夜空に満月
大きな月と遠くの山の連なり。
なぜか私の横には灰色の大きな狼。
でも、それは現実の狼ではない。
多分、その時の自分がシャーマンとして使っていた動物のスピリット。
実は、今もパワーアニマルで狼が現れる。
そして、精神世界内で私にくっついてきて、私の身の回りを守ったり、時々、手伝ってくれたりする。
きっとその時からの縁なのかとも思う。
私は空を見て、自然を感じ、一体になろうとしている。
月に向かって両手を差し伸ばす。
何かの力を両手で受け止めて、それを自分のものにするように。
それは特別な儀式ではなく、私の周りの人はみな、自然にやっていること。
自然と一体になって、その力を自分に貰う、そんなことを、みんな親や周りの人がしているのを見て、自然にやるようになった、そんな感じ。
私の斜め後ろには、幼馴染の大好きな夫がぴったりと寄り添っている。
でも、私はすごく切ない。
私の部族は女がシャーマン的に支配している。
しかし、女の子が最近生まれてないので、このままだと部族制度の維持が難しい。
若い子供を産める女は女の子を生むのが部族での最重要の使命。
私以外にも適齢の女は何人かいるが、なかなか子供は生まれない。
そして、私も無理を通して夫と夫婦になったものの、しばらく時間が経つのに子供ができる気配がない。
だから、族長から、最終通告みたいのを申し渡されたばかり。
私たちはこのままだったら別れさせられる。
そして、私は別の部族の男の人を夫にしなくてはいけない。
でも、それはイヤ。
何とかしてください…
子供を下さい…
このままだったら私たちは夫婦ではいられない
そう、夜空を見上げながら涙が出そうになる気持ちを押えて祈っている。