食材の不安(どうなっているか?)・・・農水省の反撃に備える | お手伝いさんたちのブログ

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中部大学 武田邦彦先生のブログの中で、音声収録のみのものをテキスト化して掲載しています。
テキスト化及び掲載にあたっては先生から許可を頂いています。

食材の不安(どうなっているか?)・・・農水省の反撃に備える (4/22)



福島のほうれん草、宮城・蔵王のお茶と立て続けに「2回目の暫定基準値」を超えた食材が出ているさなかに、農水省が「民間が独自に基準を設けるのはけしからん。国に従え」という通達をだして顰蹙を買っています。まるでお殿様ですね。



この農水省通達は大きな問題を抱えているので別の機会にして、ここでは最近の食材事情を少し整理してみたいと思います。行政上の問題や生活の注意をします。

まず、福島のほうれん草ですが、これは予想されたことです。なにしろ、セシウムの再飛散が昨年の12月半ばからはじまり、その対策は全く取られていません。一度、土、ゴミ、瓦礫などに付着したセシウムが何らかの原因で福島の空に舞い上がっているのですから、それがほうれん草を汚染するのはいわば当然のことです。



これに対して「再飛散は焼却が原因ではない」、「瓦礫は大丈夫」と否定ばかりして、汚染の拡大を防止しようとする自治体はほとんどないようです。誰の税金で運営しているのかと訝るばかりです。



再飛散関係で少し注意を要するのは、福島の葉物野菜は当然ですが、関東北部、東北南部は一応、注意が必要でしょう。農水省が呼びかけるとしたら、このような野菜に対する十分な情報と注意、および監視でしょう。

再飛散は相変わらず続いています。これは葉物野菜を汚染するばかりではなく、マスクをしないと内部被曝にもなります。しかし、危険な地域は福島の1時間1マイクロ以上の地域に今のところ限定されているようです。



葉物野菜以外の大根などは現在は汚染が見られません。また、関東東北の椎茸、川魚、それに太平洋側の北海道から神奈川までの魚、特に「底魚、海藻、貝類」など特定の食品は危険です。



海への潮干狩り、行楽、学校行事は、神奈川から北海道までは危険です。主たる理由はストロンチウムが測定されていないことで、放射線防護の原則は「測定値がなければ危険と見なす」ということで、これは放射性物質が見えないことによります。

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宮城の蔵王町のお茶は1キロ2万ベクレルというものすごい量ですが、これも「理屈通り」です。2011年4月、静岡県のお茶を取り扱っていた方は汚染でひどい目に遭いました。この原因は「人間が大丈夫なら植物も大丈夫だろう」という知識不足だったのです。



放射性物質と言っても、ヨウ素、セシウム、ストロンチウムといろいろな元素があります。よく「**を食べると**がとれる」という理由で食材を選んだり、「**にはカルシウムが多く含まれている」などと言われますが、このことは「特定の植物には特定の元素が多く吸収される」ということです。



だから、「人間」という動物より「お茶」という植物が「セシウム」という元素を多く含んでも、別に驚くことはないのです。そして今の汚染の基準は「人間は大丈夫か」と言うことだけで決まっています。つまり農業や漁業は切り捨て規制なのです。



もう一つ、自治体の「油断」があります。かつて静岡はやややむを得なかったのですが、最初の段階で油断しました。第二に横浜市の市長は「大したことはない」を繰り返し、パンフレットで市民に「油断」を勧めた結果、市内の給食で数回、暫定基準値すら大きく上回る食材を使いました。



岩手県一関市も「一関に放射性物質が降ったなどと言ってもらっては困る」と市長や議会が言った直後に、セシウムで汚染されたウシをだし、さらに農作物が被害を受けました。事実を正面から見つめ、それを認める勇気が必要です。元素は元素ですから。



そして事実を認める勇気は「子供を守る、国土を守る、コメを守る」という「心」から出てくるものです。決して「お金」からは未来の日本は開くことができません。

生活上は、岩手から神奈川までの農作物、山形、新潟のものは要注意です。本当は農業関係者、自治体がしっかりしていればすでに安全な時期なのですが、残念です。私たちは「食べる食材の種類を多くして、平均的な汚染濃度を減らす」のが一番でしょう。


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このほかに静岡県焼津の「鰹節を作るときにでる灰」の中に1万3000ベクレルのセシウムを検出していたのに発表しなかったという事件がありました。隠匿したのは2段階で、最初が組合(センターという名前らしいのですが、ともかく当事者)、次が市の水産課です。



