読者のご質問に答えて14. 東電訴訟:「無主物」がもたらしたもの(12/19) ~後半~ | お手伝いさんたちのブログ

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中部大学 武田邦彦先生のブログの中で、音声収録のみのものをテキスト化して掲載しています。
テキスト化及び掲載にあたっては先生から許可を頂いています。

(文字起こしをお手伝いして下さった方からの投稿です。danielle(ダニエル)様、ありがとうございました)


読者のご質問に答えて14. 東電訴訟:「無主物」がもたらしたもの(12/19) ~後半~


--------ここから音声内容--------


もう一つは民法に、公序良俗に反さないこと、というのがありますね。これもまぁ、法律的には色々あるんですが。

民法第90条 「公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする」
ちょっと難しい文章なんですが、法律行為っていうのがどこの範囲であるかとかですね、何でこういう90条というのが在るのか、と。



まぁこれは法律で民法を学びますとですね、法律行為というのはこういうもんである。それが色々公の秩序っていうのを重きを置いたり、善良な風俗というのに重きを置いたり、法律行為の有効性に重きを置いたりすると、やっぱり社会のバランスが崩れる、と。


やっぱり我々は、正しい法的な行動、公の秩序を守り、善良な風俗に反しないようにする、ってことは極めて大切であるということを原則として示してますね。



したがって民法全体のことについては、これが有効なわけです。ところがまぁ屁理屈を言うとこの法律行為っていうのは、放射線をばら撒くのは法律行為か、とか、これはやっぱり裁判でやってくれなきゃいけないんですが、我々はそんなこと考えなくていいんですね、一般国民は。



つまり法律的には公の秩序や善良の風俗に反する事はいけませんよ、と読めば良いんですね。これは憲法でも表示されてませんが、まぁそうなんですよ。


だってですね、例えば他人の物を汚したと、なのに汚した人がきれいにしてくれないとかですね、他人の家に汚物を撒き散らしたと、その人が無罪である、と。こういう事になりますとね、これは明らかに善良の風俗に反しますよ。



この話を聞いて主婦の人から随分ね、メールが来ました。「私達だって、赤ちゃんでも…赤ちゃんっていうのは能力無いじゃないですか、法的な。…人の洋服を汚したり、人の家を汚したりしたら、もう平謝りに謝って片付けます」ってんですよ。



正にそれが善良の風俗ですよ。つまり赤ちゃんには法的責任が無いとかね、そういう事を超えてるわけですよ。つまり法律では決められない様な事であっても、責任能力の無い人が起こしてもですね、やっぱり善良の風俗という点からですね、それはやっぱり親が片付けて下さいということになる。

これこそが日本社会の本当に守らなきゃならない事なんですよね。この公序良俗、これをですね、東京電力は外しているのはもう間違いないです。ていうかね、もう訴訟に受けて立つ自身が間違ってますよ。片付けに行かない事自身が間違ってますよ、元々。



東電の人は事故後、福島の人に詰め寄られて「あなた達は安全だ、安全だ。と言ってた。それは嘘じゃないか!」って言われてですね、土下座してましたよ。あれ土下座って何だったんですかね?



土下座って悪い事をしましたって印ですよ。何を悪い事をしたかって言うと、勿論不安を感じさせたのもあるけど、具体的には放射性物質が散ったって事ですよ。その放射性物質をですね、土下座しても片付けに来ないんですよ。彼らの土下座はね、ただね、頭下げてる土下座なんですよ。心ん中じゃ、「何彼ら言ってんだ。俺達はね、国に金配ってるから」ってこういう事なんですよ。いやまあ酷いもんですね。

そいでこの事をですね、色んな識者が指摘しないっていうのもおかしいですね。やっぱこれ指摘するべきですよ。やっぱりこういう事はおかしい、と。



これはですね、余りにも常識的におかしいって事ですよ。出来る出来ないの問題じゃないですよ。そんなこと言ったら東電が潰れる、いや、あるかもしれません。あるけども、東電が潰れるんだったら、国が金を出すのはしょうがないかもしれませんが、いずれにしてもゴルフ場に降った放射性物質をのけろと言う命令はしなきゃいけませんよ。


それが今度は出来ないとなったらですね、そりゃあまぁ出来ない事ありますからね。犯人が出来ないって事あります。それは今度は代わりに誰かがやってやんなきゃいけないんですが。



それはそういう事ありますね。例えば汚した後、犯人がすぐ死んじゃった、と。じゃまぁしょうがないから誰かが代わりにやんないとその家は誰も住めなくなる、と。そういう事ありますからね。そういった事は社会全体で、公序良俗を守るという、悪くない人、被害にあった人は救うという、そういう事になってないといけないですね。


まぁこの地裁の判決はですね、本当に日本人として恥ずかしい判決ですよ。法律を捏ね回して、それで「無主物」あるということにして、汚しても片付けなくていいよって言うんですよ。こんな判決が世の中にまかり通ったら、どうなんですかね?



いや、裁判官は色々言い訳があると思いますよ。「いや、これは不動産に限ってなんだ。」とか、「放射性物質に限ってなんだ」とか、何か屁理屈あるんでしょうね、勿論。判決したんですから。



だけどですね、精神的にはですね、皆には「あっ、そうか。人の物を汚しても、片付けなくてもいいのか!」っていう判決ですから。これ裁判所が判決したんですよ。



という事は、日本の社会ではこれが正しいとしていいんですよ。これを聞いた人が、「あ、そうか。人の家に漏らしても全然平気なんだな」とかなったらどうするんですか? 一体、社会は。


お醤油をこぼす、ね、色々な事が起こるじゃないですか。それから汚いものがボーンと爆発してどっかに行く、「そういう事は別に全然関係ないよ」と言うんだったらですね、私はもうそんな社会住みたくないですよ、絶対に住みたくない。


だからこの判決はですね、あらゆる面から見て多くの人達が糾弾していかなきゃいけないですね。とんでもない事だ、というふうに言わないとですね。これをですね、まぁこんなもんでいいじゃないかと言ってたらですね、
本当に子供の被曝なんか守れませんね。



そんな意味で、私も少しカッと来ましたけど、こういう事があってはいけないという事を、みんなで力を合わせてですね、やっぱり言わなきゃいけないとそう思いますね。放射線の被曝を防ぐだけじゃないですよこれは。日本国というものがこれからもちゃんとやっていく上で大切だと、私そう思います。

読者のご質問に答えて14. 東電訴訟:「無主物」がもたらしたもの(12/19) ~後半~