5月20日ビジネスクラス旅費差額分請求住民訴訟において不当判決がなされたので、代理人弁護士の吉永満夫先生に声明文を作って頂きました。
原 告 西 尾 憲 一
(千葉県議会議員)
本日、千葉地裁民事3部(裁判長内野俊夫、裁判官吉川昌寛、裁判官高橋静子)は、原告西尾憲一、被告千葉県知事間のビジネスクラス旅費差額分返還請求住民訴訟事件について、原告の請求を棄却する旨の不当な判決をした。
1. 事案は、千葉県議会議員15名が、2020年1月20日から1月26日まで7日間、千葉県議会から、地方自治法100条13項に基づく議員派遣と称して、「2019年度千葉県議会アメリカ行政調査」事業として、アメリカのロサンゼルス2泊、サンフランシスコ3泊の出張に派遣され、その実態は自己研修旅行であるにも拘わらず往復ビジネスクラスを利用したことから、原告が、千葉県によるビジネスクラス差額分議員1人当たり78万0450円(その15名分は計1170万6750円)の旅費支出は違憲・違法であるとして、2020年7月31日、千葉地裁に対し、「千葉県知事は議員15人に対しその返還を請求せよ。」との住民訴訟を提起したというものである。
2. 原告が主張した違法の根拠は、次のとおりである。
(1) 憲法違反
本件支出は、議員に特権的待遇を認めた支出であり、「不平等な特権的待遇」を禁止する憲法14条に違反している。
(2) 裁量違反
旅費の支出は千葉県知事による裁量行為であるところ、本件支出は、次の事実から、議員にビジネスクラス差額分を支給しなければならない事情は皆無であり、その支給行為は社会観念(社会通念)上著しく妥当性を欠くものであるから、同差額分の支出は裁量権の範囲の逸脱・濫用となる。
3. 判決の要旨は、次の通りである。
(1) 憲法違反について
「相手方議員らが、旅費法34条1項イの「指定職の職務にあるものであって一般職の給与に関する法律6条1項11号に規定する指定職俸給表の適用を受けるもの」に相当とするとしたことが合理的でないということはできず」(18頁)、「不平等な特権的待遇」ではない。
(2) 裁量違反について
(ア) 上記2.(2)の①の事実について
「特定の議会の職務を議員に行わせることを予定していると解する根拠はなく、・・・・、地方自治法100条13項が想定する議員派遣ではないということはできない。」(18頁)
(イ) 上記2.(2)の②の事実について
判決は、裁量権行使の適否の判断において、この②の事実に触れていない。
(ウ) 上記2.(2)の③の事実について
判決は、裁量権行使の適否の判断において、この③の事実に触れていない。
(エ) 上記2.(2)の④の事実について
判決は、裁量権行使の適否の判断において、この④の事実に触れていない。
(オ) 上記2.(2)の⑤の事実について
判決は、裁量権行使の適否の判断において、この⑤の事実に触れていない。
4. 判決の判断の間違い
(1) 憲法違反について
そもそも、議員を「指定職相当」であるとした判断が間違っている。本件派遣議員に「指定職相当の日当」は支給されていない。
(2) 裁量権の範囲の逸脱・乱用について
(ア) 上記3.(2)の①の判断について
地方自治法100条13項が、議会の特定の職務を行うために派遣されることを想定していることは、法の定めである「議案の審査又は当該普通地方公共団体の事務に関する調査のためその他議会において必要があると認めるときは、会議規則の定めるところにより、議員を派遣することができる。」との定めから明らかである。「研修目的での議員の移動」は、「議員派遣」とはいわない。これは、日本語理解の常識である。
(イ) 上記3.(2)の③の判断について
上記のとおり、判決は、旅費支給の判断において重要な事実である②から⑤の事実を完全に黙殺している。
(ウ) 判決は、原告が提起した問題に対し真摯に向き合っておらず、裁判官の職務を果たしているとは到底いえない。
5. 以上のとおり、本件地裁判決は極めて不当な判決である。
ついては、原告は来週控訴する予定である。
以 上