2011年8月にわかったらしく、事実が広がるのをいやがって(お客さんの健康より自分たちの儲け)、公表せず2012年3月になって市に報告、市の方は「発表を促したが、センターが発表を遅らせた」とまるでセンターの責任にしています。



センターが隠したのも問題ですが、市が「発表を促す」のではなく「知ったらすぐ発表する」のが筋です。なんと言っても1キロ100ベクレル以上が原発の「低レベル廃棄物」ですから、その130倍の灰を無許可で取り扱っていた事実をつかんだら、役所としてはすぐ発表し必要な措置を執る必要があります。



でも、もう一つは、これまでこのようなこと(基準を超えた放射性物質で汚染されたものを隠していた)が起こったら、大騒ぎしてくれるNHK、マスコミがほとんど伝えないことです。台風情報がその一つですがNHK、マスコミ報道部の社会的責任の一つは「危険を知らせる」ということで、その「危険」とは「マスコミが決める基準」ではなく、法律、規則、学会などが決めるものです。



低レベル廃棄物の130倍という灰を出しながら隠していても、NHKが大々的に報道しないと言うことになると「法律はどうでもよい」ということですから、NHKには順法精神がないということになりNHKの受信料を払わなくてもよいことをみずから認めているのでしょう。



かなり「汚染が隠されている」と考えて警戒をした方が良いと思います。悲しいことですが、政府や自治体、農業団体・漁業団体が日本人の子供の健康を考えず、自分たちのことだけを考えている状態ではこちらも警戒をせざるを得ません。



市議会も活動しているところもあるのですが、全体としては「利益団体」となり、本当に選挙民、その中でも弱い人に目を向けていないようです。



この3つのことは、食材が相変わらず危険であるということで、その中での農水省の通達は本当に国民を向いていないという情けない事件でした(通達については次に書きます)。


(平成24年4月22日)

(宮城の蔵王と山形の蔵王を間違えていました。修正しました)




--------ここから音声内容--------




えー、食材の不安についてちょっとあの、最近の情勢をお話をします。これはあの農水省がですね、えー「民間が独自に基準を設けるのはけしからない。国に従え」なんていう通達出したんですが。ま、お殿様ですね。農水省っていうのはそんな偉くないんで、選挙も受けてないですからね、選挙の洗礼を受けてないから。“まあまあ、えー国民のみなさんお願いします”っていうぐらいなんですけどね。もちろんあの、農水省が立派なもの出せばみんながそれに自然と従うと、ま、いうことですけどね。ま、それで我々もちょっと理論武装しとこうということで、ちょっと出しましたが。





ええとまず、福島のほうれん草、ま、これも汚れましたですね。これも予想されることで、えーセシウムが再飛散してるわけです。12月の半ばからですから、大体4日間畑にあるとですね、規制値を超えます。ですから当然そうなんですけど、この原因なんですね。あのまぁ役所の方はですね、相変わらず、「再飛散は焼却が原因じゃない」とか「瓦礫は大丈夫だ」って否定ばかりしてましてね、そのために原因が追究されないんですよ。「あれも違う、これも違う、大丈夫だ」って言ってるだけでですね、再飛散したセシウムはやっぱり野菜を汚しますんでね、事実は事実として出てきてしまうんですね。





でまぁあの、ところがまぁちょっと良いのはですね、あの葉物野菜がやられそうな領域っていうのは、福島と関東北部、それから東北南部ぐらいに限定されております。ですからまぁ、そんな広い範囲で野菜が汚れることはないと思いますが、何しろあの…続いてるので、まぁ福島とかその辺の人はですね、やっぱマスクした方がいいと思いますね。ま、空気中に飛んでるわけですから、やっぱ飛んでるものを肺の方に吸うって事はですね、あんまり良いことではないので注意をなさった方がいいんではないかと思います。





この頃ですね、こういったデータを調べて「注意なさった方がいい」と言うと、恨まれたりしましてね、ま、どうしたらいいか分かんないっていう感じですが。やっぱり注意をしなきゃなんないのは、注意をしなきゃいけないと思いますね。本来、お医者さんなんかもそう言って欲しいんですけどね。





えーそれから最近ではですね、ま、大根のような根菜類、これはあんまり汚れてないんですが、しいたけ、これは昔からですね、これはあのセシウムを取りますから。それから川魚、これは太平洋側の魚ですね、えー神奈川から北海道まで。大体、例えば底にいる魚ですね、ヒラメとかカレイとかアイナメとか何かそういうやつ、そいから海藻類、これもあの海の底に根張ってますから、そいから貝ですね。こういったものはあの非常に高いですね。





