平成29年度水産関係予算概算要求(案)について
福島県の沿岸漁業及び底びき網漁業は、原発事故の影響により操業自粛を余儀なくされています。現在、販売されている漁獲物は福島県漁連が中心となり、放射性物質の検査を行っています。
このような中、福島県による3万8千件を超えるモニタリングの結果から安全が確認されている魚種もあります。
このような魚種に限定し、小規模な操業と販売を試験的に行い、出荷先での評価を調査して、福島県の漁業再開に向けた基礎情報を得るために「試験操業」を行っています。
平成28年9月1日現在で83種類を対象にしています。
福島第一原発事故によって海域に落下したり、直接流入したセシウムの9割以上は、拡散されたと推測されています。実際に、半径20km以外の海水中には、ほとんどセシウムは検出されません。しかし、残りの1割は、海底に溜まっている状態です。堆積物中のセシウムは、海底の砂や泥の鉱物の中や間に取り込まれ吸着されており、大きな撹乱・かき回しがなければ、福島県沿岸の海底にはセシウムが長い間存在し続けることになります。
これらの課題は「中長期的な福島の漁業プラン」が必要だということです。自ずと他の県とは違った水産業の「復興計画」が求められます。
この復興計画においては、海洋の除染が必要です。これまでに陸地の除染について様々な試みがなされてきていますが、海底は除染することができないというのが通説です。海中においては、分散していきますが、海底においてはセシウムがたまったままになってしまう。海底をかきまわす必要があります。
海洋研究開発機構や海底資源研究開発センターなどに研究の予算を計上させるべきと考えます。
https://www.jamstec.go.jp/shigen/j/exploration/
この根本的課題を解決しなければ、水産予算をどれだけつけても前に進みません。以下は来年度の水産関係予算。
1. 浜の担い手・地域活性化対策 73億1700万円
〔浜の活力再生プランを推進するための共同利用施設の整備、就業前の青年に対する資金、就業・定着促進や経営知識・技術の習得等のための研修等を支援〕
2. 資源管理・資源調査の強化 45億5400万円
〔漁業者の理解を得る適切な資源管理を推進するため、資源評価の精度向上、国際共同資源調査等に取り組むほか、漁場形成・海況予測に関する情報を提供〕
3. 漁業経営安定対策と漁業構造改革の推進 427億0900万円
〔共済・積立ぷらすを活用した収入安定対策、燃油や配合飼料の価格上昇に対するコスト対策を実施、高性能漁船の導入による収益性向上等を支援〕
4. 水産物の加工・流通・輸出対策 15億6500万円
〔HACCP認定の促進等を通じた輸出環境を整備するとともに、消費者ニーズや産地情報等の共有化、学校給食向け加工品の開発等を支援〕
5. 水産多面的機能の発揮対策と離島漁業の再生支援 43億0600万円
〔漁業者等が行う藻場・干潟の保全、国境水域の監視等の地域活動を支援するとともに、離島における漁業集落の再生活動を支援〕
6. 増養殖対策 15億6300万円
〔新たな栽培対象種の開発促進、さけ・ます種苗放流手法の改良、真珠養殖業等の連携強化、商業化に向けたウナギ種苗の大量生産システムの実証等を支援〕
7. 捕鯨対策 50億6200万円
〔調査捕鯨の安定的実施を図るための取組を支援、ICJ判決を踏まえた非致死的調査や妨害対策への対応、調査捕鯨に関する情報発信等〕
8. 外国漁船操業対策等 134億7800万円
〔我が国周辺海域における外国漁船の違法操業に適切に対応するため、漁業取締体制等を維持強化〕
9. 漁場環境保全・技術開発・普及推進 15億3200万円
〔トド等有害生物対策、赤潮・貧酸素水塊対策、水産業の省コスト・省力化や安全性向上等に資する新技術の実証、水産業改良普及事業等の実施〕
10. 水産基盤整備事業【公共】 839億8200万円
〔輸出拠点となる漁港の衛生管理対策や水産資源回復対策、漁業地域の地震・津波対策、漁港施設の長寿命化対策や漁港機能の集約化・有効活用を推進〕
11. 漁港海岸事業【公共】 8億4500万円
〔漁業地域における海岸保全施設の整備〕
12. 漁港関係等災害復旧事業【公共】 11億1300万円
〔地震や津波等の被害を受けた漁港、海岸等の災害復旧〕
●以下は、東日本大震災復興特別会計において、復興庁が下記の事業を要求しているものです。
▽水産業復興支援【非公共】
・漁船等復興対策 4億8500万円〔漁業協同組合等が行う漁船・漁具の復旧等〕
・養殖施設災害復旧事業 1億5100万円〔激甚災害法に基づく養殖施設の復旧〕
・水産業共同利用施設復旧整備事業 22億6100万円〔漁協等の水産業共同利用施設等整備に対する支援〕
・復興水産加工業等販路回復促進事業 15億0300万円〔水産加工業者等の販路回復等の取組に必要な加工機器の整備等に対する支援〕
・被災海域における種苗放流支援事業 7億7400万円〔他海域の種苗生産施設からの種苗導入等による放流種苗の確保等〕
・漁場復旧対策支援事業 9億2000万円〔漁場のがれき等の撤去〕
・水産関係資金無利子化事業及び水産関係公庫資金無担保・無保証人事業 30億1800万円 〔災害復旧・復興関係資金への利子助成、無担保・無保証人融資の推進〕
・漁協経営再建緊急支援事業 5億0100万円〔漁協等の経営再建のために借り入れる資金の実質無利子化〕
・漁業者等緊急保証対策事業 11億1600万円 〔無担保・無保証人融資を推進するための保証料助成等〕
・漁業復興担い手確保支援事業 2億0200万円〔他の漁船での新たな漁法や技術の習得等に対する支援等〕
・放射性物質影響調査推進事業 3億6200万円〔水産物の放射性物質検査〕
・海洋生態系の放射性物質挙動調査事業 1億8200万円 〔水生生物中の放射性物質の挙動とその要因の調査・分析〕
・福島県水産試験研究拠点整備事業 2億9300万円〔放射性物質関連の研究等に必要な施設整備等に対する支援〕
▽ 水産基盤整備事業【公共】 58億0300万円〔被災した拠点漁港の流通・防災機能の強化と地盤沈下対策等〕
▽ 漁港関係等災害復旧事業【公共】518億4800万円 〔地震や津波の被害を受けた漁港、海岸等の災害復旧〕
●東日本大震災と先月の台風10号豪雨で二重に被災した岩手県内の漁業施設などの復旧費について、震災被害の復旧が終わらない段階で台風被害を受けた場合、復興予算を充てる方針。
●昨日は福島県相馬市においては、相馬双葉漁協の拠点に競り場を兼ねた「原釜荷捌(さば)き施設」と、活魚などの鮮度を保つための「原釜海水浄化施設」の落成式が行われております。漁協の拠点は東日本大震災の津波で流失し、市が現地に新たな施設を再建。両施設で計約26億7千万円の事業費は全額を国費で充当することとなっています。
平成29年度 水産予算概算要求