含めて処理施設ができるのを望んでいる、
8) 瓦礫処理単価が、阪神淡路で2万2千円、今回が6万3千円で、その差の理由が明確に示されていない。遠隔地に運搬するからという理由もあるが、遠隔地に運搬する理由が示されていない。
9) 福島原発から漏れた80京ベクレルは、もし日本人全員が平均的にかぶるとすると日本列島には住むことができなくなるが、
このようなことを考えると、政治家や役人が自ら法や法の精神を守ろうとしない姿が浮かび上がります。これほどの矛盾を認めては民主主義とは言えません。
(平成24年5月5日)
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瓦礫問題で苦しんでいる方が、ま、多いわけですので、ここで今の「瓦礫問題のトリック」についてまとめてみましたので、ご参考になってください。
現在の瓦礫の問題は、正に『瓦礫のトリック』とも言うべきようなもので、ある点では「法律違反」、ある点では法律違反でないにしても「法律の網の目をくぐる」という範囲に入ります。ま、このようなことを元々法律を作る国会議員が行うということに対して、非常に強い違和感を覚えます。
まず第一に、1キロ100ベクレル以上は、ま、「低レベル廃棄物」として通常、処理をされます。この「通常」というのを、おそらくは利用してると思いますが、低レベルの廃棄物の基準っていうのは明確ではありませんが、これまで世界的にも、また日本でも、1キロ100ベクレル以上のもの、もしくはその恐れのあるものについては、『低レベル廃棄物』として厳重にドラム缶の中にいれて、低レベル廃棄物の処理を行う、というようになっておりました。
第二、低レベル廃棄物相当のものであることは明らかです、瓦礫がですね。従って、市長とか町長が勝手に決めたり、議会が決めたりするものではなく、住民説明とか住民投票を必要とするのが今までのやり方でした。
三番目に、1年に0.01ミリシーベルトの被曝になる可能性のあるものは、「原子炉で汚れたもの」として一般の社会に持ち込まない、ということが決まっております。これは、法律で「クリアランスレベル」と言いまして、これに違反すると1年以下の懲役、もしくは100万円以下の罰金になります。ま、これもおよそ1キロ100ベクレルに相当するものです。たとえ持ち込むのが1キロ100ベクレル以下であっても、簡単に操作中に100ベクレルを超える行為はしてはいけないわけです。
例えば、1キロ500ベクレルというものがあって、ま、それを持ち出せないということでトラックに載せる、と。トラックに載せると、トラックと合計して測定すると1キロ100ベクレル以下になる、その代わり、トラックが先方に着いて荷物を下ろしたら、また突然500ベクレルになる。ま、こういったですね、簡単な操作で100ベクレル以上になったりするものをですね、認めると、実際の法の網目をくぐることになりますので、一般的には許しません。許さないというか、実施する方がしませんでした。
今回の場合、焼却したら直ちに8000ベクレルになるわけですから、焼却炉の中で法律では扱っていけないレベルに移ります。このようなときには、装置全体が放射線を取り扱えるようになっていなければいけません。従って、私のブログに対しても、「武田先生は錯覚してるんではないか?」、えー「100ベクレル以下と言ってるけれども、国が言ってる8000ベクレルは灰である」という風に、えー、ご注意をいただいたことがありますが、私はそれを変えてないのは何故かと言いますと、単なる焼却をする、その焼却炉の放射性物質を扱うことが出来ないものについてはですね、えー、装置のどこで法律違反になってるか判らないのでやってはいけない、というのが現在までのやり方でもありますし、法の精神でもあります。
また、日本の法律では、セシウム137が1キロ1万ベクレル以上になりますと「放射性物質」ということになって、放射線を取り扱う主任者がいなければいけませんし、えー、装置も放射線を取り扱うもの、また更に、そこに働く人の被曝量を全部測定するといった細かい法律に基づきます。もちろんこれは、放射線障害の防止に関する複数の法律に書いてありますし、どの法律でも同じ数値であることはもちろんです。そして、この1キロ1万ベクレルの1/10、1キロ1000ベクレル以上になりますと、「通常には使わない」ということで今までやってきました。これは国の議事録に多数、載っておるものです。
また、今回の瓦礫、合計2300万トンのうち、400万トンだけを搬出しなければならない合理的な理由は、いまだに示されていません。また、私が地元に行く限り、この正式な瓦礫以外の瓦礫、例えば庭の木を切ったものとか、小学校で土をのけたものというものがいっぱいありまして。むしろこの400万トンも含めて地元に処理設備(施設)が出来ることを望んでおりますので、瓦礫の引き受けは地元民を苦しめるということになります。全然、助けることになりません。
瓦礫処理の単価が、阪神淡路大震災では22000円、ところが今回は63000円で、その差の理由が明確に示されていません。しいて言えば、遠隔地に運搬するからと(いう)理由ですが、遠隔地に運搬する理由も示されていません。例えば、東北の瓦礫を九州が引き受ける、というようなことも言われてますが、これは全くおかしなもので、むしろ日本人全体の頭を洗脳する目的、というような感じまでいたします。
基本的な問題は、私が去年の4月から国会などで主張してたように、福島原発から漏れた量は80京ベクレルで、これはもし日本人全体が平均的に被(かぶ)ると、日本列島には誰も住めなくなりますので、これについての政府の方針、見解を・・・まず必要である、ということです。
ま、このように考えますと、今度の瓦礫の搬出の問題は、政治家や役人が自ら法や法の精神を守ろうとしない姿が浮かび上がります。そして、それを住民の反対を押し切って進めていくということですから、到底、民主主義とは言えません。
もちろん、冷やかし的な言い方で言えば、「元々政治家や役人は、法を守る気持ちがない」とかですね、「日本は、元々民主主義ではない」という言い方がありますが、そのような言い方は、むしろ止めた方が良いのではないかと思います。
日本は国会が法律を作り、役人がそれを守るわけですから、政治家や役人は間違っても、法もしくは法の精神を守る、ということに徹してもらわなければいけませんし、また明らかに民主主義なんですから、やはり民主的手続きをきちっと取る、ということが大切だと思います。
(文字起こし by danielle)