「おい、いい加減にせいや!」


「何とかしなければ」

と思ってはみたものの

すぐに名案が浮かんでくる訳は

ありません。


預かってから

20年も経って

しまったRolex。


引っ越し直後に探せなかった

彼女の所在を

20年経った今

突きとめることは

ほぼ不可能と思われました。


その頃にはインターネットも

普及していたので

もちろん検索もかけましたが

情報は皆無でした。


facebookやtwitterといった

ソーシャルネットワークが

やっとアメリカで

普及し始めた頃で

日本ではまだまだでした。


彼女を

探し出すことができない以上

この命題に決着をつけるために

残された道は4つ。

「売却」、「横領」、「温存」

そして「返却」です。


迷うまでもなく

わたしの中では

結論は出ていました。


わたしはこの時点で

既にベテラン社会人です。

その上

憚りながら人の親でもありました。

そんなわたしが

「売却」や「横領」を

選べる訳がないのです。


元々

「何とかしなければ」

と意を決したのは

A氏が自宅近くまで

接近してくることを

フリーマガジンで知ったからです。


写真の中のA氏が

「おい、いい加減にせいや!」と

叱咤激励しているように

見えたからです。


これは

天が与え賜うたチャンス。

「温存」はありえない。

「返却」あるのみ!

そうだ!

A氏に返却だ!

潔く謝ろう!


そうと決まってからのわたしは

これまでとは別人でした。

毎晩のように

A氏に関する情報を

ネットで集めました。


そもそも

わたしのような一般人が

CMに使われるほど

メジャーなアーティストに

接触できるのか?

まずはそこからでした。