日本のエネルギー政策 その独自性と混乱 | お手伝いさんたちのブログ

お手伝いさんたちのブログ

中部大学 武田邦彦先生のブログの中で、音声収録のみのものをテキスト化して掲載しています。
テキスト化及び掲載にあたっては先生から許可を頂いています。

日本のエネルギー政策 その独自性と混乱 (3/1)




少し考えがあって、日本のエネルギー政策をまとめてみました。音声が主体ですみませんが、以下の内容です。日本のエネルギー政策は世界でも特殊で、その特殊性を全体として整理してみました。


1)  世界の生産量の10%を担う大工業国なのに石油、石炭、ウランなどのエネルギー資源がほとんど無い。



2)  日本の大地には石灰石、砂利などの資源が豊富で、水は世界でもまれに見るほど上質なものが大量に得られる。



3)  「温帯の大きな島国」としては南半球を除いて日本しかなく、気温の変動が少なく、太陽の光もほどほど(凍死や熱波が少ない)である。周期的な台風、中央の山脈による降雪などの季節的なエネルギー関係の特徴が大きい。



4)  200海里経済水域が広く、陸と海の合計では世界の6番目の大きさの大国である。



5)  人口密度がきわめて高く(北欧の20分の1)、自然エネルギーを利用することはできない環境にある。



6)  石油・石炭・ウランなどの工業的エネルギー資源と食料輸入は世界一で海上輸送の15%をしめる。その一方で海上輸送の安全性の確保に欠かせない海軍を持っていない。



7)  温暖化(CO2で温暖化すると錯覚している)、省エネ(石油、石炭は枯渇すると錯覚している)、節電(アメリカ人の2分の1しか使っていないのに、さらに節電しようとしている)など世界の大国が実施していない特異な政策を採用している。



8)  大震災・原発事故があっても円高で日本の産業は国際的に高く評価されていて、海外からのエネルギー資源の買い付け価格は低下し続けている。



9)  このような特殊なエネルギー・資源環境にあり、民主主義国家ではあるが、原発政策で判るように(原発の電気は使うけれど廃棄物処分場を持っていないなど)「お上が決める」という意識が強いので、エネルギー政策も右往左往する。



10)  その原因の一つに憲法で表現の自由(言論の自由)、学問の自由が保証され、国民が支持しているにも関わらず、まるで軍国主義国家のように「言ってはいけないこと」や「タブー」が多いので議論が煮詰まらない。


(平成24年3月1日)



--------ここから音声内容--------



ええと、日本はあの、世界の10%ぐらいの国でですね、まぁ工業は特に発達してるわけですが。石油・石炭・ウランなどのエネルギー資源はほとんど無いという特徴があります。例えば、アメリカ、ドイツ、まぁ昔ですとイギリスですね。これはアメリカはもちろんのこと、ドイツはまぁルール地帯の石炭を始め、最近ではソ連からの天然ガスなどもあってですね、エネルギーがまぁ比較的豊富でありますし、またイギリスは北海油田をまぁ持ってるわけですね。






その他に最近ではロシア、中国も上げなきゃいけないと思いますが。もちろん天然ガスのロシア、中国はもちろん石炭豊富にあって、資源を豊富に持ってます。その点ではまぁ日本はですね、世界の大きな工業国としては極めて特殊であるということが言えます。








しかし、一方ではですね、資源というものは石油・石炭・ウランばかりじゃないわけですね。例えば、石灰石、砂利といったですね、資源は日本には豊富であります。日本は砂でできてるので石灰石・砂利が豊富で、その代わり石油・石炭が無い、とまぁこういうふうに言ってもいいわけですね。








それから水ですけども、水の資源も、世界に希に見るほど良質な水が大量に得られます。実はですね、ええと、節水、つまり水を節約するという話がありますが、これはですね、ある意味では大変に資源の浪費であります。つうのはですね、良質の淡水が山に降って、それを100%利用しなければいけないのに、できるだけ使わないということでですね、海に流してるという、ま、そういうような錯覚も日本では存在します。








えー、日本のですね、石灰石・砂利は、むしろ資源として利用するというよりか、利用しないようにしていると、まぁいうことですね。この点で、石油・石炭・ウランという天然資源が無い日本はですね、資源ということに対して概念があまりはっきりしてないので、日本にある資源、石灰石・砂利・水などをですね、できるだけ使わないようにしようというですね、逆の方向になっていると、まぁいうことが言えると思います。








