考える練習(4) 節電は良いことか?(3/9)
モモの「時間泥棒」も有名ですが、社会にはなにかと人が大切にしているものを盗もうとしている人がいるものです。その一つに1990年までの高度成長とバブル崩壊で多くの日本人が「すこしやり過ぎじゃないか?もっと質素な生活をしないと」と思っているのを見て「これはお金を盗めるぞ」と考えた一団がいます。
このことと似ているものに、「電子化されたお金の取引」が始まり、それまでは「金(きん)」とか「札束」という現物の移動があった巨額のお金の取引が、通信によって瞬時に行うことができるようになったという技術的進歩を逆手にとって、一儲けしようとした人が現れました。
2008年のリーマンショック、2010年のギリシャ崩壊などはその一つの典型的な例とも言えるでしょう。金融は本来、多くの人の預金などを「社会で有用なことをしようとしている人に資金提供して社会の発展に寄与する」ことが目的ですが、それが「関係者の破滅を伴う単なるマネーゲーム」となったのです。
さて、リサイクル、省エネ、温暖化、節電などはいずれもこの種の「お金泥棒」の類で、日本人が善良で節約家であることを狙ってきたものです。「もったいない」、「クールビズ」などもまったく同じ「ダマシの手口」なのです。
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節電はなぜ「ダマシ」なのでしょうか? それにはまず「アメリカ人一人あたり消費している電気は日本人の2倍」、「アメリカの電気代は日本の2分の1」、「日本の製品はアメリカの製品より安くて便利」、「日本人とアメリカ人はほぼ同じ所得」という4つ連立方程式を解いてみましょう。
このような連立方程式を自分で解くときには、「あまり詳しいデータに振り回されず、少ないデータで頭を巡らす」ことをして、最終結論が得られたら、それからネットでデータを調べるなり、なにかのチャンスがある時に専門家に聞いてみるのが良いと思います(専門家の多くは複雑に回答してくると思いますが)。
・・・さて、始めます・・・
東電が電気を作るのと新日鐵が鉄鋼生産をするのは工業生産としてはそれほど変わらない。かたや石炭を焚いてタービンを回して電気を作り、かたや石炭を焚いて高炉で鉄を溶かして還元する。両方とも大規模でエネルギー産業である。
日本の鉄鋼は世界でも強い競争力を持っている。それなのになぜ、電気はアメリカの2倍のコストがかかっているのだろうか? 電気を作るコストは燃料費の他に、発電効率、送電距離などがあるが、いずれもアメリカより日本の方が優れている.発電効率の日本の技術は世界に誇るものだし、送電距離は国土の広いアメリカと日本では比べものにならない。
となると、技術的には「電気代が2倍高い」とか「日本は一人あたりの電気をアメリカの2分の1しか作っていない」という疑問はますます深くなる.
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「考える」ためにはこの辺で一段落しておいた方が良いのが普通です.あまりギリギリと追い詰めるとだんだん専門の領域に入り、そこでうっかり「電力のデータ」などを参考にすると、また振り出しに戻ってしまうからです.
この問題の難しいところは「本当に知らなければならないデータ」は、電力やマスコミが利害関係で明らかにしていないことと、「節電は大切なことだ」という「思想」とがあるところで交錯していることによります。自分の心から「節電が良いか悪いかということと、日本人がなんでアメリカ人に対して2分の1しか使えず、さらに節電しなければならないのか?」を分けることがとても難しく、データはそのところでキュッと曲がってしまっているからです.
実際には、電力が独占であること、議員や学者にお金を配っていること、役人の再就職に骨を折っていることなどに起因しているのですが、それを具体的な数値で追い詰めるのは難しく、おおよそこのぐらいでいったん引いて少し外から見るのが正解です.
