TPP協定 物品市場アクセスその1 | 国政報告 おおさか佳巨 福島県[県中]の生活

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第190国会●条約第8号
環太平洋パートナーシップ協定の締結について承認を求めるの件【略称】TPP協定その1
【提出責任者】岸田文雄外務大臣

TPPについては、審議内容が多岐にわたるため衆議院では特別委員会が賛成多数により設置された。

意義については、TPPは、モノの関税だけでなく、サービス、投資の自由化を進め、さらには知的財産、電子商取引、国有企業の規律、環境など、幅広い分野で21世紀型のル
ールを構築するもの。

成長著しいアジア太平洋地域に大きなバリュー・チェーンを作り出すことにより、域内のヒト・モノ・資本・情報の往来が活発化し、この地域を世界で最も豊かな地域にすることに資する。としている。

まず、米について。

1 米:
(1) 米及び米粉等の国家貿易品目
①現行の国家貿易制度を維持するとともに、枠外税率(米の場合 341 円/kg)を維持。
②米国、豪州にSBS方式の国別枠を設定。

SBS方式とは、買い手と売り手の連名による売買同時契約である。

(2)米の調製品・加工品等(民間貿易品目)
一定の輸入がある米粉調製品等は関税を5~25%の削減とし、輸入量が少ない又は関税率が低い品目等は関税を削減・撤廃。

これについては、35道県が関税削減・撤廃に伴う地元の農林水産業への影響額を試算。
青森、福井、熊本の3県は政府が影響額ゼロと見積もったコメについて、地元産が輸入米との競合で減ると予測。3県合わせると減少額は年ベースで51.8億円に上った。3県の2013年生産実績と比べると約4%に当たる。地域特産品への影響を独自に算出する道県もあるとのこと。

米国、豪州に対して追加設定した輸入枠(13年目7.84万t)の米は、今後、主に外食産業で使われ、一部はスーパーの店頭に並ぶ可能性がある。政府は、この輸入枠設定が国内の米需給に影響を与えないようにするため政府備蓄米(現在100万t)の回転期間を5年から3年に短縮することにより対応するとしているが、その対策をとったとしても輸入米が国内の主食用米市場に出回ることの影響は無視できない。また、米粉調製品、米加工品の関税も撤廃・削減されるため、これらの輸入が増大して国内の米需給に影響を与えるであろう。

2 麦:
(1) 小麦
① 現行の国家貿易制度を維持するとともに、枠外税率(55 円/kg)を維持。
② 米国、豪州、カナダに国別枠を新設(計 19.2 万t(当初)→ 25.3 万t(7年目以降)・SBS方式)。
③ 既存のWTO枠内のマークアップ(政府が輸入する際に徴収している差益)を9年目までに 45%削減し、新設する国別枠内のマークアップも同じ水準に設定。国別枠内に限り、主要5銘柄以外の小麦を輸入する場合にはマークアップを9年目までに 50%削減した水準に設定。
④ 小麦製品については、小麦粉調製品等にTPP枠又は国別枠を新設(4.5 万t(当初)→ 6万t(6年目以降))し、国家貿易制度で運用している小麦製品は、引き続き全て国家貿易制度で運用。また、マカロニ・スパゲティは、関税を9年目までに 60%削減。

(2) 大麦
① 現行の国家貿易制度を維持するとともに、枠外税率(39 円/kg)を維持。
② TPP枠を新設(2.5 万t(当初)→ 6.5 万t(9年目以降)・SBS方式)。
③ 既存のWTO枠内のマークアップを9年目までに 45%削減し、新設するTPP枠内のマークアップも同じ水準に設定。
④ 麦芽については、現行の関税割当数量の範囲内において、米国、豪州、カナダの国別枠を設定(計 18.9 万t(当初)→ 20.1 万t(11 年目以降))。

小麦・大麦の輸入の際に政府が課しているマークアップを45%削減するため、その分、製粉会社等が政府から買い入れる輸入小麦の価格が低下し、それに連動して国産小麦・大麦の価格も下落する。また、国内対策の財源が減少するため、国内生産を維持するためには一般会計から新たな財源を確保する必要がある。さらに、小麦粉調製品・加工品の関税が撤廃・削減されるため、これらの輸入が増大し国内の小麦粉需要が減少することが見込まれる。

3 甘味資源作物:
(1) 砂糖
① 粗糖・精製糖等については、現行の糖価調整制度を維持した上で、以下を措置。
ア 高糖度(糖度 98.5 度以上 99.3 度未満)の精製用原料糖に限り、関税を無税とし、調整金を少額削減。
イ 新商品開発用の試験輸入に限定して、既存の枠組みを活用した無税・無調整金での輸入(粗糖・精製糖で 500 トン)を認める。
② 加糖調製品については、品目ごとにTPP枠を設定(計 6.2 万t(当初)→9.6 万t(品目ごとに6~11 年目以降))。
(2) でん粉
現行の糖価調整制度を維持した上で、以下を措置。
① 現行の関税割当数量の範囲内で、TPP枠を設定(7.5 千t)。
② TPP参加国からの現行輸入量が少量のでん粉等(コーンスターチ、ばれいしょでん粉等)については、国別枠を設定(計 2.7 千 t(当初)→3.6 千t(品目ごとに6~11 年目以降))。