また自然としてはですね、温帯にある大きな島国としては、南半球を除きまして日本だけでありますので、大変に気候の変動が少なくですね、太陽の光もほどほどである、つまり凍死するとか熱波に襲われるということはあまりないわけですね。アメリカの北部なんかですと、燃料が切れれば凍死者が出るという意味で、エネルギーと凍死という関係が非常に密接に関係してるんですけれども、日本ではそういうことがないってことですね。また、周期的に台風が来る、中央に山脈があって雪が定期的に降るといったですね、ま、規則的な季節変動というものもある。これはエネルギーに大きな影響を与えております。








一方、日本列島は37万平方キロメートルと比較的小さな島なんですが、200海里経済水域が非常に広いので、陸と海の合計でいえば世界で6番目という大国ですね。もう中国とかロシア、アメリカといったですね、大国に肩を並べるぐらいの大国であるということですね。








ところがまぁ一方、人口密度が極めて高い、つまり陸地が少ないので、大体、北欧の20分の1ですね。ときどきエネルギーとか環境問題で、北欧はこうだから日本もこうだというのは全然合いません。それは、えー、人口密度によるところが多いんですね。従って、ま、最近評判の自然エネルギーを利用するっていうことはできない環境にあります。








えー、またですね、少しエネルギー問題を広く見ますと、石油・石炭・ウランなどの工業的なエネルギー資源と、食料輸入っていうのは日本は世界一でありますし、海上輸送の15%を占めてます。えー、海には警察官がいませんので、各国軍隊が海上輸送の安全を保ってるわけですが、日本には実は海軍がないというですね、極めて特別なことになっているということですね。








えー、それから、まぁいつも私が言ってるように温暖化においては、CO2で温暖化すると日本だけが錯覚して、世界で唯一、CO2を削減しております。また省エネっていうのも、石油・石炭が枯渇すると錯覚しておりまして、これもほぼ日本だけで省エネやってます。








で、節電っていうのは最近ありますが、元々アメリカの2分の1しか使ってないわけで、同じ経済的なぐらいのレベルで非常に不思議な現象ですね。それを更に節電しようとしてる。えー、電気を使うのが道徳的に良いとか悪いとかではなくて、エネルギーとか電気っていう点を考えるときにですね、日本がアメリカ人の2分の1しか使ってないというのは非常に特殊なんですよ。








ですから、それをですね、良く考えて話を進めないとですね、非常にその“井の中の蛙”的な話になってしまうということですね。こういう話をしますとね、「武田は、電気をいくらでも使っても良いんだ」と。そういうことを言ってんじゃなくてですね。こういう道徳的なことではなくて、「日本は、なぜアメリカ人の2分の1の電気しか使ってないのに、節電しなければならないという政策が必要なのか?」ということですね。








しかし大震災・原発事故あっても、今でも円高が続いておりまして、日本の産業は国際的に高く評価されております。で、海外からのエネルギー資源ですね、石油・石炭の買い付け価格は低下を続けてるわけですね。この現象をどう見るかっていうことですね。








一方、日本の中に歪みがありまして、民主主義国家なのに、原発政策で判るように、ま、つまりですね、原発の電気は欲しいけど、立地もままならないし、廃棄物貯蔵所も持ってないというようなことで、これは日本のですね、民主主義がまだ完全じゃなくて「お上が決めている」ということで、反対運動があったりするんですね。本来ならば、民主的なプロセスで決めていれば反対運動っていうのはそれほど強くないわけで、しかしそれがあるので、ま、エネルギー政策も、まぁ今度の原発事故を見るように右往左往するということになります。










ええまぁ、その一つの原因としてですね、日本国憲法で表現の自由、言論の自由ですね、それから学問の自由が保証されていて、それを日本国憲法は国民が支持してるにも関わらず、まるで最近は軍国主義国家のようにですね、「言ってはいけない」とか「タブー」がものすごく多い…ということでですね、議論が煮詰まらないんですね。あるとこまでいくと、そんなこと言うと心を傷つけるとかですね、ま、変なのが出てきましてですね。えー、合理的な議論がふさがれているわけです。









「エネルギーの国際的戦略」、なんて言いますとですね、もちろん表現の自由も学問の自由も必要なんですね。そいから、そんなこと言ったら感情が傷つくなんていうですね、事実を正面から見ることができないような弱い心では、やっぱりダメなんですね。私、まぁあの、このちょっとまとめをしてみたのはですね、ま、自分が考えてることがバラバラではいけないし、またエネルギーとか資源政策っていうのを考えるときにはですね、ま、文科系とか理科系とかいうのを考えてもいけないので、それも含めてここに書きました。


(文字起こし by danielle)