(平成24年3月9日)
--------ここから音声内容--------
ええと、考える練習の4回目に進みたいと思いますが。ここでは節電は良いことか?、ということをお話をしたいと思います。えー、「時間泥棒」って言うのがあってですね、まぁこれは人の大切にしてる時間をですね、盗んでやろうっていう、まぁそういうことですね。ほんとに社会っていうのは、自分の額に汗して働いてそれで十分なんですけども、えー、人が大切にしてるものをですね、盗んでやろうという人がいるんですね。
えー、今から20年ぐらい前まで、日本は高度成長とバブル経済で非常に繁栄してきたわけですが、それが崩壊しましてね。多くの日本人がちょっとやりすぎじゃないかなと、もっと質素な生活で良いんじゃないかと、いうふうに思った人がいるんですよ。質素な生活をするっていうことはどういうことかと言いますと、儲けはあまり変わりませんからね、収入は。そうすると、質素な生活するとお金が余るわけですよ。そのお金を狙おうという人が出てきたわけですね。
これと似ていることに、「電子化されたお金の取引」っていうのがあるわけですね。ええと、まぁパソコンが発達するまでは、お金を移動させようと思うと「札束」っていうのがあって、結構大変だったわけですよ、それ移動させんの。警戒しなきゃなんないし、重たいしですね。ところがそれが通信によってですね、パッと1億円でも何でも移せるようになる。
ま、これは良かったんですけど、この技術的進歩を逆手に取って一儲けしようっていうのが出てきて、その結果ですね、最近では2008年のリーマンショックだとか、この前のギリシャ崩壊みたいにですね、なんだかお金がですね、かえって社会を不安定にするってことになっちゃったわけですね。元々お金っていうのは、「社会で有用なことをしようとする人に提供して、社会の発展に寄与する」のが目的なのに、それを逆になってですね、「社会の破滅を伴うマネーゲーム」となっちゃったわけですね。
これと非常に似てるんですよ、実はあのちょっと種類が違うんですが。リサイクル、省エネ、温暖化、節電っていうのはですね、この「お金泥棒」の類なんですね。日本人が善良で節約家であることを狙って来たもんで、言葉としては「もったいない」とこの言葉、良くないんですよ。良い言葉として認識されてますけども。それから「クールビズ」なんていうですね、何だか分からない「ダマシの言葉」が出てきたわけですね。
じゃあ、節電はなぜ「ダマシ」なんでしょうか?と。えー、これを考えるのに今度はですね、4つの知識があったとします。一つが「アメリカ人一人当たりの電気の消費量は日本人の2倍である」。2倍電気使ってるってことですね。ところが、「アメリカの電気代は日本の2分の1である」と。えー、一般的に言って…電気以外ですよ、「日本の製品はアメリカの製品より、どっちかっていうと安くて便利だ」と。「日本人とアメリカ人もほぼ同じぐらいの収入がある」。これ、あの電気については、ちょっとお分かりになってない人もいるかもしれませんが、まぁ日本の製品はアメリカの製品より良いんだっていうのは、大体判ってますよね。そいから日本人とアメリカ人がほぼ同じぐらいの収入だ、っていうのも判っておられますよね。
そうすっと、この4つの連立方程式をどう解くのか、こういうことって結構多いんですよ。あの、考えるときにはですね。連立方程式4つ、これはま、一つ一つ全部事実なんで、事実が調和してなきゃいけないんですね。で、こういうときには、すぐ調べないっていうのがコツなんですよ。これ調べますとね、専門家が出てくるんですね。専門家っていうのは、ダマシをしようと思ってる人が多いんで、それにやられちゃうんですよ。まず考えて、最終結論が得られてからネットで調べたり、専門家に聞く、というのが良いんですね。
