前回シミュレーションした430MHz用4エレ八木を試作しました。
なおこの後、この時作ったアンテナをUバランを使ったタイプに作り直しました。
2022年8月時点ではUバラン使用タイプを使っています。Uバランによって平衡・不平衡の変換をしてあるほうがアンテナとしてはいくらか完成度が高いかなと思っています。
その製作記事へのリンクは、この記事のいちばん最後に貼ってあります。

試作品
ラジエータに角度が付いているのは、現物をいじって少しでもSWRを下げようとした結果です。
この状態でのSWRは次のVNAの写真のように1.14です。
ラジエータがまっすぐのままで測定すると1.3くらいでした。それでも実用的には無問題です。
なお、VNAの校正は同軸ケーブルの先端(アンテナ給電部との接続点)で行ってあります。

VNAの測定画面
上の写真の形状での測定結果です。
433MHzで49.7Ω 2.51nH SWR1.14です。SWRのグラフはフラットで周波数の低い方でさらに下がっていますが、このままで使えます。
<調整方法>
リフレクタとディレクタの長さ・取付位置(間隔)は前の記事の寸法通りです。
ラジエータの長さは給電部の構造によって調整が必要になるので、少し長めに作っておいて、左右それぞれ1mmくらいずつ切り詰めては測定を繰り返し、長さを決めました。ラジエータはΦ2㎜の銅線に圧着端子を付けただけのものですから、作るのは簡単です。
<使った素材など>

ダイソーのディスプレイスタンド
給電部をアクリルで作りたかったのですが、百均にあったスチロール樹脂の成型品で代用しました。スチロール樹脂は加工しやすいですが割れやすい欠点があります。写真の品物は直角に曲げてある部分があって板が厚く、使いやすいです。

M3長ナット(高ナット)
移動用のアンテナなので簡単に組み立てられるよう、リフレクタとディレクタはブームに付けた長ナットに差し込むだけにしました。これは垂直偏波だからできることで、水平で使う場合はエレメントがずれないように輪ゴムで固定するなどの工夫が必要です。
M3のナットの内径はおよそΦ2.6mmですからΦ2㎜の銅線を入れると銅線が多少がたつきますが、問題なく使えそうです。
長ナットはブームに強力瞬間接着剤で接着しただけです。試作としてはこれで充分です。

ブーム 加工した給電部(スチロール樹脂製)
ブームは木製です。

使ったネジ(M4) 加工した銅線
長ナットに差し込んで使う銅線にはハンダを付けてストッパーにしました。ハンダの部分が長ナットに引っ掛かって位置が決まります。実際には長めの銅線にハンダを付けてから長ナットに差し込んで長さを合わせました。

給電部
移動用ということで、ビス3本を外せばバラバラになります。
< 使ってみた結果 >
まだ1回、それも短時間テストしただけです。
FT-60につないでテストしました。
受信した感じはRH770と比較してSメーターで1目盛くらい良くなった感じでした。指向性は緩いので使いやすそうです。
送信では、相手が2.5W自作6エレ、こちらが5W自作4エレでどちらのレポートも55でした。いちおう使えます。
使用したケーブルはRG58A/uで2mの既製品でした。ケーブルによる減衰は0.7dBくらいのはずです。
※ ケーブルのリグ側とアンテナ側の両方で測った433MHzでのインピーダンスが似た値になっていました。端子から端子までの長さの実寸は2.06m。半波長の倍数ですから、4.5λとして短縮率を計算すると0.6607。RG58A/uの短縮率の規格は0.67ですから、それほど間違いでもなさそうです。
なお、リグのSメーターひと目盛はどのくらいの違いなのか気になって調べてみましたが、目盛のふり方についてあまり明確な決まりはないようです。今時のリグではひと目盛でおよそ3dBらしいです。

