正しく4階建てを理解する・・・「足し算」をして子供を守ろう  | お手伝いさんたちのブログ

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中部大学 武田邦彦先生のブログの中で、音声収録のみのものをテキスト化して掲載しています。
テキスト化及び掲載にあたっては先生から許可を頂いています。

正しく4階建てを理解する・・・「足し算」をして子供を守ろう (4/18)



原発事故が起こってから、政府、東大教授、専門家の多くが「自然放射線を1年1.5ミリシーベルトも浴びるのに、1年1ミリ以内など危険をあおるな」と言いました。でも、このような間違いをそのままにしておくと、その結果はもっとも被曝に弱い子供が犠牲になるだけです。

政府、東大教授、そして専門家が正式に訂正をする必要があることと、私たちは正しい内容を理解し、法律にそって正しく行動をするべきで、それが大人の責任です。



まず第一に被曝は「4階建て」ということです。一階は「自然被曝」、二階は「医療被曝」、三階は「核実験被曝」、そして四階が「原発被曝」です。特殊な時には五階(その他の被曝)があります。

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一階部分は、宇宙線、岩石、バナナなどからの被曝で、この被曝も有害かも知れませんが、日本に住んでいる限り年間1.5ミリシーベルトは仕方ありません。これを避けようと思ったら毎日、シェルターの中に入って生活をしなければなりません。



一階の上に二階があります。これは胸のレントゲンを撮る集団検診、胃の具合が悪くなったら胃のレントゲン、歯の治療で取るレントゲンなどで人によっても違いますが、平均すると年間2ミリシーベルトぐらいでしょう。



日本はこの医療用被曝が先進国の中でもっとも多いと言われていますが、その問題はまた別に考えてみたいと思います。でも、この一階、二階の部分は「日本で生活していれば仕方の無いもの」といえます。



その上に、三階があります。思い出したくないものですが、核実験の死の灰からの被曝です。原発事故直後、「核実験の時の被曝と同じ程度」などという東大教授もいて、混乱しましたが、これは二つの間違いがあります。



第一に、核実験の死の灰でかなりの人が健康を害しています。それは後に書きます。第二に、「核実験だからいいじゃないか」という論理は存在しません。人間の体に影響のあるものは「足し算」をしなければならないからです。



そして四階に原発被曝があります。すでに一階から三階までの被曝で年間4ミリシーベルトぐらいを浴びていますから、もし1年1ミリとすると、合計で5ミリ程度になります。



自然被曝、治療被曝、原爆被爆の三階までの部分は、どちらかというと「避けられない被爆」です。しかし原発被曝は、石炭火力でもやれば被曝しないので、「日本人が選ぶ被曝」です。そこで、原発から電気を30%ぐらいもらうなら、1年1ミリぐらいの被曝は仕方が無いというのが、今の日本の合意なので、それが法律になっているのです。これを「被曝の正当性の原理」と言います。



つまり、「被曝は損害」なので、その損害と同じメリットが必要です。いかに国家といえども、国民の健康を損なう権利はありません。「損害=メリット」の範囲なら法律も決められるのです。



間違ってはいけないこと:自然、治療、原爆、原発の被曝は足し算であること、


訂正すること     :今まで間違っていた人は訂正の公表をしてください。



政府、東大教授、専門家は自分のメンツより社会の安定を考え、「今まで足し算をしなかったのは間違い」と公表することによって、無駄な議論がなくなり、前向きの話が増え、子供の被曝が減りますから、自分のことより日本社会に貢献するようにしてください。


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【いくつかの事実】
第二次世界大戦後、大気圏核実験が行われ大気中にかなりの量のストロンチウムが放出された。このことによって、数10万人から数100万人の人が白血病になった。また日本でも白血病の増加は核実験の頻度と強く関係していて、年齢別に整理するとピークが観測される。



1950年より結核予防法が施行され、全児童生徒にレントゲン検査が始まると白血病が急増した。そして1972年に全児童生徒から入学時だけに限定されたことによって、急激に白血病が減少した。健康診断による白血病の増加と考えられる。



タバコの喫煙率が低下しても肺がんは増加しているが、健康診断などによる医療被曝が増大すると肺がんが増える傾向にある。肺がんにタバコの影響は明瞭に見られるが、それより、医療被曝、自動車排ガスなどの影響の方が統計的には肺がんに強い関係がある。