高糖度粗糖の無税化は既に日豪EPAで合意したことであるが、調整金の削減によって輸入粗糖の価格が低くなる。また、加糖調製品、チョコレート、キャンディなどの関税も削減・撤廃されるため、これらの輸入が増大して日本の砂糖需要全体が減少する。でん粉については、一部の品目について関税が撤廃・削減されるものの、その影響は限定的であろう。

4 牛肉:
(1) 関税撤廃を回避し、セーフガード付きで関税を削減。
38.5%(現行)→ 27.5%(当初)→ 20%(10 年目)→ 9%(16 年目以降)
(2) セーフガード:
① 発動数量(年間):59 万t(当初)→ 69.6 万t(10 年目)→ 73.8 万t(16 年目)
(関税が 20%を切る 11 年目以降5年間は四半期毎の発動数量も設定。)
② セーフガード税率:38.5%(当初)→30%(4年目)→20%(11 年目)→ 18%(15 年目)
16 年目以降のセーフガード税率は、毎年1%ずつ削減(セーフガードが発動されれば次の年は削減されない)、4年間発動がなければ廃止。
家畜疾病により輸入が3年以上実質的に停止された場合には、実質的解禁の時点から最長5年間不適用(当該条項により、米国・カナダには最長 2018 年 1 月末月まで不適用)。

牛肉は、日米牛肉・オレンジ交渉の結果、91年より輸入自由化し、当初75%であった関税率はウルグアイラウンドによって現行の38.5%になった。TPPではこれが初年度に27.5%、16年目に9%に低下するため、輸入牛肉の価格が低下し輸入が増大することが見込まれる。特に、輸入牛肉と競合する乳雄、交雑種(F1)に対する影響が大きい。セーフガードが設けられたが、発動基準は現在の輸入量(14年52万t)に比べて高水準であり、また今後牛肉需要の大幅な増加が見込まれないことを考えるとセーフガードはほとんど機能しないと考えられる。また、牛肉価格が低下すると子牛価格が低下するため、子牛を供給している酪農の販売収入が減少し酪農経営を悪化させる。
 一方、近年日本の牛肉輸出が伸びており、TPPでは米国が日本からの牛肉輸入に無税枠(当初3000t、15年目6250t)を設定し、カナダ、メキシコが牛肉の関税を撤廃するため、日本からのこれらの国に対する牛肉輸出が増大する可能性がある。しかし、14年の牛肉輸出量は1400tで輸入量(52万t)の0.3%に過ぎず、牛肉輸出が関税削減による輸入増のマイナスを補うことにはならない。

5 豚肉:
(1) 差額関税制度を維持するとともに、分岐点価格(524 円/kg)を維持。
(2) 従量税は関税撤廃を回避。
従価税(現行 4.3%):2.2%(当初)→ 0%(10 年目以降)
従量税(現行 482 円/kg):125 円/kg(当初)→ 50 円/kg(10 年目以降)
(3) セーフガード:輸入急増に対し、従量税を 100-70 円/kg に、従価税を 4.0-2.2%
に、それぞれ戻すセーフガードを措置(11 年目まで)。

ウルグアイラウンドでは、輸入価格と基準価格の差額を税金として徴収する豚肉の「差額関税制度」が実質的に残ったが、現実の豚肉輸入では高級部位(ヒレ、ロース)と低級部位(ウデ、モモ等)を組み合わせて基準価格で輸入するコンビネーション輸入が一般的になっており、差額関税を払っている輸入業者はほとんどいない。TPPによって差額関税の適用範囲が狭まり従量税が大きく低下し、従価税(現在4.3%)も撤廃される。そのため、従量税を払っても低級部位を輸入する業者が出てくる可能性があり、また従価税の削減によって輸入豚肉の価格が低下する。また、ハム、ソーセージ、ベーコンの関税が撤廃されるため、これらの輸入が増大するであろう。

6 乳製品:
(1) 脱脂粉乳・バター
① 現行の国家貿易制度を維持するとともに、枠外税率(脱脂粉乳 21.3%+396 円/kg 等、バター29.8%+985 円/kg 等)を維持。
② TPP枠を設定(生乳換算)
脱脂粉乳 2 万 659t(当初) → 2 万 4102t(6 年目以降)
(製品 3,188t → 3,719tに相当)
バター 3 万 9341t(当初) → 4 万 5898t(6 年目以降)
(製品 3,188t → 3,719tに相当)
合計 6万t(当初) → 7万t(6 年目以降)
(2) ホエイ(乳清)
脱脂粉乳と競合する可能性が高いものについて、21 年目までの長期の関税撤廃期間の設定とセーフガードの措置。
バター、脱脂粉乳については、これまでの国家貿易、二次関税は維持されるものの、民間貿易枠が設けられるため、国内需給がひっ迫した際に機動的な輸入が行われる可能性はあるが、関税率引下げによって輸入が恒常化する懸念もある。また、ホエイの関税が撤廃されるため、一部競合する脱脂粉乳の需給に影響を与える可能性がある。さらに、一部のチーズの関税が削減・撤廃され、そのほか多くの乳製品の関税が削減・撤廃されるため、牛乳全体の需給に影響を与える。

