福島4号機の問題・・・合意できる科学的発信を | お手伝いさんたちのブログ

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中部大学 武田邦彦先生のブログの中で、音声収録のみのものをテキスト化して掲載しています。
テキスト化及び掲載にあたっては先生から許可を頂いています。

福島4号機の問題・・・合意できる科学的発信を



このブログでは福島原発の爆発直後から、「再爆発はほとんどない。もし危険が生じても逃げる時間がある」ということを繰り返し書いてきました。しかし、2011年の4月から専門家あるいはブログで「福島原発の再爆発」が取り上げられています.


なぜ、私が「再爆発の危険性が低く、もし危険が生じても逃げる時間があるか」と判断しているかということを繰り返して書きました。また、私はすでに大半の放射性物質が福島を中心として降り注いだのに、まだ福島原発のことを言うのは、多くの人の被曝から目をそらす負の効果を持つだけと思っています.


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【理由】 第一に、原子炉は核反応が止まると急激に力を失い、1日で10分の1という具合に小さくなり、途中で小さくなりかたは弱まりますが、1年経つと運転中の400分の1以下になっていることです。



第二に、原子炉建屋の中に放射性物質が大量に放出されても、その運搬手段がなければ遠くには飛びません。それは「核爆発、水素爆発、水蒸気爆発」などの爆発力が必要です.現在の福島原発は4号機も含めて爆発の可能性がきわめて低くなっています.火災ぐらいの力では付近は影響を受けますが、10キロ以上のところに直ちに降り注ぐことはありません.



第三に、4号機には燃料となるウランがありますが、ウラン235が4%程度の原子炉用燃料は水が減速材として存在し、特別な立体配置にならないと核爆発を継続することはできません。従って「未使用の核燃料」があっても危険ではありません.



第四に、4号機のプールが大きく崩壊し、核燃料と水が原子炉の下に落下した場合、原子炉の下に水を注ぐことができますので、最低限の冷却ができます。また一部に穴があいて、水漏れが始まって徐々に乾燥した場合、燃料が加熱して融けたり破壊するまでにかなりの時間がかかると想われます.それは、2011年3月と比べると「発熱量」(放射性物質の崩壊速度)が400分の1以下になっています(少なくとも50分の1以下)。だから3月には燃料がとけるのに1日かかったとすると、今は50日とか400日かかるということを意味しています.しかも、3月に燃料棒が融けたのは原子炉内で直接水をかけられなかったのですが、現在は4号機のプールに水をかけることができます。


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福島原発が再爆発する、危険が迫っているということが言われる度に・・・すでに事故から20回ぐらいは言われていると思いますが・・・その度に、危険を警告している人の発言内容や技術内容を見ていますが、私が技術者としてなっとくできる説明はありません.



「4号機があぶない」・・・「日本はダメだ」というように説明なしにのものがほとんどでした。私たち技術者は「専門家同士は冷静に考えれば判る」ということを「科学」とか「学問」というのであり、またそれは「思想」などとは無関係です.



私と全く違う思想の人がご発言になっても、その内容が学問として納得できるものなら、同意します.それは科学者や技術者の基礎的な素養だからです.


福島原発より、セシウム再飛散の方がずっと危険ですし、原発再開の方が何10倍も危険です.また、人間のやっているものはいつも危険だという意識も必要で、「ゼロ(安全)か100(危険)か」ということもありません.

(平成24年3月10日)


--------ここから音声内容--------



ええと、福島4号機の問題でですね、えー、みなさんが不安になっているわけです。えーとこのブログではですね、福島原発の爆発直後…もうちょうど一年になりますが、えー、福島原発の再爆発もほとんどない、と。ま、確率1/20ぐらいはあるかもしれないけれども…ということを言ってきました。えー、もし危険が生じても、逃げる時間があるから大丈夫だ、ということを繰り返し書いてきました。



あー、しかしまたですね、最近福島原発の再爆発が取り上げられています。そこでですね、非常にお迷いになってる方が多いので、私の見解を書きました。えー、ま、私は実はですね、テレビとかまあ色んな人が福島原発の再爆発とかの危険性を言うたびにですね、何か子供たちが被曝してるのを…こう…カムフラージュする活動じゃないかなぁと思って、まあ若干「斜め」にこう見ているわけですけどね。




まぁしかし話している人の様子から見ればそんな感じもしないし、えーまじめに福島原発のことを心配してるような気もするんですけど、私の理由を書きます。まず第一にですね、えー、これは何回も書いていることですが、原子炉は核反応が止まるとですね、急激に力を失うんですね。ま、1/10ぐらいずつ減っていく、と…最初のうちは…というふうに考えていいわけです。一年たちますとですね、まぁ少なくとも1/400ぐらいなってるんです。これ何分の1ってのが難しいのはですね、どこの時点を、まぁ最初とするかということで、全速力で放射性物質が出てる時を基準にすると、すごく小さくなってるわけですけどね。まぁほどほどで見て1/400ぐらいかな、と。





それから、えー仮にですね、じゃあその1/400だけども、それがですね、えー原子炉建屋の中に放出されたとしますね。えーしかし爆発とかですね、なにかそういうような運搬手段ですね…運搬というと大げさですけども、出てきた放射性物質が福島原発の中にある場合はですね、まぁそん中で働いている人かわいそうですけど、まあ働いている人は事前にわかりますから、逃げると思いますが、えー、まぁそこには被害が及ぶにしてもですね、核爆発とか水素爆発とか水蒸気爆発といったですね、爆発力みたいのがないと、遠くに飛ぶっていうのはできないんですよ。まぁ風に運ばれるにしてもですね、まずは上空に高く上がってくれなきゃいけないわけですね。そうしますと今の福島原発は4号機も他の号機もですね、爆発の危険性はかなり低いんですね。火災くらいが起こってもですね、そんなに10km以上遠くのとこに飛ぶってことはまずないんですね。






