待望の新潟市に入り残すところ20kmになった。
この数日間の長い旅も、どこまでも続く国道8号線沿いの歩道ももうすぐ終わってしまう。
足の痛みは酷いし、振っている腕もいつの間にか擦り傷が出来ている。集中して走っているとランナーズ・ハイのような状態なのか痛みが薄れて汗がたくさん出る。でもきっとペースは大したことはない。
暗くなってハンドライトを手にして信号を待ちをしていると、道路の反対側の歩道を走る中川さんが後ろから現れた。嬉しくなって横断歩道を渡り話しかけに行く。
まだまだ元気そうで残りを全力で走っている最中だと話すと「よし、長谷川さんに乗って俺も走ろうかな」とやる気を出しとても500km走ってきたとは思えないペースで走りだした。
さすがサブスリーランナー、私の走力とは根本的に違う。
しばらく付いて行ったがとても持たないペースだったのでゴールで会うことを約束してマイペースに戻る。
最後から2番目のチェックポイントを終え残り10kmを切った辺りでランナーズ・ハイが終了したようで足の痛みだけでなく、太ももの筋肉が重く固く動きにくい。走ることはやめたくなかったので歩くようなペースで走る。
何度もスマートフォンで現在位置を確認して道を間違えないように川沿いに出る、川沿いをまっすぐ行けば良いことを確認して、ゴールで待っていてくれる彼女に連絡を入れたところでスマートフォンのバッテリーが切れた。
最後のチェックポイントで運営に連絡すると、ゴールをスタッフ一同がお迎えしてくれる約束になっていたのでこのままでは誰の迎えも受けずにゴールすることになってしまう。一人寂しくゴールも良いかなと思ったけど、せっかくの運営スタッフさんたちの好意を無駄にしてしまうことになるのでモバイルバッテリーを調達することを考えた。
川沿いは見渡す限り真っ暗で店舗があるような気配はなく、遠くにFamilyMartの看板が見えた。「あそこまで何メートルあるんだろう・・・適当に走ってうまくたどり着けるかな・・・」少し葛藤があったが取り敢えず方向を覚えて適当に走ってみた。
何度か角を曲がって左を見ると目当てのFamilyMartがあった、急いで入り使えそうなバッテリーを買ってコースに復帰する。
変なところから合流するから後ろから来たランナーにミスコースしていると思われたら嫌だなぁと考えつつ河原のコースに戻って辺りを見回すが川の道のランナーらしいライトは見当たらない。
少し無駄足になったけど問題なくゴールに迎えることに安心して、買ってきたバッテリーを繋ぎながら今度こそ日本海を目指した。いくつかの大きな橋をくぐり真っ暗な川沿いを進むと行き止まりに当たる。
真っ暗で全く見えないが日本海の波の音が聞こえた。調度良いベンチがあったので座ってスマートフォンの充電が溜まるのを待った。
「あー長かったなー、ここまできたよー」
「自分の足で来られたよー」
想像していたほど涙は出ない。
真っ暗な海に何度も話しかけた。
スタート直後に「次に見るのは日本海ですね」と太平洋を眺めながら隣を走るランナーに言った。日本海には来たみたいだけど真っ暗で何にも見えなかった。
充電が少しだけされたスマートフォンで大会本部に電話をかける。電話口から祝福を告げられゴールで待っていると言われた。
東京からゴールを迎えるために来てくれている彼女にもあと15分くらいで着くと連絡を入れる。
マップをチェックしていたときゴール付近はどんな思いで走るのかと想像しながらストリートビューをチェックしていた。PCで見る景色は昼だったので真っ暗なゴールは全く想像していなかった。
川の対岸を見るとライトを持って走ってくるランナーが見える、きっと杭本さんだろうと思って聞こえないのはわかっていたけど「おーい」と声をかけてライトを振った。
大きな道に出るとゴールはもうすぐ、ゴール前のラウンドワンに遊びに行くと思われる若者の3人連れの横を通り過ぎる。角を曲がるとスタッフの方が誘導灯で誘導してくれていた、曲がると彼女が笑顔で「お疲れ様!」と言った。その先にゴールテープを持ったスタッフの皆様と主催者の館山さんが居られた。
手を上げてゴールを喜ぶ。
先にゴールした中川さんも迎えてくれた。
色々注文を付けられながら写真を撮り、館山に一言「おめでとう!次回は10回記念大会だから永久ゼッケンを付けて来てね」と言われる。
この数日間を考えるとさすがに苦笑いしか浮かべられなかった。
彼女に迎えてくれてありがとうと言い、中川さんと握手を交わす。
この数日間を共に走り、苦しみと続ける勇気を分け合った戦友という感覚だった。
彼が居たから随分励みになってここまで来られた。
スタッフの皆様はもちろん、一緒に走ってくれた先輩ランナーの皆様のお陰でなんとかたどり着いた。もう走らなくて良い。
杭本さんが次にゴールすることはわかっていたのでゴールを待って、中川さんがやってくれたのと同じように祝福と握手を交わす。
いつまでもランナーを待っていたかったが身体が冷えてきたのでお風呂にいくことにした。
風呂の中で中川さんと話し、次に野辺山で再会することを約束する。
彼は友達がゴールに迎えに来てくれていて、これから隣のラウンドワンで朝までカラオケするとのこと、底なしの体力は本当に驚愕。
ゴール地点に再び戻ると恵美さんが祝福してくれた。
この数日間をほとんど寝ないでサポートしてくれたことに感謝を言い、またよろしくお願いしますと頭を下げる。
彼女が手際よくタクシーを呼んでくれていて、ホテルに向かった。
部屋に入って足にたくさん湿布を貼ってすぐに横になった。
大量の汗をかいて、足に酷い痛みを感じて何度も目が覚める。
でもすぐに眠りにつく、眠ると、同じ夢を何度も見た。
三国峠のような石がゴロゴロしている道を裸足で登っていて足は何かを刺されていいるように痛く、着衣は何も付けていなくて痛いほど寒い。
後で聞いたらひどくうなされていてとてもうるさかったということ。
朝を迎える頃には痛みも大分楽になり気持よく目覚められた。
手早くチェックアウトをして新潟駅に向かう、駅構内で朝食をとれる場所が無いか探していると切符を買おうとしている中村さんに出会った。
声をかけてお互いの無事なゴールを祝福をして少し話をする。
さすが私と違って足は一切引きずっていない。
せっかくだから新潟らしい朝食をとりたかったが、飲み屋ばかりで朝やっているお店は見当たらない。仕方なくファミレスに入って朝食を摂り予約しておいた「MAXとき」に乗る。
初めて乗る電車なので楽しみにしていた、2階席だったので階段が大変だった。
4日と13時間かかった東京からの旅、帰りは2時間だった。
会ったことは無いけど瀬田さんの事は何度も考えた。痛みを感じながら痛みとともに日本海を目指した数日間、ただシンプルに走って食べて少し寝ることだけをしていた。
長い時間をかけてブログにまとめている今、2ヶ月経つがまだ川の道のダメージは残っている。
それでもこの魅力的な大会に次回も出来たら参加したいと今は思う。