7 5品目以外の農産物:
(1) 小豆及びいんげん豆については、枠内関税を撤廃するものの、枠外税率を維持。
こんにゃく及びパイナップル缶詰については、枠外税率を 15%削減。いずれも関税割当制度を維持。
(2) このほか、鶏肉、鶏卵、オレンジジュース、りんご等一部の品目について、11年目まで又はそれを超える関税撤廃期間を設定。
(3) また、競走馬、オレンジについて、セーフガードを措置。

オレンジの関税が撤廃されるため、オレンジの輸入増加、価格低下が見込まれる。温州みかんはオレンジとは完全に代替的ではないが、オレンジの消費量が増大すればみかんの購入量や価格にも影響を与え、ぽんかん、夏みかんなど他のかんきつ類にも影響を与えるであろう。

8 林産物:
(1) 輸入額又は近年の輸入額の伸びが大きいもの(マレーシア、NZ、カナダ、チリ及びベトナムからの合板並びにカナダからの製材)については、16 年目までの長期の関税撤廃期間の設定とセーフガードの措置。
(2) なお、違法に伐採された木材の貿易に対する規律についても合意。

以上の農協の意見に比べて、日本林業協会からの反発に激しいものをあまり感じない。「林産物の関税撤廃は、林業・木材産業に甚大な打撃を与え、山村地域の経済、雇用に大きな影響を及ぼし、地球温暖化防止を含め森林の公益的機能発揮にも支障を及ぼすため、最大限配慮するよう与野党や関係機関に対して要請活動を展開してきているところである。」と抽象的である。
我が国の林産物の関税は、これまで数次にわたる交渉等により引下げが行われ、現在は、丸太や製材品等で無税となっている一方、製材品の一部、合板、集成材等の関税率は3.9~10%となっている。

9 水産物:
(1) あじ・さばについては 12~16 年目までの長期の関税撤廃期間を、主要なまぐろ類、主要なさけ・ます類、ぶり、するめいか等については 11 年目までの関税撤廃期間を、それぞれ設定。
(2) 海藻類(のり、こんぶ等)については、関税を 15%削減。
(3) なお、現行の我が国の漁業補助金は、禁止補助金に該当せず、政策決定権を維持。

現在の水産の関税は3.5%~7%程度。日本の水産物はもともと輸出産業だったので、外から魚が入ってくることは想定しておらず、関税が低く設定されています。何百%という関税で守られている農業とは、そもそも現状が違う。

食の欧米化により、日本人は魚介類を食べなくなり、消費量がそもそも減っている。竹島の領有権をよく主張するのはそもそも漁獲権利の問題であったが、そういう人は魚をよく食べているのか。もはや感情のレベルになってしまっているが、もっと魚介類の消費量を増やすようにすべきである。

10 酒、たばこ及び塩:
(1) ボトルワインについては 8 年目、清酒、焼酎については 11 年目までの関税撤廃期間を設定。
(2) 紙巻たばこ(現在は、暫定税率で無税)については、協定税率として無税とする。葉巻たばこについては、11 年目までの関税撤廃期間を設定。
(3) 精製塩については、11 年目までの関税撤廃期間を設定。

日本ワイナリー協会では、家庭用・業務用の両業態とも低価格帯を中心としたワイン飲用の日常化が進み、好調。数量では、前年比で国産105%、輸入106%、合計では106%前後が見込まれ、6年連続の拡大局面となっている。国産ブドウ100%使用した「日本ワイン」は、多くの造り手が高いレベルで切磋琢磨する活発な市場になっており、様々な場面で国内外の関心が高まっており、輸入ワインについては、TPPやEPAの交渉結果によっては、伸長が期待されている。

日本酒造中央会では、清酒について、清酒の最大の輸出国である米国における清酒の関税が即時撤廃となっているなど、國酒の輸出に追い風となりうるものであり、本会は今回の交渉結果を歓迎している。我が国に輸入される清酒、焼酎の関税が10年間で段階的に撤廃されることになっていることについては、ギリギリの交渉を行っていただいた結果であると受け止めているとのことで反対風はない。

たばこについては、紙巻たばこの輸入関税は、1987年にすでに0%になっている。輸入されたたばこにはたばこ税がかけられているがこれは関税とは無関係であるため、TPP承認後もたばこ税はかけられる模様。

塩については、安い物が入ってきても国内で誰もが生産可能。