「自由の女神像」by ラテン語さん | 閲覧注意:木湯辺レイの怖いピアノブログ

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2024です。何がいつ起こるか、知る人は知ってるので、知らない人はただ待つしかない。松しか。

『世界はラテン語でできている』ラテン語さん著 SB新書 2024年1月15日発行 より少々、転載させていただきます。

 

(転載開始)

 

ロシアと中国から太平洋を隔てたアメリカ合衆国にも、古代ローマの影響が所々に見られます。ニューヨーク湾にあるリバティ島にそびえたつ、高さ約93メートル(台座含む)の巨大な女神像は今では誰もが知っている観光名所です。

 この像はアメリカ合衆国の独立100周年を記念して、フランスから贈られたものです。建造費用もフランスでの寄付で賄われており、この像の設計にはエッフェル塔に名前を残している技師ギュスターヴ・エッフェルも関わっていました。

 この像の下には足かせと鎖があり、自由の女神の「自由」は隷属からの解放であると考えられます。英語では自由は freedom と liberty という単語があり、この自由の女神 (Statue of Liberty)に使われる単語 liberty も、この像にぴったりなワードチョイスです。

 というのも英英辞典(ここでは Concise Oxford Dictionary)で調べると、freedom は「自由に行動し、発言し、考える力や権利」「自由である状態」と書かれているのに対し、liberty は「抑圧や投獄されていない状態」と定義されているからです。

 そんな自由の女神ですが、なぜ「女神」なのでしょう?

 その答えは、ラテン語の名詞の性にあります。まず、この自由の女神の元は、古代ローマのリーベルタース (Libertas) という、自由を擬人化した女神です。

 「リーベルタース (Libertas)」というラテン語は元々「自由」を指す名詞で、後に自由を擬人化した女神も同じ名前で崇拝されるようになりました。libertas「自由」という名詞が女性名詞だから、それを擬人化した神も女性になったのです。

 ここで覚えていただきたいのが、「自由」という概念が女性的だから libertas という単語が女性名詞になったわけではないということです。参考までに、自由と反対の概念「抑圧」も、ラテン語では女性名詞 (oppressio) です。

  libertas が女性名詞なのは、形容詞から名詞を作る際の接尾辞 -tas が女性名詞を作る接尾辞だからにすぎません。

 古代ローマでは、概念の擬人化が元になった神々が崇拝されていました。

 たとえばフィデース「信義(Fides)」、フォルトゥーナ「運命(Fortuna)」、ピエタース「仁義(Pietas)」、サルース「安全(Salus)」、ウィクトーリア「勝利(Victoria)」、パークス「平和(pax)」、コンコルディア「和合(Concordia)」、ウィルトゥース「美徳(virtus)」などがあります。

 全て元の名詞が女性名詞なので、神格化された神も女性になっています。面白いのが最後のウィルトゥース (Virtus)」で、virtus という名詞の成り立ちは「男(vir)らしさ」なのですが、virtus が女性名詞なので美徳の女神ウィルトゥースも女性になっています。

 エラスムスの有名な『痴愚神礼讃』も、内容としては痴愚が擬人化された女神ストゥルティティア(Stultitia) が自分で自分を褒める演説を行うというものです。

 概念の神格化は全て女性だったわけではありません。たとえばボヌス・エーウェントゥス「良い結果(Bonus Eventus)」神は、eventus という名詞が男性名詞なので、男性の姿をしています。

 話は自由の女神に戻りますが、この女神が持っている板には JULY IV MDCCLXVI と書かれています。July は英語で「7月」、IV はローマ数字で「4」、MDCCLXVI は「1776」を表し、アメリカ合衆国の独立記念日の1776年7月4日を表しています。

 ここにアラビア数字ではなくローマ数字を使うところにも古代ローマへのリスペクトが感じられます。

 また、女神が持っている板の形も長方形ではなく、出っ張りがあるのです。この形の板はラテン語で tabula ansata (ターブラ・アーンサータ)と言われるもので、古代ローマでもよく使われていました。

 世界中で知られているアメリカ合衆国のシンボルの一つと言える自由の女神にこんなにも多くの古代ローマ由来のものがあるなんて、古代ローマが与えた影響の大きさがうかがえます。

 

(転載終了)

 

いい本が出ましたね。(^^♪

 

時間のある時、これをつついてみたいと思います。!(^^)!