それからまぁ当時はですね10km以内にも人が住んでおられましたんでね、やっぱり非常に気をつけなきゃなんない状態だったんですけども、今はまぁ…ええと、まぁご自分の判断でかなり近くにおられる人もいますけど、私はですね、元々そんな近くにいること自体が間違いですから、ま、そこはもう爆発する、しないは関わらずですね、まぁあのー放射性物質の降ったところはみんな退避した方がいいわけですから、ま、そういう意味では関係ないだろうと思います。






それから4号機にはウランがあるんですけども、このウランはですね、えー235っていう、核爆発するウランが4パーセント程度しかないんですね。ですから水が減速材として存在して、特別な立体配置になってないと核爆発を継続することはできないわけです。だからあの未使用の核燃料があるから危険だっていうのがあるんですけど、そんなに危険じゃないと思いますね。えー原子爆弾は4パーセントウランで作るのはきわめて難しいしですしね、仮に核爆発しても小さな爆発しかできませんので、大丈夫だと思います。





それから4号機のプールが大きく崩壊して、核燃料と水が原子炉の下にどかーんと落ちた場合ですね。これは原子炉の下に水を注ぐことができるので、今の状態とさほどは違わないと思います。それから一部に穴が開いて水漏れが始まってですね、徐々に…まぁ、プールが乾燥してった場合、ですね。ま、この場合は燃料が加熱したり溶けたり破壊するわけですが、なにしろ発熱量が1/400とか、ま、どんなに少なく見ても1/50ぐらいなんですよ。





だから3月の時にですね、燃料が溶けるのが一日かかったとすると、今は少なくも2か月ぐらい以上はかかるってことですね。ま、これが、私が「逃げる余裕がありますよ」と言ってる理由なんですけどね。えー、ドーンと爆発も来ないし、それから溶けるのにも少し時間がかかりますので、えー4号機のプールが危険な状態になった、というふうにわかってから、まあ…一ヶ月以上あればですね、一応それから行動した方が、今何かををするよりかはいいんではないか、とまあいうふうに思います。






それからその場合もですね、日本じゅうがどうだとか、東京がどうだってことなりませんですね。あの、まだですね、原子力(発電所)が動いてる時は放射性物質はものすごくありますから、そしてこれがボーンと爆発するとですね、ま、関東一円というふうに言えないわけじゃないんですけど、まぁ今はですね、爆発はまずしません。それから…放射性物質は、まぁ1/100とか1/50とか1/400とか…まぁいずれにしてもその位なわけですね。ですから、まあ…この普通に考えたら起こらない、ということですね。






えー、まー私はですね、この一年間、えー、逆の側としては被曝をいかにして減らすか、ということに努力をしてきましたが、逆側ではですね、えー原発が再爆発するということに気が取られないように、と。身の回りにある放射性物質に気をつけて下さいねってことを随分言ってきたんですが、ま、それはですね、私が、あの、爆発するという記事があると、それをすぐ読んでみて…一応見てみる、見てるんですね、その人の発言内容とか、技術的にどう言ってるのかってのを。





ところが大体はですね、「危ない、ダメだ」っていうのはですね、突如として出てくるんですね。でー学問ちゅうのはですね、専門家同士が冷静に考えればわかるという範囲なんですよ。その範囲外は私たちもわからないんです。それは思想とは関係ないんですね。ですから、私よく…あの、あの人と意見が違うからじゃないかと…いや、そんなこと全然関係ありません。私は科学(者)としての訓練を充分に受けてますからね、えー、その人とどんなに人間的に合わなくても、利害関係が違っててもですね、科学的事実についてはお互いに納得できる、と思っております。これがなければ科学をやっていけませんのでね、えーそれはあのー普通の人と少し違うかもしれません。






えー、私が時々ですね、例えば…あー、意見が違ってみえるという時があるらしいんですね。それはよくよく聞いてみると、その、人間関係とかそういうものなんですね。「誰が言った」とか、僕…私にはね、「誰が言った」とかいうの全然ないんですよ。それはあの、もう科学の人はそうですけどね、「誰が言った」ってのは科学に関係ないんですよ。その言ったことの「内容」なんですね。





えー、ただまぁ、もちろんですね、えー人間のやることは、あー、いつも危険なんです。えー「安全か、危険か」なんていう「0, 100」の議論はありません。その点ではですね、ま、注意はする必要ありますが、ま、やはり合理的に考えるっていうことですね。





それからあの、もちろん被曝についても、まったく非科学的なことを言っておられるし、瓦礫もそうですし、それからこの爆発ですね。これは逆側…反原発側ですが、やはりね、みなさんちょっと科学から離れておられるように私には思えます。やっぱり科学というのはですね、私たち科学者、技術者が合理的に同意できることですから、ま、それをしっかりとやっていくってことが大切だと思います。多くの人は思想的な問題とか、お子さんが心配だとか、そういった感情的な問題で悩んでおられるわけですから、この際科学者、技術者は自分の立場を捨てて、そしてこの原子力発電所の爆発という、非常に大きなことに取り組んでもらいたいな、と、私はそういうふうに希望しています。