読者のご質問に答えて12. お医者さんにかかるときの注意(12/15) | お手伝いさんたちのブログ

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中部大学 武田邦彦先生のブログの中で、音声収録のみのものをテキスト化して掲載しています。
テキスト化及び掲載にあたっては先生から許可を頂いています。

(文字起こしをお手伝いして下さった方からの投稿です。danielle(ダニエル)様、ありがとうございました)

読者のご質問に答えて12. お医者さんにかかるときの注意(12/15)


--------ここからブログ記事--------

道路の最高速度が60キロになっている時に、「自己の判断だけ」で、「運転中の一般人」に、「時速120キロでも大丈夫」だ、と言う「交通の専門家」の行為は「公序良俗」に反します。それと同じように法律で「内部、外部の合計で1年1ミリ」となっているのに、「それ以上の被曝でも安全だ」というのは医師の診療でも言論の自由の範囲にも入りません。お医者さんが「大丈夫」と言われるとき、それが「医療放射線」なのか、「一般被曝」なのかを聞いてみましょう。一般被曝について医師は発言はできないはずです。


--------ここから音声内容--------


えー、今回の被曝の件ではですね。
お医者さんに行って、とても悲しい思いをして帰ってきたお母さんが多いわけですね。
本当に鼻血を出さない子なのに、鼻血を出す。もしくはなんかダラダラダラダラとなんか元気が無い、と。
本当にこれは被曝じゃないかと思って心配しますね。
で、お医者さんに連れて行きますと、『大丈夫ですよ。被曝には関係ありませんよ。』と、こう言われるわけですね。
だけどこれはね、ダメなんです。
この事については一回ちょっとお話しましたけども、もう少しはっきりとお話しますとですね。



お医者さんというのは公的な職業なんですよ。
国家試験を受けて、国民に対して診療が出来る人という事で認められているんです、社会的に。
ですから、それなりにまぁ自重しなきゃいけないわけですね。これは学校の先生もそうなんですけど。
弁護士さんとか、お医者さんとか、学校の先生っていうのは、一定の資格があったり、
ま、社会からある意味での尊重された存在なので、それに応じたその発言だとか行動が必要なんですね。



とにかく一般的な人の被曝についてはですね、1年1ミリシーベルトというふうに法律で決まってるわけですね。
従って、それは外しちゃいけないわけです。
時速120キロでも大丈夫だと…高速道路ですね。そんな事言うのは法律に違反しますから。
例えば交通の専門家がですね、高速道路80キロの制限速度のところを120キロで走っていいよ、と言ったらですね、
これはやっぱり公序良俗に反するわけですね。言っちゃいけないことなんですよ。これは放送もそうですね。



医者がですね、言えるのは、医療放射線については権限を持ってるわけですね。
一般の被曝についてはですね、お医者さんは被曝の権限を持っておりません。
だから、1年1ミリシーベルトを超えたらですね、お医者さんは自分の意見はともかくとして、
「あーそうですか」と。 「そいじゃあちょっと心配ですね」と。 「一応、ま、注意をして観察しましょう」とか、
こういう事言わないとですね。大丈夫だという発言は出来ないんですね。




もう一つですね、お医者さんの発言で私なんか時々対談しますとね、本当に変に思うのはですね、
確率的に起こる事っていうのはですね、例えば交通事故で1万人死ぬと。
で、皆が本当に交通戦争といって大変なことになりますね。これは1万人に1人なんですよ。人間は1億人いますから。
だから、1万人をお医者さんが診察して、9,999人は大丈夫で、1人だけ障害が出るというようなケースですからね。
ですからお医者さんの話を聞くと、「96人診察したんですが、1人も今のところ異常がありません。」
なんていう話が出てくるんですよね。あれ、この人医者かな?と実は思った事がありますね。
本当に病気の本質というのを知らなきゃいけないわけですね。


これはあの…被曝ばかりじゃなくてですね、一般の結核だとかそういったものもですね、
年取った人は別ですけども、若い人でですね、結核なんつったってやっぱり相当数が少ないわけですよ。
ですから、こういう生活をしたら結核になるって言ってもですね、なる人は少ないんですね。これが病気というものです。



それからもう一つはですね、お医者さんはですね、カルテも大体5年ぐらいが保存してあって、
患者さんを診るって言ってもですね、やっぱり数が多いですから、
そんなに長い間1人の患者さんをじっくりと診ておられるお医者さんは余りいないんですよ。
だから10年経って発ガンするとかですね、それから徐々に知能が低下するといった問題については
あんまりそんな責任持った答えは出来ないわけです。それは1人のお医者さんの経験ではダメで、
多くの学会だとか、そういったとこでの議論を経なきゃいけませんね。




その議論を経たやつが1年1ミリなんですよね。これにはもちろん世界中のお医者さんが参画しておりますし、
それには日本のお医者さんばかりではなくて、ドイツの医者とかアメリカの医者も参加してるわけですね。
ですから、やっぱりまぁそういった国際的な合意に基づく、お医者さん同士の合意に基づく、
1年1ミリというのを尊重した発言をお医者さんにもしてもらいたいし、
まぁ患者さんの立場からお医者さんに言うの難しいんですけども、もし言うチャンスがあればですね、
「お医者さん同士がお決めになったのは、1年1ミリじゃないんでしょうか?」と。



「うちの子供は被曝もしてるし、心配なんですけども、少し丁寧に診て頂けませんか?」と言った時に、
丁寧に診て頂けるお医者さんと、「そんなの診る事出来ないよ。」と言うお医者さんとおられるでしょうけどね。
まあ、中には患者さんと一緒に心配して頂ける人もおられるはずですから、
まぁそういう希望を持ってやられたらいいんじゃないかと思います。



お医者さんに呼びかけるとしたらですね、やっぱり世界のお医者さん同士が話し合って決めて、
医療法なんかも含めましてね、1年1ミリシーベルトという制約をして、我々はやってたわけですね。
それからお医者さん自身もですね、今まで出来るだけ被曝しないようにというご指導をしてたわけですから、
余りそれをですね、東京電力がやったから東京電力の為に少しは応援してあげようか、とかですね、
政府の言うことを聞いとこうかって言うんじゃなくて、やっぱりお医者さんの倫理というものをですね、
この際、思い出してもらいたいと。



私のところにお医者さんが送ってくれた、放射線医療の国家試験問題だと思うんですけどもね、
試験問題を見ましたら、模範解答は全部1年1ミリシーベルトになっておりました。まあ、当たり前ですけどね。
そこんところもお医者さんもよくお考え頂ければと、いうふうに思います。