この図はJJ1GRKさんのところにあった図を加工したものです
Sメーターの1から9まではひと目盛3㏈で、S9より上はプラスのデシベル数というのが、よく見かけるリグのSメーターの表示の仕方のようです。
上の参考例の信号強度とは別の話になりますが、
私の使っているFT-60の受信感度は、430MHz(FM)では0.2μVです。
メーターのS9は受信感度の20dBアップが業界の標準だとどこかに書いてありました。
これで計算すると、FT-60のメーターをS9で振らせるためには、-100dBmくらいの電力が必要なようです。10のマイナス10乗ミリワットって、私には残念ながらイメージできませんけどね。
《 追記 》 このアンテナを山岳運用などで数回使いました。送信・受信ともにRH770に比べSメーターで1目盛くらいよさそうな感じでした。自宅のGPアンテナX200(10mH)との比較では、ほぼ同等というレポートもありました。それぞれの利得は、RH770=5.5dBi、X200=8.0dBiです。
ちなみに、RadOO社製の3エレが8.5dBiなので、自作とはいえ4エレですからその程度はあるのかもしれません。
自作のアンテナで運用するのは楽しいです。ただ、山岳運用の場合、360度全方位からの電波を受けたいと思うこともあるので、その時の気分で使い分けることになりそうです。
< 製作したアンテナのシミュレーション >
前回の記事でシミュレーションしてありますが、給電部の形状の影響とか、ラジエータを曲げた影響とか、念のため見てみました。

形状
現物に似せてみました。

定義
№10のセンターが給電点です。

パターン
SWRは偶然現物と同じになりましたが、インピーダンスは異なります。

SWR
ということで、このシミュレーション結果は前回と大差ありませんでした。
< ケースの製作 >
製作というほど立派なものではありませんが、リュックに結わえて使う筒状のケースをありあわせの材料で作りました。

