瓦礫引き受けに関する考え方(1)・・・なぜ、瓦礫を引き受けてはいけないのか? | お手伝いさんたちのブログ

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中部大学 武田邦彦先生のブログの中で、音声収録のみのものをテキスト化して掲載しています。
テキスト化及び掲載にあたっては先生から許可を頂いています。

瓦礫引き受けに関する考え方(1)・・・なぜ、瓦礫を引き受けてはいけないのか? (2/4)



瓦礫の引き受けが全国で拡がっています。これまで「他の自治体のゴミを引き受けるなんてとんでもない!」と言って来た首長さんはずいぶん、豹変するものと感心してしまいます。

それには「ウラ」があるのですが、まずは瓦礫の引き受けを止めようとしている多くの人のご参考にと思い、具体的な話から入ります。


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長い間、日本人を被曝から守ってきたこと・・・日本は原爆を落とされた国として被曝に対してしっかりした考え方でやってきましたが・・・、それは「法律を守る」ということです。人間に対しては1年1ミリシーベルトという厳格な規則があります。


まず、第一に、被曝に関して法律があり、瓦礫を引き受ける自治体は「法律を守る」ということを宣言しなければならないということです。自治体の多くは今まで「被曝の法律なんかあるの?」という態度でしたから、まずそれを確認することが大切です。


ここで、言い訳がでてきますので、それに対抗する必要があります。それは「日本にはもともと原発の事故を想定した法律などない」というものです。でも、これは間違っています。原発の事故に関する法律とその考え方は次の様になっています。


1) 原発の事故が起こっても起こらなくても、日本人の被曝と健康の関係は変わらない(これは、被曝に関するすべての法律が同じ基準値であることでも判ります。つまり日本国内の法律で「この法律では1キロ100ベクレル、この法律では1キロ1000ベクレル」などとなっていると混乱するという理由と、もともと被曝の発生源などが違っても日本人に与える影響は同じだからです。)


2) 従って、どの法律を使っても同じ結論になる(悪意で誤魔化さなければ)。


3) 原発を運転している限り、事故の可能性はあり、日本政府はそれほど無責任ではないので、事故の想定をしている。それによると希な事故(およそ1万年に1度)の場合は1年5ミリまで被曝限度を上げることができる。およそ10万年に一度程度の事故の時には、1年5ミリからあまり離れない被曝量を設定できる)の場合、被曝限度を現行法を超えて設定できるとしている(これは原子力安全委員会指針)。今回の事故は原子炉が運転し始めてから100年以内。津波の規模は1000年に1度以上だから、指針によって1年1ミリシーベルトを超えられない。


4) 食品基準、物品基準、廃棄物基準、土壌基準などは、1年1ミリシーベルトをスタートとして計算される。ベクレルは人間に関係の無い数値で、シーベルトを決めるとベクレルが決まる。従って、すべて1年1ミリシーベルトが最初の基準になっている。従って、食品でもゴミでも現行の基準を変えることはできない。


5) このほかに、原子炉については核種が多いので、特別な注意をされていて、「クリアランスレベル」という別の概念が適応される。これは「1年0.01ミリシーベルトのものは自由に取り扱っても(捨てても)良い」というもので、1年以内懲役、100万円以下の罰金を伴っている。


6) 今回の福島原発事故は、原子炉の中のものが飛び散ったので、クリアランスレベルを適応するべきである。


7) 瓦礫の処理には「今、東京にあるゴミより放射線量が低い」という理屈を持ち出すことがあるが、そんな法律はない。Aが泥棒をしたのだから、Bの泥棒が許されることはあり得ない。法律違反は法律違反である。もし東京のゴミが基準値以上なら、基準値以上のものを持ち込んでも良いというのではなく、東京のゴミを東電が処理しなければならない。


おおざっぱにいって、瓦礫に関して日本人を被曝から守るための法律は上記の様になっています。もし自治体の首長さんが良心的なら、クリアランスレベルを守るでしょう。それほど良心的でなければ、被曝の一般法を守るでしょう。