そういう点ではあの、やっぱり北海道から神奈川まではですね、潮干狩りだとか、ま、連休も控えてますけども行楽、学校行事はですね、やっぱり海の方に行かない方がいいでしょうね。主な理由は、何つったってストロンチウムを測ってないってことなんですよ。これねあの、「ストロンチウムは無いだろう」何つっちゃいけないんですよ。





これは放射線防護の専門家は、ちょっと応援して欲しいんですが、放射線防護の原則は「測定値がなければ危険と見なす」ってことなんですよ。これは放射性物質が見えないので、ま、もちろん汚染されてる可能性の無いとこは別ですよ。だけども、今度の福島原発みたいに漏れた時はちゃんと測って安全を確認しなきゃ。これも放射線防護の先生方はですね、今までずっと学生さんに教えておられたことだと思うんで、その通りやっぱ言って欲しいなぁと思いますね。





それから宮城のお茶。これ1キロ2万ベクレルってのは、ものすごい量出ましたですね、これも「理屈通り」です。というのはですね、2011年の4月に静岡県のお茶がひどい目に遭ったわけですね。この原因はですね、「人間が大丈夫なら植物も汚れない」っていう変な知識だったんですよ。えー、放射性物質のヨウ素とかセシウムとかストロンチウムとかその他諸々ありますね。





ところが一方ですね、考えてみていただきたいんですが。例えば、セロリを食べると何が摂れるとかですね、どこの食品には何がうんと含まれてるって言いますでしょ。あれは何かって言いますと、「特定の植物に特定の元素が入る」ってこと言ってんですよ。ですから人間が安全でも、何かはダメなことあるわけですよね。これが静岡の失敗なんです。「人間は大丈夫です」って瓦礫なんかも言ってますよ、だけど人間が大丈夫だからといって農作物が大丈夫だってことないわけですね。静岡は、ま、ちょっと不運だったって言うか、ま、やむを得ないかなって気もするんです、最初ですから。





ですけど、横浜市長はダメですね。これは「大したことない」と繰り返して、パンフレットを全戸にですね、家に配って「油断」を勧めたんですよ。そしたら市内の給食で、何回も基準値オーバーを出したわけですからね。こういうことやるといけないですよ。放射性物質ってのは気をつけなきゃいけないわけで、「大丈夫だ」なんて言ったらですね、やっぱり出てきますから。これはもう、まだ市長さんお辞めになってないようですけど、僕はこれはあの児童にね、やっぱり給食で汚染された野菜を食べさした原因を作ったわけですからね、これはちょっと・・・私なんか話にならないっていう感じですけどね。





それから宮城の知事さんですね、これもあの「大したことない」って繰り返して、せっかくあの、福島の爆発のやつが蔵王で食い止めたのに、放射性物質が宮城に入れる隙を与えましたですね。これでお茶が出ました。いずれも「大したことない」って言ってた自治体で起こったのも不思議ですけどね。まぁ不思議って言っても当たり前かもしれませんね。





岩手県一関市もそうで、一関に放射性物質が降ったので、それをお知らせしたら「降ったなどと言ってもらっちゃ困る」つって、抗議を受けたんですけど。しかしそれはですね、知った方が良いんですよね。えー、その直後にセシウムで汚染された牛が一関から出て、農作物も被害を受けたわけですね。





やっぱり大人はですね、事実を正面から見て、インフルエンザが流行(はや)ったらインフルエンザが流行ったと、赤痢が流行ったら赤痢が流行ったって認めた方が、被害者が少なくて済みます、ええ。やっぱりこの事実を認める勇気っていうのは、どっから湧いてくるかって言うとやっぱり我が身ではなくて、「子供を守る、国土を守る、コメを守る」っていう「心」がですね、やっぱり事実をきちっと見よう!って気持ちになりますよね。子どもを守んなきゃいけない、だからもう、辛いけど事実を見よう!と、こういうことですね。





生活上のこの意味での考えはですね、岩手から神奈川まで農作物、山形、新潟の物は要注意であるってことですね、まだしばらく残念ながら。えー農業関係者とか自治体がしっかりしてれば、かなり安全な時期になってるんですけど残念ですね。もう少しあの「怖いものは怖い、いけないものはいけない」つって、責任のある人がですね、えー子供たち守りたいということで、守ると。ま、子供を守れれば妊婦も守れますからね、若い女性も守れますから。それが大切だと思います。