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原爆実験によって大気中に拡散したセシウム、ストロンチウム、プルトニウムが多くの人に影響を与えたことは考えられます。このような現象は統計的に起こるので、一人一人の人のこと(「おれは大丈夫だった」)を強調するのは科学的ではありません。



医療被曝は「自分の体の健康を保つために仕方なく被曝する」のであって、それは「薬、手術」などでも同じです。「医療被曝だから安全」ということはありません。



このように被曝と健康についてはまだ学問的に不明な部分が多く(専門家が冷静に議論しても一つの結論にならない=学問ではない)、慎重に扱わなければなりません。特に、結核予防法によって被曝した児童が白血病や肺がんになった可能性が高いのですから、このような過去の経験をまじめに大人は考えなければならないでしょう。



私は今まで「1年1ミリは法律」と言うことだけにとどめて、一つ一つのデータを紹介しなかったのは、学問的に議論のあることを緊急事態で蒸し返すのではなく、とりあえずはこれまでの専門家の決定を尊重して子供を守りたいと判断したからです。



ともかく、「足し算」で考えてください。それは、原発被曝でも同じで、外部、内部、給食、瓦礫、運動・・・すべては足し算なので、自治体の人も「上司に怒られるから」というだけではなく、「市民を守る」と言うことから、「大丈夫」と言うときにはすべてを足し合わせて、その市でもっとも被曝感度が高い子供でも大丈夫という根拠を持って言って欲しいものです。


(平成24年4月18日)




--------ここから音声内容--------




えーここではですね、あの、被曝に関する4階建ての話を・・・だけに絞ってきちっと話をしたいと。まぁこの私が言ってる「足し算」なんですが、大人が足し算をして子供を守んなきゃいけないということですね、これをしっかり言いたいと思います。





ま、それはですね、実はその、事後が起こった直後に政府だとか東大教授とか専門家がですね、「自然放射線は1年に1.5ミリシーベルトあるのに、1年1ミリで規制するなんつうのは、自然放射線よりか少ないじゃないか」なんて言ってですね、みんなを混乱させたわけですね。で、それでまぁ最も被曝に弱い子供たちが今でも犠牲になってるわけですから、これは早く訂正しなきゃいけない。





まず、第一はそう言った人ですね、政府とか東大教授とか専門家が正式に訂正して下さい。これはま、一応ここで言っときます。そうしないと、またゴタゴタしますんでですね。で、ここでまぁそれを前提にしてここでお話しますと、被曝っていうのは「4階建て」なんですね。





1階が「自然被曝」、その上にですよ・・・横にじゃなくて上に「医療被曝」があります。で3階は…3階にあるのが「核実験被曝」ですね、ま、原爆被曝といってもいいんです、核実験被曝。それから4階が「原発の被曝」ですね。特殊な時にはまぁ5階にですね、その他の被曝があるわけですよ、例えばまぁ人によっちゃ、何か研究をしてたりですね、ま、スチュワーデスさんとかそういう、割合と自然被曝ではあるけども特殊な環境にある人。ま、色々いますけども、それはまぁ今はちょっと置いて、一般の人だけを考えますと。





1階部分つうのは宇宙線だったり岩石からのもんだったり、バナナなんかであってですね、これはまぁ有害かどうかはまぁ、とにかくま、ちょっとこう分からないわけですけども、とにかく日本に住んでれば年間1.5ミリシーベルトはもう仕方ないんですね。これを避けようと思ったら、毎日シェルターの中に入って外に出ないようにしなきゃいけない、これはま、非現実的ですから。





その上に、足し算ですよ、足し算で医療被曝があるわけです。これは胸のレントゲン撮ったりしますよね、強制的に集団検診しますから。それから胃の具合が悪くなったら胃のレントゲン撮りますし、歯の治療でもレントゲン撮りますよね。もちろんその他でも色々医療用の被曝をします。これがまぁ大体年間2ミリシーベルトぐらいですよね。





