今年も終戦の日の8月15日に、小泉進次郎環境相、萩生田光一文部科学相、井上信治科学技術担当相が靖国神社に参拝し、菅義偉首相は参拝を見送ったものの私費で玉串料を納めたとのことです。13日には西村康稔経済再生相と岸信夫防衛相も参拝しています。

   終戦の日の閣僚による参拝は2017年からしばらく途絶えていましたが、昨年小泉、萩生田両氏を含む安倍内閣の閣僚4人が参拝をしていました。

   靖国神社は他の一般神社と異なり軍国主義の精神的支柱となった国家神道の中心的施設であると言われ、太平洋戦争などの戦死者がまつられています。それだけでなく戦争当時の指導者で極東国際軍事裁判(東京裁判)で「A級戦犯」とされた14人が合祀されています。だから中国や韓国が首相や閣僚の参拝を問題視しているのです。

   日本の、朝鮮半島の植民地化と中国東北部への侵略は明らかな事実であり、ついには世界を相手にしたアジア・太平洋戦争に突入し、2000万人を超すアジアの人々と310万人以上の国民を犠牲にしました。

 ですから、遺族や一般の人々が犠牲者を悼むのは自然なことであるとしても、首相や閣僚など国家の政治指導者が参拝することは、それと異なり日本が戦前の悲惨な過去を反省することを忘れ歴史を正当化しようとしているのではないかと受け取られる意味を持つ重大なことなのです。

   2006年8月15日を前にして小泉純一郎元総理の靖国神社参拝を巡って国論が大きく二つに分かれたことがあります。読売新聞代表取締役・主筆の渡辺恒雄氏は、ある月刊雑誌の中で、「東京裁判の判決が絶対的正義だとは思わぬが、太平洋戦争の何百万という内外の犠牲者を出した責任、あの凶暴な陸軍の行動基準を推進した責任等を考えれば、公式参拝をすべきではない。」と発言。また、今年NHKのインタビュー番組で「A級戦犯がまつられている所に総理大臣が参拝する。これは国民に間違った歴史観を持たせる恐れがある。」と批判しています。私も同様に考える者の一人です。