橋本龍太郎元首相の父橋本龍伍(りょうご)元厚相は、体が不自由だったことから、「政治は弱い人のためにある」を政治信条にしていました。この信条は龍太郎にも引き継がれ、厚生族としてのキャリアを政界で重ねて首相になりました。

   私の父も重度ではありませんが身体障碍者だったため、社会的弱者にも配慮した自由主義社会の実現、福祉国家、平和国家を創りたいという思いで政治家を志しました。

 

保守の良心

   橋本龍太郎元首相は、「政治は弱者のためにある」と良く語っていました。本州四国連絡橋児島・坂出ルート(通称:瀬戸大橋)が1988年4月全線開通しました。そして、同年5月本州から僅か200メートルの距離にありながら、ハンセン病への差別・誤解によって隔絶されていた長島が、全長185メートルの邑久(おく)長島大橋(人間回復の橋)が開通して本州と陸続きになりました。

   その時、橋本元首相は、テレビで「瀬戸大橋より邑久長島大橋ができたことの方がうれしい」と語っていたことが強く印象に残っています。その保守の良心、社会的弱者にも配慮した自由主義は、どこに行ってしまったのでしょうか。

   保守本流の特徴として、軍事より経済と国民生活の重視があります。世界で最も幸福度の高い国は、フィンランド(2020年)が1位で、デンマーク、スイスの順だと言われています。どの国も税金は高いけれど豊かで包摂的、格差や貧困が少なく公平な社会です。日本はというと62位です。

   今や貧困層は2000万人を超え、新しい階級社会が成立したとも言われます。かつての日本のように一億総中流と言われる公平な社会を創る。そのためには、豊かさと痛みを分かち合う必要があります。