実質ペナルティとも言える2週間の謹慎が終わり、柿子も会社をやめた。
そこから黒川の動きは無かった。
一つの大きな節目が終わりを迎えたのは間違いない。
これは黒川と柿子が予め考えていたプランであることはわかっていた。
公に私にペナルティを下さない八代に対する怒りがあったのも事実だろう。
何とか私への罰を与えたいという黒川の試行錯誤で生まれた今回の謹慎処分だったと思われる。
長丁場になる覚悟でいたから、これで落ち着くことはないと思っていたが、心のどこかで終わってくれと願う自分がいた。
この地獄の日々を何カ月も何年も耐えられる強さを自分は持っていない。
1日でも早くあの普通だったけど幸せだった日常に戻りたい。
心も体も、私以上にそれを望んでいた。
もうすぐ妻の誕生日が近づいていた。
こんな状態でどう祝って良いかわからないし、妻もまったくそれを望んでいなかった。
少し落ち着きを取り戻した妻は、ただならぬ状況で張り詰めていた私を見て、少しやばそうな雰囲気を感じたのだろう。
とりあえず落ち着いて対応しようと、ここに来て私の理解者になってくれようとしていた。
今まで、周りは全て敵に見えていた。
妻でさえも。
一番の被害者だから彼女に一切の落ち度も無いが、自分を攻撃してくる人間は全て敵だった。
しかし、それが今は心強い味方になってくれている。
本当に頭が上がらなかった。
柿子が辞めてから2週間は経っただろうか。
その間、黒川からも八代からも特に音沙汰は無かった。
しかし、私も八代もわかっていた。
このままで終わる事なんて無いということを。
そして、その時は唐突に訪れた。
妻の誕生日。
少し落ち着きを取り戻した2人は、いつもより明るく朝の挨拶を交わし、私はこの日も会社へと出発した。
通常通り仕事を進めながら丁度お昼に近づいたその時、妻から一本のLINEが入った。
そこにはこう書かれていた。
「なんか、誕生日プレゼントが届いたよ」
そう言って画像が貼り付けられていた。
私は一瞬でピンと来た。
恐れていたことが現実になった。
ヤマト宅急便で送られてきた封筒には、殴り書きで書かれた「重要文書」という文字が刻まれていた。
宛先は知るはずの無い妻の名前が書かれていた。
そして、急いで送り主の欄を見ると、なんと送り主の欄は空欄だった。
間違いなかった。
ついに、黒川が禁断の手を打ってきた。
あの20枚以上ある、私と柿子の不適切言動が書かれて20枚以上の書類を、ついに送ってきたのだ。
しかも、故意か偶然か、妻の誕生日に合わせて妻宛に。