雇用保険は減価する通貨を使用して改革すべし | 国政報告 おおさか佳巨 福島県[県中]の生活

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雇用保険法等の一部を改正する法律案(213国会閣10)

 

このたびの法案は雇用保険に関すること。

 

雇用保険というのは失業したときのためにかける保険であり、そこに出発点にあるが、今日では育児休業や職業教育訓練など様々な分野に手を広げている。

 

今回の雇用保険法改正案は、パートタイマーなどの短時間労働者に雇用保険を加入させようという内容になっている。

 

これまでの加入要件は週に20時間以上の労働時間だったが、これを10時間にまで緩和する。これにより新たに481万人の新規加入を見込むということである。

 

教育訓練においては、自己都合で退職した者が、雇用の安定・就職の促進に必要な職業に関する教育訓練等を自ら受けた場合には、給付制限をせず、雇用保険の基本手当を受給できるようにする。また、教育訓練給付金では、雇用保険から支給される給付率を受講費用の最大70%から80%に引き上げる。

 

育児休業給付については、共働き世帯が増加しているために育児休業の給付に対して今年度から財源の一部となっている国庫負担の割合を引き上げる。本来は給付費の1/8だが、暫定措置で1/80とされているが、この暫定措置を廃止する。

 

などであり、この法律は基本的には来年の四月一日から施行する。

 

この法案は4月11日 (木)に衆議院本会議で武見敬三厚生労働大臣より趣旨説明があり、同日に衆議院厚生労働委員会で賛成多数により可決されるべきものとされた。共産党から修正提案があったが賛成少数で否決された。あとは今週の本会議で可決される見込み。

 

今回の改正点については、前回の雇用保険法改正案の際に立憲民主党が修正案を出したものとほぼ同じ内容のようで、彼らは地団駄を踏んでいる。「なんであの時にOKしてくれなかったんだ」という怒りが上がるかもしれないが、政治というものはそういうものである。

 

しかし、国庫の負担を増やすというのは、お得なように聞こえるが、税金を上げねばならなくなる。雇用保険という保険でまかなっているものの補填を税収によりなんとかしているのが日本の社会保障の特徴である。

 

そこで、これに限らず日本の社会保険制度について根本から考えてみよう。

 

 

米国は民間市場に完全に委ねた市場重視モデルで、民間保険が中心であったがオバマケアにより医療保険に加入していない無保険者にもサービスを受けられる国民皆保険を目指しているが、基本的には国が面倒をみないという方法をとっていた。

 

ドイツやフランスは社会保険が中心で、職域をベースとした組合により運営される。所得に比例した保険料を支払うために、医療の診療を受けるときや失業時にはそれに応じた給付がなされる。

 

英国や北欧は租税が基本であって、社会保険ではないので国民全員が対象であるという平等思考である。

 

英国と米国は同じアングロサクソン系として、同じような経済感覚をもっていることが多いのだが、この社会保障については正反対だ。

 

日本はドイツやフランスのような社会保険を採用しつつも、不足分については租税による負担でまかなう。そのために中間型となっている。これについていつも議論が巻き起こるわけだ。

 

この方法は、年金にしても、雇用保険にしても、いつかガタがくる。これを解決する方法というのは自然主義経済を活用することである。

 

通貨が時間とともに減価するシステムにすることにより、就業者は将来の失業のために雇用保険料を支払う。雇用保険料を受け取った労働保険事務組合は、減価する通貨の損失を小さくするために、支払われた保険料は月内にすべて失業者等に給付するなり、教育訓練、育児休業などのための手当に支払いをする。

 

これまでの保険制度ではストックを貯めておき、それを使うという方法であるが、減価する通貨システムであると貯めておくことしないで、すべての保険料を使い切るのである。こうすると、いっさいの世代間や就労者の割合に関係なく支給が可能だ。

 

年金や医療の保険についても同様のことが言える。

 

今問題となっているのは、将来のさらなる少子高齢化のために、年金を払う人が減って年金をもらう人が増えること、医療を受けない健康な若者が減って治療を必要とする高齢者が増えること、などのアンバランスだ。

 

これを賦課方式で続けていくには、これまでの「貯めて置けるお金」のシステムを見直すことにより解決がなされる。

 

今回の法改正にはもちろん、そんなことは一言もない。当たり前だ。いまだに世の人々は既存の経済学の常識にとらわれているからで、そこを突破しなければ日本の未来はない。

 

これを政治家や官僚がいまだ理解しないうちは、当面のこの法改正には賛成しておく。これをしばらく続けていかないと、根本的な問題にいつまでも気づかないからだ。日本共産党とれいわ新選組は反対したが、彼らの主張はやはり同じ経済常識の上に考えられており、問題を根本から解決するものではない。

 

政府はいつもお金がないと言っては増税を目論む。国民はそれで仕方ないと思ってしまっているが、実はそうではない。常識を変えれば解決できることがある。

 

 

 

 

●法案の概要

1.雇用保険の適用拡大【雇用保険法、職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律】

○ 雇用保険の被保険者の要件のうち、週所定労働時間を「20時間以上」から「10時間以上」に変更し、適用対象を拡大する(※1)。

※1 これにより雇用保険の被保険者及び受給資格者となる者については、求職者支援制度の支援対象から除外しない。

 

2.教育訓練やリ・スキリング支援の充実【雇用保険法、特別会計に関する法律】

① 自己都合で退職した者が、雇用の安定・就職の促進に必要な職業に関する教育訓練等を自ら受けた場合には、給付制限をせず、雇用保険の基本手当を受給できるようにする(※2)。

※2 自己都合で退職した者については、給付制限期間を原則2か月としているが、1か月に短縮する(通達)。

② 教育訓練給付金について、訓練効果を高めるためのインセンティブ強化のため、雇用保険から支給される給付率を受講費用の最大70%から80%に引き上げる(※3)。

※3 教育訓練受講による賃金増加や資格取得等を要件とした追加給付(10%)を新たに創設する(省令)。

③ 自発的な能力開発のため、被保険者が在職中に教育訓練のための休暇を取得した場合に、その期間中の生活を支えるため、基本手当に相当する新たな給付金を創設する。

 

3.育児休業給付に係る安定的な財政運営の確保【雇用保険法、労働保険の保険料の徴収等に関する法律】

① 育児休業給付の国庫負担の引下げの暫定措置(※4)を廃止する。

※4 本来は給付費の1/8だが、暫定措置で1/80とされている。

② 育児休業給付の保険料率を引き上げつつ(0.4%→0.5%) 、保険財政の状況に応じて引き下げ(0.5%→0.4%)られるようにする(※5)。

※5 ①・②により、当面の保険料率は現行の0.4%に据え置きつつ、今後の保険財政の悪化に備えて、実際の料率は保険財政の状況に応じて弾力的に調整。

 

4.その他雇用保険制度の見直し【雇用保険法】

○ 教育訓練支援給付金の給付率の引下げ(基本手当の80%→60%)及びその暫定措置の令和8年度末までの継続、介護休業給付に係る国庫負担引下げ等の暫定措置の令和8年度末までの継続、就業促進手当の所要の見直し等を実施する。

 

施行期日

令和7年4月1日(ただし、 3①及び4の一部は公布日、2②は令和6年10月1日、 2③は令和7年10月1日、1は令和10年10月1日)