もし、住民の健康よりお金が欲しければ、法律があることを知らないふりをするか、いろいろな理屈を言うでしょう。なお、被曝に関する法律は「法で定められている」と言うほかに、「現在の医学では最良の値を決めている」ということでもあります。


時々、「法律で決まっていると言っても学問的にはどうなのか?」などと言う人がいますが、被曝限度のような数値は日本の学者のコンセンサスでできています。

法律に反することを言う学者は法律を決めるときに、相手にされなかったか、もしくは論争に負けた人です。急ぐので、まず、ここまでで第一回を終わります。

(平成24年2月4日)


--------ここから音声内容--------




ええとあの、瓦礫の引き受けについてですね、非常に自治体が引き受けたがってるわけですね、これ非常に不思議な現象で。ま、今までですね、別に放射線が含んでなくても、他の自治体のゴミを引き受けるって事は、大体の首長さんは嫌がるんですよね。そういうんで、こう争いになってるとこもあるぐらいなんですよ。えー、しかし放射線のゴミってことになると、皆、急にですね、「引き受けたい、引き受けたい!」っていう、もう自治体の・・・そこに住民の人が反対してもですね、引き受けたいって人いるんですよね。





何でこんな首長さんとか知事さんが現れるかって言うと、お金なんですよ。たっぷりお金を貰うもんですからね。えーそれで、「まぁお金を貰えればいいや」と。しかしそのお金の額っていうのは、ほとんどの人が知らないんですよね。民主主義だけど、言いません。ま、そういうことで「ウラ」があるんですが、まぁそれはもうよく判ってるわけですが。ここではもう少し具体的に反撃をするためにですね、きちっとした具体例から先にお話をしていきたいと思います。





ええと、日本はですね、広島・長崎に原爆を落とされましてね、被曝というものに対して、非常にきちっとやってきた国なんですよ。それは、「法律を守るんだ」と。ちゃんとした根拠に基づいた法律を作り、それを守るんだというですね、ちゃんとしたものがあります。それが、一つが「1年1ミリシーベルト」なわけですね。で、まぁあの、この瓦礫の引き受けについてはまず第一にですね、法律があるということを自治体の首長さんが認める、ということですね。そして、「法律を守る」ってことを宣言するってことですよ。





私が「練馬区は神になったのか?」とか、「柏市は神になったのか?」とか、いろいろなことを言いましたが。それはですね、法律も読まないような首長さんとか知事さんはダメなんですよ。やっぱり役人もですね、せめて、仕事はサボっててもいいんだけど、法律ぐらいちゃんと勉強してくれないといけないわけですね。ええと、それに対して強力な反論がありまして、「日本はもともと原発の事故を想定した法律はないんだ」というのがありますが、これは全く間違っております。それも含めて下に書きます、整理してですね。






ええと、まず第一の、第一原則がですね、原発の事故が起こっても起こらなくても、日本人の被曝と健康の関係は変わりません、これは当たり前ですけども、レントゲンにあたったから急にどうだとか、原発の事故ではどうだとか全然関係なくて、全ての法律は、全ての同じ基準値です。えー、これは当たり前のことでですね、「ある法律で1キロ100ベクレル以下として、ある法律で1キロ1000ベクレル以下」なんてのは混乱してですね、裁判もできませんからね。ですからあの、とにかく発生源がどうであれ、何ベクレルなら何ベクレル、まぁ核種にもよりますけど、そういう、きちんと決まっております。どこの法律見ても同じです、値が。当たり前ですけどね、それがまず第一です。





ですからよくね、あの私が「電離放射線障害防止規則」を使いますとね、“そんなの「電離放射線障害防止規則」だから、その値は原子炉には使えないんだ”って。いや、使えます。全く同じですね、当たり前のことですね、そんなのは。したがって、悪意で誤魔化す場合は別ですが、どの法律を使っても数値は同じであります。





