私の地元船橋市に関係する県の大きな事業で、進捗していない計画が2か所あります。一つが小室地区を通過する県道189号千葉ニュータウン北環状線問題。今一つは海老川調節地の整備問題です。

ニュータウン北環状線

   小室地区も通過する県道189号千葉ニュータウン北環状線は、国道464号(松戸市から成田市に至る一般国道)と合流する印西市草深と白井市根を結ぶ一般県道です。国道464号のう回路になるとともに、ニュータウン地区住民の生活道路として期待されています。そのため私も地区住民から多数早期開通を要望されていますが、県の計画決定から55年以上、県の用地取得からも50年以上たった今も、白井市内の約450メートルの未着工区間があり全線開通の目途が立っていない状況です。

   問題の未着工区間は、平成3年に死去した元地主が、県企業庁に道路用地として土地を売却しながら、昭和50年代に同地に産業廃棄物を不法投棄したことに遡るとのこと。

 その後平成3年に、別の事業者が産廃物の上に事務所兼資材置き場を設置し、占有を開始。県は、県道用地の不法占有を行っていた事業者に対して再三不法占有物の撤去を求め一部コンテナ等は撤去されたが、平成24年工事開始時にも資材等の残存物があったことから、都市再生機構(UR)は事業者に2億2千万円の道路地及び残地物件移転補償を行いました。しかし、事業者は、道路工事が始まれば騒音や振動等が発生するとして、さらなる補償を県に求めており工事が再開できない状況です。

土地収用法とは

   憲法第29条は、「財産権は、これを侵してはならない」と規定し、私有財産制度を保障する一方で、「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる」と規定しています。
 国土交通省によると、この規定を受けて、「公共の利益の増進と私有財産との調整を図る」ことを目的として制定されたのが土地収用法で、土地などを収用または使用するための手続や損失補償の内容などが定められています。
 道路、河川、公園などの公共事業のために土地を取得する場合は、通常、起業者(事業を施行する者)が土地の所有者と話し合い、任意の契約を締結します。しかし、補償金額などで折り合いがつかないときや、土地の所有権について争いが生じているなど、話し合いによる任意で土地を取得することができない場合もあります。
 このような場合に、起業者が、土地収用法に基づく手続をとることにより、公共事業に必要な土地を取得することができる制度を土地収用制度といい、一般的に、土地収用制度を活用する場合は、一定の手続きを経て進めていくことになります。

 一方で近年、公共事業については、国民のコスト意識の高まりや経済活性化の観点から公共用地の早期取得も含め、事業効果の早期発現を図っていく必要があるとされます。

 

   本件は、県がすでに土地を取得しており、事業者は、道路工事が始まれば騒音や振動等が発生するとして、さらなる補償を県に求めており、土地収用法が直接適用される事案ではありません。土地収用法は、土地などを収用または使用するための手続や損失補償の内容などが定められていますが、それが一般的であるからであり、他を否定する趣旨ではありません。本件の保護法益は、事業者の土地所有権ではなく、道路工事が始まれば発生する騒音や振動等による損害賠償請求権に過ぎません。

 したがって、県としては、土地収用法の類推適用や、民法第1条3項権利乱用の禁止を活用して解決を図るべきと考えます。

 

   類推適用(るいすいてきよう)とは、法解釈技術の1つであり、ある事柄に関する規定の背後にある趣旨を別の事柄についても及ばせて新たな(明文のない)規範を発見ないし創造しそれを適用するものです。そのような趣旨のことを「類推の基礎」といい、そのための解釈技術を類推解釈(るいすいかいしゃく)というそうです。

 

  海老川調節地の整備も1973年の暫定計画から半世紀になるが用地取得率が95%を超えるも4%強の地権者が応じていません。近年地球温暖化等のため、世界各地で異常気象が発生し国内でも台風や線状降水帯の発生で豪雨による河川の氾濫等水害が多発しており、土地収用法を適用すべきと考えます。