それからその上にですね、更に核実験の被曝があります。この核実験の被曝はですね、核実験だから大したことないなんて言うけど、そんなことありません。ええと核実験でも何でもですね、被曝は被曝ですから。ま、最初、事故の最初にですね、「核実験のときの被曝と同じだから大丈夫じゃないか」、これはもう二重に間違ってるんですよ。





一つは核実験の死の灰で、かなりの人が実際に健康を害してるのはこれは分かってるわけです。そいから「核実験だからいいじゃないか」と、「核実験と同じぐらいなのに何で騒ぐんだ」と。いや、核実験っていうのはそれほど安全なもんじゃないんですよ。そりゃ、広島・長崎を見れば判るわけですから。だから「足し算」しなきゃなんない、核実験だから足し算しませんよってことないわけですね。





ですから最初にゼロから始まって、1階部分の1.5ミリを足して、医療被曝2ミリだったら、それ足して3.5、それに核実験の被曝は年によってずいぶん違うんですけど0.5とすると、それだけでもう4ミリシーベルトあるんですよね。その1階から3階までの4ミリシーベルトに加えてですね、えー、例えば原発の被曝を1年1ミリシーベルトとすると合計で5ミリシーベルト浴びるっていうことなんですよね。





で、自然被曝、治療被曝、原爆被曝の3階までの部分はですね、どちらかと言うと今んところですね、「避けられない」と考えてるわけですよ。まぁあのこの、医療が進んでですね、ええと例えばレントゲンやらなくても結核とか判るとかなるかもしれませんけど、今んとこしょうがないんですね。





ところが原発の被曝…今度の原発事故の被曝はですね、ま、石炭火力でもやれば被曝しないわけですから、ま、日本人が選べる被曝なんです。で、そこで1年1ミリってどうして決まってるかって言うと、原発から電気を30%ぐらい貰うので、1年1ミリぐらいの被曝は仕方がないっていうのがこれ、日本人の今の合意なんですよ。だから法律になってるわけですね。これを「被曝の正当化の原理」って言うんです。





えー「被曝の正当化の原理」っていうのは、自然放射線、それから治療用の放射線、それから核実験の放射線を全部足して、そして4ミリなら4ミリになる、それにま、電気を原発から貰うから事故のときは1年1ミリはしょうがないと、これが1年1ミリですね、これが「正当化」と。電気貰ってるからしょうがないやと。





これはですね、何かですね「我慢しろ!」とかですね、「黙れ!」とかいうのあんだけど、民主主義っていうのはそんなの無いんですよ。あの、国民が主人ですからね。国民が損害を受けるわけですよ、国民が1年1ミリシーベルトの「被曝という損害」を受けるので、そのメリットとしては電気を原発から貰うっていうことですね。





まぁここで間違っちゃいけないことは、もう一回繰り返しますが1階、2階、3階、4階は「足し算」をするっていうことです。ゼロからスタートするのは自然だけですよ、自然がまぁ一番最初からですからね。で、訂正して下さい、今まで間違ってた人はもうこれ訂正して下さい。自分のメンツよりかですね、やっぱり社会の安定ですから。そしてそれがちゃんとですね、みんな「私、間違ってました」と言ってくれれば無駄な議論がなくなりますから、前向きな話が増えましてね、結果的に子供の被曝が減って日本はより良い方向に行く、とこう思います。





事実をちょっと紹介しときますが、第二次世界大戦後、大気圏核実験が行われまして、だいぶストロンチウムが出ました。それで世界的な研究では数十万人から数百万人の白血病が出たと言われています。日本でもですね、白血病の増加っていうのは核実験と非常に関係しておりまして、年齢別に整理すると、その核実験のところの後にですね、白血病のピークが出てきます。ですからある程度の影響はあったと、ま、いうことですね。





あの、核実験だから影響なかったって言うようなことはとんでもないんですよ。我々は、それは影響あったけども仕方なく核実験の頃は「死の灰」を浴びていたっていうだけですからね。核実験のときに死の灰を浴びてながら、「核実験は大丈夫だ」ってそういうことは絶対ありません。





それから1950年から結核予防法ができましてですね、子供たちは小学校から高校まで全部、毎年レントゲン受けてたんですよ。えー、それで白血病が急増しました。そこでですね、1972年、ま、22年後からですね、ええとレントゲン検診は入学時だけに限定されました。それによってですね、白血病は急激に下がりましたね。ということは、健康診断によって白血病を作ったんですよ。ま、これもま、かなり正確かなぁと思うんですけど、まだ疑問はもちろん呈(てい)されてます。