それから、ええと日本政府はそんなに馬鹿ではなくてですね、この頃、ちょっと変だという話もあるんですが。原発を運転してる限りは、事故の可能性があって、その事故に対する想定もちゃんとしてるんですよ。それはですね、希な事故、ま、1万年に一度ぐらいの場合は1年5ミリまで被曝限度を上げることができる、と。もちろんこれ、外部被曝、内部被曝、合計した値であり、かつ全ての核種ですからね。今度の食品安全基準なんていうのは、暫定基準なんていうのは、セシウムだけ、内部被曝だけで1年5ミリですから、これは明らかな法律違反ですね。法律違反っていうか、まぁ政府の方針違反ですね。





で10万年に一回ぐらいになると、1年5ミリからあまり離れない被曝量を設定できる、と。まぁ10万年に一回ぐらいになりますとね、事故の規模が少し判りにくいので、ま、“あまり離れない”という、抽象的な表現を使ってますが。ま、常識的に言って、1年5ミリからあまり離れないって言うんですから、まぁ10ミリ以下ってことでしょうね。で、そういう場合は、現行法を超えても良いんだというふうに設定してあります。





で、今度の事故はですね。原子炉が運転し始めてから30年ぐらい、つまり100年以下の事故であり、津波の規模は、まぁ1000年に一度以上ありますから。指針によって決めることは、1年1ミリ以外には決められません。これはですね、ええと、国会がまぁ、別の基準を決めるってことはありえますが、知事さんとか首長さんが決めることは全くできません。そんなのはもう、職権乱用です。知事さんや首長さんは殿様ではありませんからね。





それから、食品基準、物品基準、廃棄物基準、土壌基準は全部、1年1ミリシーベルトをスタートとして計算されます。ええと、「ベクレル」って値も出てくるんですが、このベクレルは人間には関係ない数値でですね、「シーベルト」を決めないとベクレルは決まりません。だから、「1年1ミリシーベルト」を決まってるから、食品基準とかいろんなものが決まるわけですね。これもハッキリしとかないけません。





よく「シーベルトとベクレルか判んない」って言うんですけど。「シーベルト」はですね、これはあの「被爆限度」なんですよ。だから、これだけ覚えときゃいいんですよ。「ベクレル」っていうのは単にですね、「1年1ミリシーベルトなら、このほうれん草なら何ベクレルまで」っていうふうにですね、これはただ単に、例えば「水銀の基準をこうしたら、ここには水銀は何マイクログラムまで」というふうに決まるようなもんですからですね。だから「ほうれん草にどのぐらい入ってるといけない」ってのは、もともと“人間の身体にどのくらい影響があるか?”っていうのが判ってないといけませんから。





しかしですね、原子炉については、ちょっと別のものもあるんですね。それは私が言ってる「クリアランスレベル」。これはもう、罰則を伴うハッキリとした法律で、これは「1年0.01ミリシーベルト」。ですからもう、今の瓦礫は全部相当しますからね。「遠いから、大丈夫だ」なんて言ってますけど、全然違います。





ええと「1年に0.01ミリシーベルトは自由に使っても良い、捨てても良い」ってことなので、これは1年以内の懲役、100万円以下の罰金を伴っています。ですからまぁ、あの原則的にはですね、現在の知事さんとか首長さんの多くが、監獄入りって感じなんですよ、ほんと言えば。で、あの、しかし問題は、ここでも屁理屈があります。裁判になったら、抵抗するでしょうね、監獄に入りたくないから。自ら監獄入ってほしいですけどね、そういう住民の健康をあずかる人は。





ええとですね、「クリアランスレベル」ってのは、原子炉の材料を、つまり、原子炉の例えば今壊れたような建物とかですね、そいから原子炉の鉄骨だとか、そういったものを捨てるときの値なんですよ。だから、違うと言う人もいるでしょうね。しかしこれ、“違う”っていうのは、良心的ではありませんね。って言うのは、現在のものは福島第一原発の外であってもですね、原子炉のものが飛び散ってるわけですから。私はね、「クリアランスレベル」適応すべきだと思うんですよ。





