6月13日の衆議院安全保障委員会での重徳和彦(立憲民主党)委員の質疑で、GIGOの問題が取り上げられた。
すでにこの条約は国会では両院において承認されているが、立憲の重徳委員はなぜこの条約を立憲が承認したのかについて木原稔防衛大臣に尋ねている。
そんなこと、防衛大臣の立場で答えられるわけもないのだが、まあ必要だから賛成してくれたんだろうということを答えていた。
この条約の衆議院での審査の際、最後の討論で立憲民主党の鈴木庸介委員は賛成討論に立っているのだが、内容は反対討論そのものだった。
このときの賛成討論は以下の通り。
【賛成討論】 鈴木庸介(立憲民主党)理事
立憲民主党は賛成の討論をした。コストを抑えるために共同開発が主流になってきており、GCAPを円滑に推進するため政府間機関を一元化して管理することは必要であるとした。第三国移転は民主党政権時代から認めたものであるが、ただし殺傷能力のあるものについては引き続き慎重に対処すべきとした。しかしこの条約は直接輸出であり、その合理性について納得できる説明はなされていないが、この機関の設立は必要である。今回設定された歯止めについても疑問を持っている。
このときに院内ではかなり疑問をもっている人もいたのだが、賛成した理由がこの13日の安全保障委員会で重徳委員より示された。
この条約の是非をめぐって、立憲民主党は党内で苦渋の決断だったという。日本社会党もどきの彼らは当然この条約に反対しそうだが、なぜ賛成したのかと言えば、「政権交代が起きた時に困るから」という。つまり政権交代がなされて立憲民主党が与党になったならば、以前の政権たる自公で決定したことについて外国に対して、それまでの条約は無効ですなんてことが言えないからだというわけだ。
それならばなぜ日独ACSA協定には反対したのだろうか? 言っていることが矛盾だらけである。
また、「戦争反対!」を叫びたがる立憲民主党の支持者を裏切ってもいる。これに対して、日本共産党とれいわ新選組は筋が通っており、いずれの条約も反対している。れいわに至っては、なんの文句もつけようもないはずの「国際復興開発銀行協定の改正」及び「欧州復興開発銀行を設立する協定の改正」にまで反対している始末である。
立憲民主党がそのように考えたのは、ここ最近の「政権交代可能な二大政党はどうあるべきか」という問題が絡んでいる。
日本で政権交代が起きにくい一つの理由として、外交・安全保障問題において、自民と立憲の間に大きな開きがあるからであると言われてきている。
他国とくに欧米においては、政権交代をしても「軍隊の存在を許すな」なんて政党はない。外交・安全保障においては一定の同一のスタンスをとりつつも、小異において代わることはあって、日本のように自民党と社会党に見られたような、政党選択肢はないわけだ。55年体制では、社会党が軍事に対して非現実的、理想的なことばかりを言っており、その結果自民党政権しか選択してこなかったという歴史も確かにある。
今では、日本社会党ほどではない立憲民主党であるために、立憲は現実的になるべくそのような態度で賛成したのだと思われる。
なにしろ、日本社会党は村山富市内閣を作った際に、それまでの安保政策を転換した。それ以前に細川護熙内閣で政権入りしたときも、野党時代の主張を覆し、「日米安保条約の堅持」を言い出し、それまでは自衛隊は違憲だと言っていたのを合憲に転換した。
細川政権から羽田政権に代わり、社会党が下野すると「やっぱ自衛隊は違憲」と元に戻すが、自社さ政権で首相を出すと、「自衛隊は合憲」にまた変わる。その後は社会党という看板を捨てて、現実的な政党に転換したという社会民主党になっていくのだが、第二次橋本龍太郎内閣で閣外協力に転じ、小渕恵三内閣以降は野党になるとまた「自衛隊は違憲」と言い出すが、民主党政権になり、鳩山由紀夫内閣で福島瑞穂社民党党首はやはり「自衛隊は合憲」の元で政権に協力するが普天間問題で政権を離脱すると、また今度は「自衛隊は違憲」と言い出す。
