体がバランスを保つための機能を平衡感覚といいます。人の平衡感覚は、目、耳の奥の内耳、手足の皮膚や筋肉、関節から集められた情報を脳が整理、統合し、体の各器官に指令を出すことによって保たれています。この平衡感覚を維持するシステムに障害が起きると、うまくバランスがとれなくなり、めまいが起こります。めまいを引き起こす原因として一番多いのが、耳の奥の内耳の障害です。
日常生活から考えられる原因
急に立ち上がったときなどに起きる血圧の低下
立ち上がるときは、自律神経が血管と心臓に作用して血圧の変動を調節しています。この自律神経が十分に機能していないと、急に立ち上がったときに血圧が下がり、脳に送られる血液の量が一時的に少なくなることでクラクラとするめまいが起きます。
ストレスや過労による自律神経の乱れ
過労や睡眠不足、緊張状態や精神的なストレスなどが続いたときは自律神経が乱れやすくなり、フワフワとするめまいやクラクラとするめまいが起こることがあります。めまいの他に、耳鳴りや頭痛、肩こり、不眠、冷や汗といった症状があらわれることも少なくありません。
耳の奥の異常
耳の奥の内耳という部分は、聴覚とともに平衡感覚をつかさどっています。めまいの原因はこの内耳の異常によって起こることが多く、周囲や自分がグルグルと回っているようなめまいに襲われます。めまいと同時に耳鳴りが起こることが多く、耳の閉塞感や難聴をともなうこともあります。
アルコールの飲みすぎやタバコの吸いすぎ
アルコールを飲みすぎると、平衡感覚を維持する脳や内耳の三半規管に一時的に障害を与えることになります。そのため、フワフワとするめまいや周囲がグルグルと回るめまいが起こります。また、タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させ、一酸化炭素は血液の酸素を運ぶ能力を低下させて酸素不足を引き起こします。この酸欠状態が脳や内耳の働きに影響を与え、フワフワと浮くようなめまいやグルグル回るめまいの引き金となります。
めまいの原因となる主な疾患
良性発作性頭位めまい症や内耳炎、慢性中耳炎、メニエール病、前庭神経炎、突発性難聴など、めまいを引き起こす疾患の多くは、内耳の障害や炎症が原因になります。その他、降圧剤によって急激に血圧が変動することがある高血圧、脳に血液が十分に供給されなくなる低血圧症、脳梗塞、脳腫瘍、そして、血液中のヘモグロビン濃度が薄くなる貧血もめまいの原因として知られています。また、更年期障害でもめまいが起きることがあります。
めまいの種類
グルグル目が回るめまい
急に自分がグルグルと回っているように感じたり、景色や天井など周囲が回って見えたりするため、回転性めまいと呼ばれています。急な激しい発作の場合が多く、まっすぐに立っていられなくなったり、三半規管が不安定になるために嘔吐をともなうこともあります。主に内耳の異常が原因と考えられています。
フワフワ、フラフラするめまい
地に足が着かないようなフワフワした浮動性めまいや、足元がフラフラして地面が揺れるような動揺性めまいは、両側の内耳や脳の障害によって起きることが多くあります。立っていられないほどではなく、症状そのものは軽度ですが、長時間続く傾向があります。
立ちくらみのようなめまい
耳や脳には異常がみられないのに、急に立ち上がったときや湯船から出ようとしたときに頭がクラクラしたり、一瞬目の前が真っ暗になることがあります。これは、耳や脳の異常ではなく、脳に送られる血液の量が一時的に不足することで起こるのです。貧血やストレス、過労などで自律神経のバランスが乱れると症状が出やすくなります。
日常生活でできる予防法
生活のリズムを整える
夜ふかしをしたり、朝食を抜いたりすると体本来のリズムが狂い、自律神経のバランスが乱れてめまいが起きやすくなります。食事はできるだけ決まった時間に3食とり、早寝早起きの習慣をつけて十分な睡眠時間をとるようにして、生活のリズムを整えましょう。また、適度な運動は体の血流を促します。ウォーキングなど、無理のない運動を続けましょう。
ストレスを溜めない
心身のストレスによって自律神経のバランスが崩れると、めまいを起こしたりめまいが悪化したりすることがあります。疲れを感じたときは、いつもより早めに眠り、休日に好きなことをしてリフレッシュし、ストレスを溜め込まないようにしましょう。
アルコール、タバコを控える
一度にアルコールを飲みすぎると、平衡感覚が低下して、めまいを誘発します。適量を守り、めまいがするときは控えましょう。また、タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させ、一酸化炭素は血液中の酸素を奪います。脳や内耳の血行が悪くなったり酸素不足になるとめまいが起きやすくなるので、タバコは控えましょう。
体をゆっくり動かす習慣を身につける
高血圧や低血圧、貧血の人や、日常的にめまいが起こるという人は、日々の動作をなるべくゆっくりと行うように心がけてみましょう。とくに起き上がるときや立ち上がるときはゆっくりと動くように意識し、めまいを予防しましょう。
対処法
めまいが起きたらあわてず安静にする
めまいの発作が起きたときは、あわてないことが大切です。転倒しないよう注意しながら、座れる場所や横になれる場所へ移動し、楽な姿勢でしばらく休みます。また、車を運転しているときは、路肩に駐車し、できればシートを倒して休みましょう。
ビタミンB群をしっかりとる
めまいを軽くするのに役立つのがビタミンB群です。なかでもビタミンB12は神経の代謝を促す作用があり、めまいの治療薬にも使われています。レバー、豚肉、サンマ、アサリ、カキなどに多く含まれ、睡眠と覚醒のリズムを整える働きもあります。豚肉などに豊富に含まれるビタミンB1も、脳の働きを正常に保つ働きがありますので、めまいの予防に効果的です。
カフェインや香辛料を控える
カフェインや香辛料は神経を刺激して興奮させる作用があるため、めまいを引き起こしたり悪化させたりすることがあります。カフェインはコーヒーや紅茶、緑茶だけでなく、コーラや栄養ドリンク剤にも含まれていることも多いので、注意が必要です。
病院で診察を受ける
グルグルと回るような激しいめまいや耳鳴りが起こる場合は耳鼻咽喉科、あるいは脳神経外科か神経内科を受診しましょう。最近では、専門のめまい外来を設けている病院もあります。また、めまいには脳の疾患が原因で起こる危険なめまいもありますので、激しい頭痛や舌のもつれ、物が二重に見える、手足のしびれなどをともなう場合は、救急車を呼び一刻も早く病院へ行きましょう。
平衡訓練に役立つ日常生活の工夫
めまいの治療の一環として平衡訓練というものがありますが、朝起きてから夜寝るまでの日常生活の動作が、全て平衡訓練に繋がっています。例えば、洗顔時に目を閉じて直立したり、片足だけで立つ練習をしてみてください。またズボンやスカート、靴下を立ったままはいてみたり、階段の上がり下りを積極的に行うなど、生活の中で平衡機能を鍛えることができます。毎日続けることが大切ですが、気分が悪いときは中止しましょう。