見ての通り掃除機のパイプです。物を捨てられない年寄りなもので、押し入れにこんなものが転がっていました。ずいぶん昔のものです。
パイプの底をふさぐものと上の口のキャップはキッチンにあった空容器です。パイプの径に合うものを現物合わせで探しました。ちなみにこの空容器は「アサヒペン障子枠の洗剤400g」でした。
給電部はケーブルやリグといっしょにタッパーに収納します。
運用するにはこのほかに三脚(一番上の写真に写っているもの 580g)も必要ですから、本当にきつい山に登る時は持っていきませんけどね。RH770で充分です。
《 追記 2022.07.07 》 バランは必要か??
この4エレ八木ですが、最近あまり使っていません。
試作としてはそれなりに出来たのですが、特に性能が優れているわけでもありません。登山で使う場合、登山が主の目的なのでアンテナはRH770で済ませてしまっています。
さて、最近50MHzのループアンテナを作りまして、その過程でいろいろ調べていて、八木アンテナやダイポールアンテナに同軸ケーブルで給電する場合にはバランを入れた方が良いことがわかってきました。
とはいえ、この八木アンテナを垂直偏波でハンディー機5Wで使用している現状では、バランがなくても大きな問題はないこともわかっています。
実用上では、もしかすると、芯線につながったエレメントを上にするか下にするかで放射パターンがいくらか異なるかもしれません。
接地されていないハンディー機の場合に、給電する同軸ケーブルの芯線に接続したエレメントと外部導体に接続したエレメントで何がどう違うのか、残念ながら私にはわかりません。接地されていないと言っても、リグを持つ人体が影響している可能性もあります。
それでも、バランを入れることでこのアンテナ本来の性能をもっと引き出せるのではないかという淡い期待が少しあります。
バランといっても、430MHzのような高い周波数ですからトロイダルコアの使用は難しいと思います。それでもフェライトを使うのであれば、スリーブコアを複数使ったフロートバランがよさそうです。さもなければシュペルトップバランを採用することになります。
スリーブコアを使うのがお手軽な気はしますが、どうせ試作するならシュペルトップバランを試してみたい気がします。
ただ、このシュペルトップバランの動作原理がいまいちわかりません。何がわからないかというと、コモンモード電流は阻止するけれどノーマルモード電流は阻止しないという、その理屈がわからないのです。いろいろな説明を読んでいるのですが、まだどうもスッキリしません。
それでも製作例がたくさんあり、いろいろな本に書かれていますから、バランとして動作することは間違いないです。
以下は、シュペルトップバランの製作に関する検討です。作ろうとしているものは、同軸ケーブルに別の同軸ケーブルから外してきた編み線をかぶせて作る一般的なシュペルトップバランです。
いくつかの製作記事を見ると、電気長1/4λを決めるための短縮率がまちまちなのが気になりました。
今回作ろうとしているタイプの場合、短縮率は同軸ケーブルの外部被覆の比誘電率で決まります。
ネット上での信頼できそうな短縮率は5D2Vでは0.57くらいのようです。
外部被覆として一般的に使われている塩化ビニルの比誘電率がどうもはっきりしないので、できれば現物で測定した方がよさそうではあります。
433MHzの場合、仮に0.57で計算すると(300/433)×0.57×(1/4)=0.099m=9.9cm
同軸ケーブルの外部導体とシュペルトップのためにかぶせた編み線の両方で挟まれた外部被覆の絶縁物の長さが9.9cmということです。
もし短縮率を測定するならシュベルトップをもっと長く作って短縮率を実測してから、電気長1/4λに仕上げるということになります。
しかし、私の場合、シュペルトップを作るとしても実測しないで、9.9cmで作ってしまうだろうと思います。
なぜかというと、高周波での測定技術に自信がありません。最近50MHzのQマッチのために同軸ケーブルの短縮率をNanoVNAを使って測りましたが、コネクタのどの位置を起点と見るかなど、なかなか難しいと思いました。430MHzでなおかつシュペルトップに加工したケーブルをどう測るか考えてしまうと、自分で測るよりネットで調べていちばん信頼できそうな値を使った方が無難に思えてきます。
参考になりそうな、ていねいに書かれた記事がありました。
シュペルトップ 《 日日是休日のホームページより 》
これを読むと430MHzでの塩化ビニルの電気的特性はかなり怪しく見えます。もし手に入るなら外部被覆がポリエチレンの5D2Eを使いたくなりました。
これの《シュペルトップの短縮率(5)》をみると、フジクラの灰色の5D2Vで測定したものと思われるデータがありました。9.8cmで447MHz。これから単純に計算すれば、10.1cmで433MHz。このくらいの長さで作るのはいかがでしょうか???
製作する場合、移動運用用として作るのですから、同軸ケーブルのアンテナ側には圧着端子付きのより線を直にハンダ付けしておいて、組み立てる時にラジエータのエレメントと接続すればOKです。
後で、夏休みの工作にやってみますかね。あまり効果は期待していませんが、アマチュア無線を趣味にしているのですから、一度くらいはシュペルトップバランを作ってみてもよいように思います。
シュペルトップバランタイプの製作については不確かなことが多いので結局作りませんでした。
430MHz用のバランとしては上記のほかに、『平衡・不平衡の変換にはUバランを使う。インピーダンスの変換が必要な場合はQマッチを使う。この場合Qマッチに必要なZ₀のラインはマイクロ・ストリップラインで製作する』という方法があるようです。製作記事ではアンテナ側にQマッチがあり、Qマッチで200ΩにしてからUバランで50Ωにしているようでした。
ならば、最初から200ΩのアンテナにしてしまえばQマッチは不要です。移動用として使うことを考えると、フォールデッドダイポールをラジエータにした八木アンテナがよさそうです。昔のテレビアンテナのようなタイプです。
この続きは、別の記事にしました。200Ωで給電する仕様にした4エレ八木アンテナのシミュレーションと製作の記事です。
430MHz用4エレ八木アンテナ(Uバラン使用タイプ)のシミュレーションと試作