そいから「肺ガン」ですね。私もちょっと疑問を呈してるんですが、肺ガンは、タバコの喫煙率が低下しても肺ガンは増大してるんですが、健康診断が多くなると肺ガンが増える傾向にあります。だから肺ガンはタバコと関係があることは間違いないんですが、医療被曝とか自動車用排ガスの影響もかなり強いってことなんですね。だから検診で肺ガンができてるんですよ、これもまた間違いないんです、ただ程度問題ありますけどね。





それから自動車用排ガスももちろん、自動車用の排ガスの規制っていうのはですね、“肺ガンを減らすために規制”したんですから。だからもちろん、自動車用排ガスっていうのは肺ガンになるんですよ。ですからまぁ肺ガンについてはですね、タバコと医療被曝と自動車用排ガスなんですね。





僕なんかはですね、一番大きいのは医療被曝かなぁと思ってるんですよ。それから自動車用排ガス、3番目がタバコかなと。で、タバコももちろん、いけないっていけないんですけど、あの、むしろ肺ガンの傾向を、こう…ずーっと整理しますとね、もちろんあの臨床的な整理もしますとですね、やっぱり肺ガンはタバコだけじゃないなって気はするんですよね。





ま、それから、えーその原爆実験によっていろんなことが起こったわけですが、これは統計的に起こりますからですね、「俺は大丈夫だった」っていう式のですね、あの、個別の議論はもう、これは科学ではありません。




それから医療被曝はある程度の犠牲を伴うのはしょうがないんですよね。これはお医者さんを私は弁護すんではなくて、薬を飲むにしても手術するにしてもですね、やっぱり損害を受けますから。だけど自分の健康全体としては良いから、それをお医者さんが判断していただくわけですから、「医療被曝は安全」だってことはないんですよ。それは医療はやっぱりですね、ある程度の体にダメージがくるんですが、それよりか自分の健康を保つために、ま、お医者さんが一所懸命考えていただくわけですからね。それはやっぱりあのよく関係・・・これをよく間違って「医療だから被曝したっていいじゃないか」って、いや、そんなことはないんですね。





ということで私はですね、実は被曝と健康の関係がはっきりしないので、まぁ今まで専門家が冷静に議論しても一つの結論にならないんですよ、ということは学問的じゃないってことですね。ま、特に結核予防法における健康診断がどのくらいの白血病を生じたかっていうことの議論がまだあるわけですから。やっぱりそこに慎重にした方がいいんじゃないかと思うんですね。





慎重でも、私はむやみに慎重って言ってんじゃないんですね、「1年に1ミリは法律」なんだと、だから緊急事態だから、この1年1ミリの法律を蒸し返すんじゃなくてですね、とりあえずこれまでの専門家の決定を尊重してくれつってるんですよ。子供を守るにはそれが一番良いつってるわけです、私の判断を言ってんじゃないんですよ。私が1年1ミリよりか上が良いか下が良いか、っていうことを言ってんじゃないんです。





やっぱりこの緊急事態、子供たちが被曝しているという緊急事態ではですね、医療被曝はできるだけ避けて、自然はしょうがないですからね。原爆もしょうがないですから、核実験の。だからせめて原発からの被曝は法律を守ってくださいってことですね。





そいからあの、自治体の人に主に言いますが、瓦礫の問題なんかで「足し算」まだしてないんですよ。外部、内部、給食、瓦礫、運動、これにですね、医療被曝も足さなきゃいけない、ね、それから自然放射線も足さなきゃいけない。おそらく自治体の人はですね、「上司に怒られるから」っていうんでですね、「大丈夫、大丈夫」って言ってると思うけども、やっぱりその市で最も被曝の感度が高い子供でも大丈夫と…いう根拠をきちっとですね、やっぱり誠意持ってやって欲しいと思いますね。ま、いずれにしても今日はあんまり脱線せずに「被曝は4階建てだ」と、ま、いうことだけ言いたいんですけど。


(文字起こし by danielle)