さて、始めたいと思いますが、まずこんなふうに考えていきます。東電が電気を作るのと、新日鉄が鉄を生産するのとでは、そんなに変わんないんじゃないかな、と。大体は東電の場合は石炭をダーッと焚いてですね、タービンを回して電気を作るわけですよ。もの凄くでっかい装置で何とか発電所、片やですね、鉄鋼会社は高炉っていうのがあって、これも製鉄所は大きいことはみんな知ってますよね。みんな、あの自分が簡単に判ることからいかなきゃいけません。
そこで石炭をやっぱり焚いてですね、鉄を溶かして還元して、鉄を得るわけですね。まぁ内容詳しく知る必要ないんです。外から見ると、電気会社も石炭運んできてバーッと燃やして電気が出てくる、と。今度、鉄の会社は石炭運んできて、ダーッと燃やして鉄が出てくる、と。出てくる物は違うんですけど、やってることほとんど同じで工場の大きさも同し(同じ)なぐらいなんですね。
ところがですね、新日鉄なんかJFE(大手鉄鋼メーカー)とかそっちはですね、世界でも最も強い競争力持ってんですよ。アメリカなんか全然問題じゃないんですね、日本が勝っちゃうんですよ。勝っちゃうってことは、コストが安いってことですね。なのに何で電気は、アメリカの2倍のコストが掛かってんだろうか?全然おかしいですね。で、まぁそれを考えると、ちょっと他になんか要因があんのかなぁ?と思ってて、燃料なんかと一緒だなと。
ところが発電効率、これは詳しくご存じなくてもですね、ま、日本の技術ですからね。まぁ鉄鋼の技術も一緒ですけども、発電効率は日本はアメリカよりか良いわけですね。あと電気ったら(って言ったら)、送電距離ぐらいですね、電気を送る距離、これは日本の国土って小っちゃいですから、アメリカの方がかなり長ーく送んなきゃいけないんですよ。そうすっと、日本の家庭で電気を受け取る方が、アメリカの家庭で電気受け取るよりか、ずっとずっと簡単だなってこと判りますよね。「おかしいな!」と。そういうふうに考えますとね、「電気代が2倍高い」とおかしいな、と。
えー、それにも、もっとおかしいのは、元々「日本の電力会社が一人当たり電気を、アメリカの2分の1しか作ってない」ってことが、これおかしいですよね、これ一人当たりですから。だって、どんどん作ればいいわけですね、なんか電気会社って昔から「節電しよう!」とかなんか言ってんですけど、アレ何なんだろうか、と。もちろんあの、よくね、税金なんかの比較ん時に「日本の消費税上げます」とか言うときに、よくアメリカ出てきますよ。「アメリカがどうだとか、イギリスがどうだ」とかね。あの、「消費税が10%の州があるとか、もっと高いとこあるとか。だから日本は・・・」とかですね、それから年金なんかの問題でも、アメリカがどうとかヨーロッパがどうとか国際比較が出てくるでしょ?
ところがあの、電気ってほとんど出てこないんですよ。何で出てこないか?ったら、具合が悪いからなんですよ、ええ。で、比較しますとね、もちろん日本よりか高い国もあります、政策的にね。イタリアなんかそうです。しかし、それはすごく少ないんですよ。そうすっとね、電気代の国際比較なんかしますとね、たちまちの内に事実がバレちゃうんで、なかなかテレビもね、えー、電気代の比較をしないで、消費税を上げるときは都合の良い国際比較をする、っていうのはそういうことですね。
ええと、例えば「メタボ」なんかそうですね。メタボなんか国際比較、絶対しないんですよ、日本が一番痩せてるから。だから、そういうときはやらないんですね。ま、電気もそういうことになります。で、ま、ここら辺でですね、一段落するのがまた考えるためで良いんですよ。つまり、ここら辺で大体判ってくるんですね。「ええと、あ、そうか!日本の電気代が2倍高いってのは、それはおかしいわな」と、ね。
