あの日から1週間が経過し、私の心も少しずつ落ち着きを取り戻していた。
相変わらず柿子とは職場で遭遇するが、その後一切のやり取りはしていなかった。
あの超瞬間最大風速的な出来事は何だったのかと、まるで悪夢にでもうなされたかのような錯覚に陥る。
あまりに鮮明に体が記憶しているから、やはり夢ではなくれっきとした現実であったのだと気づかされる。
私はいささか大きな地雷を踏んでしまったようだ。
今ここで普通に生活していることが不思議なくらい大きな地雷だった。
そして、それはやはりこんな程度の傷では終わらせてくれない、悪魔の地雷であることを思い知らされることになる。
長い一週間を終えた金曜日の夜。
この日は早く仕事が終わったから、たまには早く家に帰ろうか。
あの事件以来、無用な外出や会食はできる限り避け、しばらく大人しくしていようと思っていた。
そんな時、再び私の元へ恐怖のメールが届く。
それは、黒川からの2回目のメールだった。
実に1週間ぶりのメールに私の体が全力で身震いした。
恐る恐るメールを開けてみる。
そこには1回目のメールとは全く違うテイストの長文が刻まれていた。
「彼女への謝罪があった事を聞きました。誠意ある対応に感謝します」
そんな冒頭文で始まった文面には、続いてこのような内容が書かれていた。
「ところで、私への謝罪はないのでしょうか?まさか先日の短いメールがそれということは無いでしょう」
この時点で私の体は小刻みに震えていた。
地獄のような悪夢が再び始まった瞬間だった。
更にこう続く。
「あなたが私に対しても誠意ある対応をするのであれば、私はあなたを許すかもしれません」
「でもそれが叶わないのであれば、今回の件を文書にまとめてあなたのご自宅にお送りすることも可能です」
と書かれていた。
しかも、なんと私の住む住所の一部がそこに記載されていたのである。
何故、彼は住所を知っているのか・・・この瞬間、私はもう思考停止に陥った。
再び大切な何かが大きな音を立てて崩れていくのを感じた。
やばい、やばすぎる・・・。
一度ロックしたスマホを再びアンロックし、バクバク鼓動を続ける心臓の音と共に続きを最後の文章を読んだ。
「このメールをお読みになったら、ご連絡ください。誠意あるご対応をお待ちしております」
華金は地獄の金曜へと移り変わっていった。