当直明けの朝の出来事


わたしのお昼ごはんは毎日

病院の売店で買う

ミックスサンドでした。

お昼ごはんを選ぶという

心理的余裕も時間的余裕も

なかったからです。


その点ミックスサンドは

糖質、タンパク質、脂質

ビタミン、繊維質が

その名の通りミックスされていて

何も考えずに食べても

栄養バランスバッチリの

優秀な食べ物です。


でもその日は何故か

社食に行きました。

理由は覚えていませんが

おそらく

毎日同じサンドイッチを

食べているわたしを不憫に思った

看護師さんが

誘ってくれたのだと思います。


理由はどうあれ

とにかくわたしはその日

珍しく社食に行きました。

すると相室のネキも

偶然社食にいたのです。


皮膚科外来は普段

午前中激混みですが

その日は珍しく早く終わり

久しぶりに社食に来られたそうです。

(普段は社食の空いている時間帯に

外来診療が終わらない)


滅多に社食を使わない2人でしたが

偶然が重なり

その日は社食で会いました。


帰り際に呼び止められて

「週末に実家に戻ることになった」

というような内容の事を

言われましたが

その時は

一時的な帰省だと思っていました。


それが帰省ではなく

引越しだと知ったのは

引越し当日の朝でした。


当直明けで寮に戻ると

引越し業者のトラックが

停まっていました。


出発までのわずかな時間に

説明された引越しの理由は

大阪でお一人暮らしのお父様が

事故で失明され

同居することになった

というようなことだったと

記憶しています。


医局には以前から

退職の意向を伝えていたそうですが

隣に住んでいるわたしとは

中々会えず

引越しの挨拶が

当日になってしまった事を

しきりに恐縮している様子でした。


偶然社食で話した日から

たった4〜5日後のことでした。