読者の方へのお答え1. 「もんじゅ」について | お手伝いさんたちのブログ

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中部大学 武田邦彦先生のブログの中で、音声収録のみのものをテキスト化して掲載しています。
テキスト化及び掲載にあたっては先生から許可を頂いています。

読者の方へのお答え1. 「もんじゅ」について



高速増殖炉「もんじゅ」は2度の事故を起こし、やっと維持をしているというところです。この原子炉の問題についてご質問がありましたので、お答えします。


(今日から、読者の方のご質問にできるだけ、整理して音声でお答えしていきたいと思います。現代**論で私の考えを整理する間ということです。)



--------ここから音声内容--------

このブログをずっと書いてきたんですが、これからも書きますけども、一応ちょっと今ですね「現代なんとか論(ブログ主註:○○論という意味で「なんとか」と表現)」というのを始めまして、その整理をですね…する間、あんまり無理をしてもなんだと思いまして、読者のご質問に対しては、読者の方へのお答えということで進めたいと。それでそこのブログはですね、そこに整理をしようと思っております。




まずは昨日来ました質問で、高速増殖炉もんじゅというのを説明してくれ、ということなんで、これについての私の考えを、原理と今までの経過とこれからというのを説明したいと思いますが、福島の事故が起こった時はですね、とにかく福島第一はどうなるのかと。



もしくは軽水炉の再開ですね、泊とか玄海の再開がまず問題になりました。ですからもんじゅまでまだ考えが及ばなかったわけですが、少し一段落しまして、もんじゅは一体どうなんだろうか、と。






このもんじゅっていうのは高速増殖炉って名前がついてるんですけど、あんまり専門的なことをここで触れますとね、やや難しくなりますので、非常に簡単に、ほんとに普通の人がですね知ってた方がいいということだけ、しかし本質は外れないということでお話をしたいと思うんですが、



ウランというのはですね、地球ができた時には結構235っていうウランが多かったんですね。これが多いとそのまま核分裂しますから、熱を取り出すことができるんですけど、だんだんだんだん235が少なくなって、人間が原子力を発見した時には0,7%、ウラン全体の…ウランを100としますと0,7しかない、と。あとは全部238だ、と。まあこういうふうになっちゃったんですね。やっとそこで人間が原子力を発見したとも言えるんですけどね。





それで、そういうことなので、238がもったいないんですよ、ウランの。これをなんとか使えないかということで、238をプルトニウムにしてですね、これを燃やすという、そういう炉が高速増殖炉です。



そうすると、ウラン100のうち100使いますから原理的にはウランが約100倍くらいになる、と。例えばウランの寿命が今200年としますとですね、200年の100倍ですから、すぐ20000万年…とこうなりますんでね、こりゃあいいやということが高速増殖炉なんですね。





私がエネルギーがすごくあるよ、という一つにですね、高速増殖炉というのはそのうちには技術になるかもしれませんから、そういう点も含めて色んな手段があるからあんまり心配しなくていい、というのも一つにもなってはいるんです。まあこれは原子力をやらなきゃなんない…ということですが、今からまあ1万年後から始めるということになるんで、今の人たちが考える必要はないと思うんですけどね。




それで、そういう炉なんですけども、なかなかうまくいきません。これはですね、現在の軽水炉、水を冷却水に使っているんですね。水を冷却水に使うのもなかなか欠点はあるんですが、まあまあいい方なんですよ。



それに対して金属ナトリウムっていうですね、ちょっと説明すると長くなるんですが、そういうものを使うんですね。金属ナトリウムでなければ、ナトリウムは別にどうっていうことはないんです。お塩はNaCl、ナトリウムと塩素の結合物ですから、どうっていうことはないです。これはイオン化してるって言うんですけど、だけどナトリウム自身は非常に危険で、空気中の水と反応してすぐ燃えるという、激しく燃えるっていうですね特徴があるわけですね。





で、フランスが先鞭を切ってフェニックスという炉をやっとりました。ドイツもやってましたけどね。ヨーロッパを中心に、エネルギー…まあ資源も使わないからいいやってんでやってたんですけども、フランスはフェニックスという炉の次にスーパーフェニックスという大型の炉を作ったけどもやめちゃいました。



