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小学生の頃、父と四国お遍路巡りをしました。
どこのお寺に行くところだったのかは忘れてしまったのですがお土産屋さんがたくさん並んでいたところをキョロキョロしながら歩いていました。
あるお店の前で立ち止まり、目が釘付けになりました。
法螺貝でした。
『なんか欲しいもんでも見つけたんか?』と言いました。
『あの綺麗な貝。』指差して教えました。
『あぁ、法螺貝やなぁ。なんぼするんや?おぉ~高いなぁ。アレは手が出んぞ。』
何万円かの値札がついていました。
近くで見たくなったのでお店に入りました。
法螺貝の近くまで行きマジマジと見ていました。
『お嬢ちゃん、法螺貝が気に入ったんか?』
店主が声をかけてきました。
『綺麗な貝やね。欲しいけど買われへん。』
『これは修験者が使う法螺貝や。お嬢ちゃんが使うもんではないわなぁ。ハハハ・・これなぁ音を出すのが難しいんやで。ワシもなかなか音が出せんかった。』
笑われて なぜだか悔しかったのです。
『どんな音がでるん?おっちゃん吹いてみてくれへん?』
『いゃ 悪いけど、これは売りもんやから無理やわ。』
『えぇ~聞かれへんの?吹いても大丈夫な法螺貝を持ってるんやろ?』
『少し待っててもらえるんやったら、家にあるワシの法螺貝を持って来れるけど、往復で12分くらいかな?待てるか?』と聞いてくれたので待つ約束をしました。
家まで走って取りに帰ってくれたのです。
マイ法螺貝を持ってきてくれた店主は、早速吹いてくれました。
ボォ~~~ ボォ~~~
私と父は拍手して店主を褒め称えました。
『おっちゃん、私にも貸してくれる?』
『ええけど。山に入るときの相棒でな、とても大事にしとるものや。落とさんといてや。しっかりこう持つんやで。』
店主は子供のころから修験者と一緒に山登りをしていたそうです。
法螺貝を貸してくれました。
カッコいいとヨダレを垂らしそうな勢いで見ていました。
『吹き方はこれから教えるから』と店主が言いかけたとき
ボォ~~~~~
私は法螺貝に口をつけて音を鳴らしていました。
『エェー!?』店主の叫び声が聞こえました。
『なんで音が出るんや?ワシなんか音出るまで1週間もかかったんやで!こんな子供に負けるとは・・』
『おぉ、スゴいなぁ。今度はワシにも貸してくれんか?店主借りてもいいか?』父も吹きたくてウズウズしていたようでした。
父に法螺貝を渡しました。
父が法螺貝を吹くと
フー
息を吐き出す音しか聞こえてきません。
『口唇を振るわせるんやで。ブーっておもいっきりやったら口唇がプルプル振るえるやろ?』
『おぉ、そうか!トランペットと一緒やな。それならできるわ。』
ボォ~~~~~~~~~~~~~~~
ロングトーンが続きました。
父は若い頃に自衛隊の音楽隊でアコーディオンを担当していました。その頃にいろんな楽器に触れて一通り音を出せたそうです。
『いゃ~、あんたもスゴいなぁ。そんなロングトーン出されへんて!いゃ、まいった。完敗や。親子揃ってスゴいなぁ。アハハハ・・』豪快に笑っていました。
『お嬢ちゃん、もう一回吹いてくれるか?なんかなぁ、不思議やねんけどなぁ、胸がキューっとするんや。懐かしいような気がしてなぁ。』
父から法螺貝を受け取りもう一度吹きました。
ボォ~~~~~
ボォ~~~~~ ハイトーンが出ました。
店主は、手を胸に当てて急に泣き出しました。
『こんな気持ちになったのは初めてでなぁ。なんでやろ?胸が一杯になる。お嬢ちゃんとは初めて会うのに、昔から知ってる人のようや。不思議やなぁ。ワシ、人前で泣いたことないんやで。恥ずかしいわ。』涙がポロポロ出ていました。
そのときに、白い衣装を身に付けた男性の姿がみえました。山を登って山頂で法螺貝を吹いていました。
『おっちゃんは、人が死んだら魂になるって信じれる?』
『あぁ、肉体は滅びても魂は残るって思とるよ。』
『おっちゃんとは、遠い昔会ったことがあると思うねん。一緒に山の中で修行をしとったと思うよ。魂が覚えてるねん。だから涙が出るねん。また会えたんやな。』私もウルウル涙がこぼれました。
『法螺貝ありがとう。』法螺貝を店主に返しました。
『そうか。ワシは半信半疑やけど、前世ってあると思うた。ワシ、お嬢ちゃんと会えてよかったわ。また来てくれるか。』
店主が手を差し出してきました。私とかたく握手をしました。
『うん。また来れるかはわからへんけど、また来たい。』
『また来ることがあれば、寄らせてもらいます。法螺貝ありがとうございました。本当にええ体験をさせてもらいました。』父も感動したのだそう。
お土産をいくつか購入して店を出ました。
初めて見る法螺貝だったのに、なぜだか昔から知っているという不思議な感覚になりました。
私の知っている法螺貝は、もう少し小さくて色は黒っぽかったと思います。
そんな風に過去世で、習得したものは今世でもできるものなのです。
魂が覚えているのですね