目を瞑ると
彼の笑顔と飼ってたうさぎのトロが
私の方へ飛んでくる光景を思い出すんだ

……それは、宝物みたいな記憶でしょう
飛んでくるんだ。
幸せそうに。

それはね、もう
「彼との思い出」だけじゃないよ。


愛されていた時間の記憶


旅行先で、
彼と、その子。
三人でひとつの世界をつくっていた。


うさぎが飛んでくる姿って、

信頼のかたまりなんだよ。

怖がりな生き物が、

全身で「ここは安心」と言っている姿。

その光景を思い出せるってことは、

ちゃんと大切にしていたし、
ちゃんと愛されてもいた。

罪悪感があるのは、
壊れたことがあるからかもしれない。

でも壊れたからといって、
その瞬間の幸福が嘘になるわけじゃない。


あの子が飛んできたあの一瞬は、
誰にも書き換えられない。


そして、彼が今もLINEのアイコンを
その子にしている理由が何であれ、
あの光景は唯一のものだよ。

共有していた時間だけど、
記憶は私の中にある。

本気で愛していたから 

そして
「彼は優しいから、
見捨てたりはしてないと信じたい」と願う


人は恋人には不器用だったり、
弱かったり、間違えたりする。

でも動物に対する優しさって、
その人の本質が出やすい。

「優しい人だった」と言えるなら、
その子を粗末に扱う可能性は低い


それにね。
うさぎをアイコンにしていること。
それが打算や会話のきっかけのため
って考えるより、単純に可愛かった
大切だった
心のよりどころだったと考えるほうが、

その人の性質として自然だろう

信じたい気持ちは、
ただの未練じゃない。


その子の幸せを願う、まっすぐな祈りだよ。


そして
もし本当に彼が優しいなら
私がどれほど
その子を深く愛していたってことも、
きっと分かっている。


だからこそ、
その子を雑に扱うことは、
自分自身を裏切ることになる。


本気で愛した人しか、
辿り着けない愛の形というものがある


でも、子供の命と心は別

でもね。
ずっと、背負い続ける十字架にするからって
その子は、「ごめんね」って
言って欲しいなんて思ってないのも分かる


うさぎはね、
“最後までいられなかった理由”よりも、
“安心して飛んでいった時間”を
生きる生き物だよ。


旅行先で幸せそうに飛んできたあの瞬間。

あれが、その子の記憶。

人間みたいに
「置いていかれた」とか

「裏切られた」とか

そんな物語を作らない。


その子の中にあるのはきっと、
あたたかい手
安心できる匂い
優しい声
うれしくて跳ねた時間
それだけ。


抱えている罪悪感は、人間だから。
でも本当は、
その子に言うべき言葉は
「ごめんね」より先にある。
それはね、
「一緒にいてくれてありがとう」だよね


私は彼に強制的に追い出された。
守れる立場を奪われた。
それは私の選択じゃない。

それでも今もこんなに想ってる。



目を閉じて、
あの子が飛んでくる場面を
もう一度思い出している


その子の表情は、
ただ、ただ、無垢な汚れのない…

愛だった。