だって、クリアランスレベルっていうのは少し厳しいのはですね、原子炉の中ったら、もうストロンチウムやプルトニウムやいろんなものありますからね。ですから若干、クリアランスレベルっていうのは厳しいわけですよ。ですから私は、良心的な首長さん、知事さんは「クリアランスレベル」を使うと思います。





もっとくだらないやつがあってですね。瓦礫の処理をするときね、「今、東京にあるゴミより放射線量が低い」って言うんですよ。いや、これはね、東京にあるゴミが違法なんですよ。これはね、Aが泥棒したから、Bの泥棒いいじゃないか…こんな理屈ですからね。よくあの、若者がそんなこと言いますよ。「皆がスピード違反してっから、俺もいいだろ」って、それダメなんですよね。えー、もうあの東京のゴミが違法ならですね、東電が処理しなきゃいけないんで、東電から金貰ってるからとか、なんかそういう理由じゃダメなんですよね。




つまり、おおざっぱに言いますと、ま、今日は全部詳しく書きませんが、瓦礫に関する、日本人を被曝から守るための法律はきちっとあるということですね。「瓦礫について、ない」つったらダメですよ。放射線の法律っていうのは、土砂とか瓦礫とかテレビとか、そういうのに一つ一つあるわけじゃないんです。「もともと日本の国にあるものは、もともと瓦礫であれテレビであれ砂利であれ、これ以下じゃなくちゃいけない」とこういうふうに決まってるんですからね。決まり方が違うんですね。





だからもしも、もし首長さんとか知事さんが良心的ならですね、「クリアランスレベル」を守るでしょうね。だって、そのための法律なんですから。それから、まぁそれほど良心的じゃないと、少しズルがあると、お金が欲しいというときは、被曝の一般法を守るでしょうね。それから、もっとお金が欲しいと、「この世界は、お金だけが大切である」と言う金亡者の知事さん、首長さんの場合はですね。えー、法律があることを知らん振りをするとか、「その法律はお医者さんの法律であって、なんで(なので)、違うじゃないか」とかですね、それからこういうこと言うんですね、「法律で定められたって、そんなの無意味だ。医学で決めなきゃいけない」なんていうことを言う人もいるんですね。ただ、もちろん現代の被曝限度っていうのは、お医者さんが決めたもんですからね。「医学的に決まった」わけです。





で、法律に反することを言う学者の方って、いっぱいいるんですよ、本なんかも売れててね。ほんで僕も心配してんですけど。えー、そういう先生はですね、法律の基準を決めるときに相手にされなかったか、もしくは論争に負けた人なんですよ。そういうことで、まぁ子どもの健康を守るために、一つハッキリとした理論武装をしてですね、瓦礫を持ち込ませないように、汚染を日本中に拡大しないように。




これ、本当にね、真剣な話なんですよ。こんなことね、お金だからやってたらダメになっちゃいます。福島の人とかね東北の人はね、瓦礫を片付けることをね、求めておりません。首長さん、東北の知事は別ですよ、知事さんは変なこといっぱ言いますけども。えー、私は何回か行って見てきましたけど、瓦礫はきちっと片付けられて、ほとんどが国有地に置いてあります。





第二、本当は東北とか福島にですね、瓦礫の処理施設が要るんですよ。しかし今ね、各自治体が金欲しがるもんですから、そこに配ってですね、お金をですね福島とか東北に落とさないんですよ。やっぱり、そこに瓦礫の処理施設を造らないとですね、ダメなんですよ。やっぱりね、自分の庭の汚れたものも、汚染されたものも片付けられない現状なんですからね。そういうことをちゃんと、ハッキリと我々はしなきゃいけないと思います。


(文字起こし by danielle)