もう一つ大きなことはですね、静岡県焼津にですね、「鰹節作る時に出る灰」があるんですけど、これも1万3千ベクレルをカウントしました。で、これは問題はですね、灰が1万3千ベクレルであるということ自体はいけないことですけども、さっきのお茶なんかとはちょっと違ってまぁまぁなんですけどですね、これ隠匿したのがいけないですよ、隠したのが。最初はあの…組合が隠して、次は市の水産課が隠しましたね。大体判ったのが、2011年の8月ぐらいらしいんですよ。これ、隠したことだから分かんないですけど、大体その頃。





ところが事実が広がるの嫌がったわけですね、つまりお客さんの健康より自分たちの儲けっていうことです。公表しないでですね、実に今年の2012年の3月になって市の方に報告する。市の方もまた変なこと言ってんですよ、「発表を促したが、センターが発表を遅らした」って、センターの責任にしてんですけどね。センターが隠したのが問題ですけども、市が「発表を促す」んじゃなくて「発表したらいい」わけですよ、直ぐ。





だって違反なんですから。なんといっても1キロ100ベクレルを超えれば、原発の「低レベル廃棄物」ですからね。それ、130倍の灰なんですから。それは役所はですね、発表促すんじゃなくて、「こういうことがありました」って市民に言わないと、何のために市があるか分かりませんよね。





泥棒がいました、と。「泥棒が自首してこないので、そこで泥棒とか分かったけど捕まえませんでした」なんて警察が言ったら困っちゃうんですよ。「いやいや、そりゃ自首を待つんじゃなくて、そういう事が起こったら、まずやってくれるのが任務じゃないですか」って言いたくなっちゃうですよね。





ところがこれにはもう一つ問題があるんですよ。今まではですね、ま、マスコミはま、ちゃんとしてたんですね。だから、放射線が、1万3千ベクレルもの灰が出てたんだけど、それを、まぁあの6ヶ月ぐらい隠してたっていうとこ、NHKもマスコミも騒いだわけですよ。台風情報があるとですね、直ぐ発表するわけですよ。これどうしてかって言ったら、危険を知らせるってことが非常に大切なことですね。





それからマスコミは、自分で安全の基準決めちゃいけないですよね。ま、この頃偉くなったから、そういう気持ちでいるんですかね?何しろ、100ベクレル以上は放射性物質として扱わなきゃいけないんですから、「低レベル廃棄物」なんですから。これは国が決めた規則なんですからね。「そんなのはいいよ」なんて、マスコミが言っちゃいけないわけですね。ま、これはまぁ問題だと思います。





それから、ええと自治体とか、ま、農業団体、漁業団体はですね、やっぱり日本の基幹ですからね。一次産業、そういうものは非常に大切です、農業も、漁業も。だからやっぱりこの際ですね、自分たちは日本の産業の中核をなしてるんだってことで、ま、隠したりなんかしないように一つお願いしたいと思います。それから市議会もかなり活発に活動してるとこもあるんですが、全体として、やっぱりやや原発の「利益団体」側っていう感じがしますが。ここも議員さんですので、できれば選挙民側の方に目を向けて欲しい、と。





ま、ただ全体としてはですね、食材が三つの原因ですね、一つは再飛散してる。二つ目はお茶のように、こう…人間は大丈夫だけども、ある農作物が非常にやられる、と。三つ目はですね、昔だったらマスコミが騒いでくれたような放射性物質を隠すというようなことも最近では報道を逆にされない、ということもあってですね、なかなか難しいなと思います。ただ、ま、我々も頑張って何とか、できるだけこの情報も使ってですね、安全なものを食べていきたいと思います。





ま、私が最近、繰り返してますけども、健康に害がないようにするため、「できるだけ多種類の食材を買う」ってことですね。「同じようなものを毎日食べない」と。そうしますと、何かにあたってもですね、バイ菌ではありませんから体ん中で繁殖するってことはありませんから。





ま、外国の物も割合積極的に食べる、お米だけじゃなくてパンも食べる。えー生野菜を食べてたら、ちょっと煮てる野菜も食べる。えーそういう風にですね、えー果物の少ない人は少し増やして、多い人は減らす、という風にですね、しますとね、これは多分大丈夫な領域に入りますんで、ま、そういう風にしてもらえばと思います。農水省の通達は、本当に国民の方を向いてないって情けない状態を示してますけど、ちょっとこれは大きなことが含まれてますので、また機会があったら次回書きたいと思います。


(文字起こし by danielle)