あの、品質が良いったって、日本の鉄鋼なんて猛烈品質が良いですからね。よくあの電気会社が「電気の品質が良いですから」って、そんなことないんですよ。アメリカでもヨーロッパでもですね、精密工業とか、それから一瞬でも電気が切れちゃいけない病院なんか一杯あるんですからね、手術してる人もいるし。そんなのはどこでも同じなんですね。だから、ま、そういうのもちょっと誤魔化しの理由なんですよ。だから専門家の言うことは初めから聞きますと、最初っから誤魔化されちゃいますんでね。で、まぁこの辺で一応止めるんです。あまりギリギリ問い詰めるとだんだん専門になっちゃってうっかり、まぁ専門家に騙されちゃうわけですね。
ここら辺で大体判ったと思いますが、4つの連立方程式を解くときに、本当に知らなければならないというデータが、実は電力とかマスコミの利害関係で隠されてるわけですね。で、この4つの連立方程式を良く考える前に、自分の心ん中に“ま、節電は大切なことだからな”という、「思想」が入ってしまうんですね。これがあの、データの誤魔化しの非常に大きな部分になってます。
で、ここでですね、その考える方が、「節電が良いか悪いか、道徳的に良いか悪いか?」ということと、「日本人が何でアメリカ人の2分の1しか電気を使わないで、更に節電しなきゃならないのか?」ということをですね、切り離して、ま、考える。この切り離しが難しいんですよ。やっぱ人間は道徳的なことと、それからデータとがいつもこう、混ざってますんでね。そこにあの、実は付け込んでくるわけですね。
で、もちろん答えはですね、ま、皆さんがあのお考えになるとして、私の答えは「電力が独占であること」なんですね。えー、そりゃあまぁ、独占であればやっぱり高くなるのはこれ当然で、えー、アメリカは独占じゃありませんし、ま、そういうところは安くなると、ま、これは単純なことですね。
それから何故か判んないんですけど、電力は議員や学者にお金をかなり配ってるんですよ。これ何で配る必要があるんですかね?独占企業ですから、別に配る必要ないんですけど、配ってんですね。ええっと、テレビとかそういった新聞の広告の一番多いのも、電力なんですよ、実は。それはどうしてかって言うとあの、広告費を配ってるように見えて、別に広告する必要ないんですよ。ええと、電力が広告費を配るのは、マスコミを支配下に治めたいからなんですね。
ほんとは広告ってのはですね、マスコミを支配するんじゃなくて、国民が良く知るためにあの、コマーシャルをするわけですね。例えば、「このシャンプーを買ってください」と、「良いシャンプーですよ」と。これはあの、良いシャンプーですよということを言うのが広告なんですけど、電力は違うんですよ。「電気が良いんですよ」っていうんじゃないんですよ、あの、お金を出して丸め込むってことですね。そいからまぁ、役人の再就職にもの凄く骨を折っとりまして、まぁ大体、エネルギーとか電気をやってる人だったら電話してですね、電力に頼むよと言やぁ、再就職はちゃんとやってくれるっていうような感じなんですね。
しかし、これは全部、電力が持ってるお金じゃないんですよ。我々が払ってる電気代ですね、ですから当然高くなると、いうのはまぁ当然って言やぁちょっと言い過ぎかもしれませんが、ま、大体判る、と。そこら辺までがしっかりと骨組みをこう作って、疑問点をしっかり出しておいて、そしてここで一旦引いてですね、そして世の中をずーっと見る、という期間がまぁ1年ぐらいとか、半年ぐらいはあったほうが良いんですね。
そうしますと、データの間違いも見えてきますし、そいからテレビなんかでコメンテーターが言ってることも、「ああ、これはちょっと変だな」っていうことも判ってきます。あの、テレビが全然意味が無いってことないんですね。あの、自分が良く判っていてテレビを見ると、ある意味では“ようけ判る”(よくわかる)ということになるので、そういう方法をちょっとここではご推薦をした、とまぁいうことですね。あくまでも4つの方程式を自分の頭で考えてみると、まぁいうことであります。
(文字起こし by danielle)