こういうことを繰り返している体質が、立憲民主党の源流にある。もちろん、社会党・社民党を経ないで立憲民主党にいる者もいるが、この源流に巻き込まれている人も多くあり、野党の時は好き勝手に吠えるのに、与党になったら大人しくそれまでの前政権を継続するという根性なしが多いのである。
今回のこのGIGO条約について、正直に反対ならば反対すればよかったのではないか。非現実的と言われるかもしれないが、武器輸出は絶対に認めないというスタンスを貫くのならば反対して当然であった。それを「政権交代した時に困る」などという小手先の手法で賛成しているような政党に政権は任せられないのではないか。
いずれにせよ、自民党が信用できないのと同様に、立憲民主党も信頼できないのである。かつて民主党政権の末期・野田佳彦内閣のときのことを思い出すと、PKO参加五原則問題があった。このとき私はこのときの閣僚の秘書をやっていたので痛切に覚えているが、民主党は野党時代にPKO参加五原則をやぶって自衛隊を派遣したことについて政府与党を徹底的に追及していたのだが、野田内閣の時代にも自民党と同じくPKO参加五原則をやぶってハイチと南スーダンに派遣している。
ようは現実に照らし合わせれば、軍事というものは他国の常識にあわせねばならないということがある。
それでも頑なに参加しないのか、あるいは柔軟に参加しちゃおっかなあということであるのだが、立憲民主党はまず党内で芯のある考えがない。したがって政権交代した際には、あの悪夢の民主党政権のときと同じことが繰り返されるだろう。
GIGO利府
〒981-0111 宮城県宮城郡利府町加瀬新前谷地55−1
写真と本文はぜんっぜん関係ありません。
条約の賛否 東北選出衆議院議員の動向
選挙区 | 議員名 | 党派 | 賛否 |
青森1区 | 江渡 聡徳 | 自民 | 〇 |
青森2区 | 神田 潤一 | 自民 | 〇 |
青森3区 | 木村 次郎 | 自民 | 〇 |
岩手1区 | 階 猛 | 立憲 | 〇 |
岩手2区 | 鈴木 俊一 | 自民 | 〇 |
岩手3区 | 藤原 崇 | 自民 | 〇 |
東北比例区重複 | 小沢 一郎 | 立憲 | 〇 |
宮城1区 | 土井 亨 | 自民 | 〇 |
東北比例区重複 | 岡本 章子 | 立憲 | 〇 |
宮城2区 | 鎌田 さゆり | 立憲 | 〇 |
東北比例区重複 | 秋葉 賢也 | 自民 | 〇 |
宮城3区 | 西村 明宏 | 自民 | 〇 |
宮城4区 | 伊藤 信太郎 | 自民 | 〇 |
東北比例区重複 | 早坂 敦 | 維新 | 〇 |
宮城5区 | 安住 淳 | 立憲 | 〇 |
宮城6区 | 小野寺 五典 | 自民 | 〇 |
秋田1区 | 富樫 博之 | 自民 | 〇 |
東北比例区重複 | 寺田 学 | 立憲 | 〇 |
秋田2区 | 緑川 貴士 | 立憲 | 〇 |
東北比例区重複 | 金田 勝年 | 自民 | 〇 |
秋田3区 | 御法川 信英 | 自民 | 〇 |
山形1区 | 遠藤 利明 | 自民 | 〇 |
山形2区 | 鈴木 憲和 | 自民 | 〇 |
山形3区 | 加藤 鮎子 | 自民 | 〇 |
福島1区 | 金子 恵美 | 立憲 | 〇 |
東北比例区重複 | 亀岡 偉民 | 自民 | 〇 |
福島2区 | 根本 匠 | 自民 | 〇 |
東北比例区重複 | 馬場 雄基 | 立憲 | 〇 |
福島3区 | 玄葉 光一郎 | 立憲 | 〇 |
東北比例区重複 | 上杉 謙太郎 | 自民 | 〇 |
福島4区 | 小熊 慎司 | 立憲 | 〇 |
東北比例区重複 | 菅家 一郎 | 自民 | 〇 |
福島5区 | 吉野 正芳 | 自民 | 〇 |
東北比例区単独 | 津島 淳 | 自民 | 〇 |
東北比例区単独 | 庄子 賢一 | 公明 | 〇 |
東北比例区単独 | 高橋 千鶴子 | 共産 | ✖ |