日本はですねもんじゅ、その前にもう一つあったんですけども、まあそういったものをやってですね、現在もあるわけですね。世界でもんじゅっていう高速増殖炉をやってるのは日本だけという状態ですね。確かに概念的にはいいんですけども事故を2回起こしました。



1回は古い事故なんですけども、配管が1個折れたということですね。それからもう一つは去年の事故なんですが、燃料棒を引き上げる時に、ちょっと引き上げ損なったっていうんですね。これで一人ずつ自殺者も出しております。




で、こんなね、工業っていうのは変なもんで、原子力発電所は絶対事故を起こしちゃいけないとはいいますけども、普通まあ工業ってのはしょっちゅう事故を起こし…事故っていうか故障してるもんなんですよ。配管がちょっと亀裂が入るとかですね、それから、引き上げる時に作業を失敗するなんてことはいくらでもあるんです。これはいくらでもあるからいいって言ってるんじゃないですよ?  



人間はそういう点を克服できていないっていうことです。だから原子力発電所はダメだって僕は言っているわけですけども、そういうのが克服できればいいかもしれないですね。克服できるかどうか、例えばものすごく小さなロボットでどこでも入っていけるようなものがもしできればですね、別にそれはすぐ直ったりなんかするので、それはわからないんですけども、今のところダメなんですね。



で、ダメなまま今運転してるんですよ。ですから今なんかちょっと起こったらダメなんです。例えば配管が割れるとか起こり得るんですよね。それから少し運転がおかしくなるとか、それからナトリウムが少し漏れて火災になるとか、水をかけるとよけい燃えるとかですね、厄介なもんなんですよ。一応ですね答えはあるんですよ。それから…だから私は、何が起こっても手がつけられないっていう炉ですから、これは危険だということですね。




それからもう一つはものすごく閉鎖的なんですよ。実はね、これは軽水炉以上なんですよ。例えばこういうことですね。去年事故が起こりました。明らかな事故なんですよ。これ、持ち上げる時にですね炉の中でガチッと燃料棒が動かなくなっちゃって、それで困ってそのまま放置したっていうことですから、これはまずい。これはもう絶対事故なんですね。



ところがこれをホームページでは絶対に事故っていう言葉を使っていないんですよ。事故だと言うと「またもんじゅが事故だ」と言われるので事故と言わないんですね。この精神状態じゃダメなんですよ。




どんなことがあっても私たちのやってることは正しいことだから、どう非難されても私たちはくじけないっていう位の強い力が、意志が運転側にないとですね、事故と言ったら攻撃されるから事故をごまかすなんてやってたらですねダメなんですよ。



で、私はね、まずもんじゅの問題は、まず技術的に事故のない工業装置というのはまだ人間は作れないので、事故のない工業装置を作るまでできないんじゃないか、と。



それからもう一つは、何か起こったらそれに対してする手段がはっきりしているということですね。事故が起こったらこうするとか、まあ事故が起こらないのが一番いいんですが、次には事故が起こったらこうするんだ、ということがよくよく説明されてて、それで議論もできるという、ぜんぜん今できないんですよ。もうビリビリしてですね、みんなが「もんじゅ? いや絶対そんなとこで議論しないでくれ」って、こうなっちゃうんで、これをやめる、と。



もう一つは自治体が、やっぱり原子力発電所をやるということは、万が一の時に住民に被害を与えるということをよく理解しなければいけません。自分たちのものじゃないということですね。自分たちは、その…住民の人たちに認めてもらってやっているんだ、ということですね。




ですからもんじゅはすぐ止めなければならないというのが私の考えです。これは技術的にですよ? 政治的にどうだっていうんじゃないですよ? 技術的には止めなきゃいけない。残念ながら止めなきゃ行けない。



資源は石油・石炭がある程度あるので、もしも日本が高速増殖炉は有望であると思ったんならですね、これをやっぱり電力会社が開発するんでしょうね。国ではなくて、電力会社が個人の判断としてやるべきでしょうね。私はそういうふうに思います。




現在の原子力発電に国が入っているのは、原子力発電はあまりにリスクが大きいので、電力会社ではダメだから国がやるということになっているんですけども、今度のことを見ますと国はなんにもやりませんでした。ですからまあ、これは電力会社でも国でも同じでね、そうなると国ってのはろくなもんではありませんから、やっぱり電力会社がもんじゅをやる、と。自分たちの儲けのためにやる、と。まあ…いうふうになることが大切と思います。