昨年開講した大人語講座。様々な調整をしていたために

報告記事が書けませんでしたが、ようやくご報告です。

本講座は現役外大生向けの講座であり、

学生生活や自分の将来を充実させるために何をすべきか、

自らの力でそのアイデアを切り開くためにすべきことを

僅か半日という速攻で習得できる講座に仕立てています。

 

以下、会報記事より抜粋します。

文字数が限られているために限界はありますが、

参加学生だけの謎に包まれていた内容が少しだけ明らかになりますので

今後興味を持たれた方はご参加いただけますと幸いです!

 

 

2018年10月、多磨キャンパスにて「将来社会に出る外大生のための『大人語講座』」(通称:大人語講座)を開講しました。「やり残したことなど何も無い!」と言い切って卒業しても、社会に出た先輩達は全員「あの時『アレ』を学んでおけば良かった……」と悔いるものです。大人語講座はその「アレ」を学生達に習得していただく企画です。

 

「アレ」とは何か。多くの卒業生にヒアリングした結果や、昨今の社会情勢を鑑みていくつか例を挙げるなら「アレ」とは「論理的思考力」「創造力」「様々なバックグラウンドを持つ人達との協業力」等、まとめると「多様な人達と共に正解の無いところに答えをクリエイティブに創り出す技術」です。この技術は卒業後すぐに必要になる、大人なら当然のように日々駆使する言語のようなものなので、外大らしく「大人語」と名付けました。この大人語、学生に聞いてみると、誰かが研究したことを暗記していくような従来の高等教育だけでは習得できないことが分かってきました。従って、社会に出たての頃に大人語を使えなかったがために苦労してしまった大器晩成型の外大の先輩達から、大学では学び難い大人語を現役学生達に授けるという本企画は、外語会の極めて分かりやすい価値提供企画と言えます。

 

平成の会主導で講座内容を詰めていた頃、経団連が「就活ルール廃止」を発表しました。このニュースは講座内容を考える上で示唆に富んでいました。当時、就活ルール廃止は就活の長期化を意味するということで、全国の大学関係者は一様に「学問の妨げになる」と反対の立場でした。平成の会では経団連の発表を「就活の長期化」というネガティブな面だけで捉えず「大学での学びをより濃いものにする方法を考えよ」と教育会に一石を投じた意図があるものとポジティブに捉え、講座内容を詰めていきました。では、どう詰めたか?

 

就活ルール廃止をネガティブに捉える大学関係者は「大学での学び」と「社会と触れることによる学び」は両立でき、かつ双方に良い影響を与えるという事実を忘れているのではないか、と思い当たったのです。大学の外で様々な経験を積むことで、自分に足りていない学問が何なのかが明確になり、大学でのより充実した学びに繋がる。その学びを元に社会と触れることで、もっと充実した学びに昇華できる。この循環が機能するからこそ、社会人になっても皆、学ぶことをやめないし、むしろ学生時代よりも勉強するようになるし、学生の頃にもっと勉強しておけば良かったと後悔すら覚えるのではないか。「大学は学問の場であって職業訓練の場ではない」という主張は理解できる一方で「将来社会に出て活躍したい」と考える学生からの学費と、社会に出て「もっと学ぶことがあったはず」と後悔した卒業生からの寄附が大学経営のそこそこの割合を占めているのだとしたら「社会で活躍するための技術」を学生に授けるというのは必要なことだし、結果的に大学での学問も充実したものになるはず。そう考えることで、大人語講座の内容が詰めやすくなりました。

 

大人語講座初回のテーマは「5年後の未来と、外大生に求められるスキルとは?」としました。学生にとって身近なテーマながら、正解の無い問いです。学生5人程度のグループを複数作り、テーマについて皆で答えを出してもらうというのが初回の講座の大枠です。

 

議論の進め方としては、現時点の外大生の強み・弱みをチームで議論した上で、近い将来に世界で起こる環境変化の兆しを講義形式で講師からインプット。その後、最初に議論した強み・弱みが将来どう変化していく可能性があるのか、チームワーク中心のワークショップ形式で議論を進めていきました。1グループに1人ずつ、学生の将来の志望と近い働き方をしている若手卒業生がつき、学生に無い視点を与える役目を担いました。要所要所の講義では汎用性の高い論理的思考法、課題解決手法、マーケティングフレーム等を教授していきました。最終的には参加した一人一人の学生にとって将来必要になるスキルが明確になり、講座後の学生生活でそのスキルを習得するモチベーションを持ち帰ってもらえるような設計とした次第です。

 

参加した学生達のアンケート結果からすると、大学生活では知り得ない情報ばかりが得られて目ウロコの内容だったようで、この講座を他の学生にもお勧めしたいかどうかという設問に対して「お勧めしたい」と答えてくれた参加者はなんと100%(!)でした。

 

大人語講座の重要性は今後高まると感じています。就活ルールの議論が出てくるあたり、将来的には日本でも職務主義になっていく可能性は完全排除できないと思います。それはつまり新卒の学生達は自分よりもはるかに実務経験がある先輩達と同じ土俵で戦うという、理不尽な戦いを余儀なくされることを意味します。未だ存在していない職業に就く学生の方が多くなることが予想されているデータもありますし、戦いのルール自体も変わっていくでしょう。その環境下では、初めて経験する環境においても力を発揮する汎用性の高い、柔軟な課題解決力が重要性を増してくるはずです。

 

大人語講座は、まさにそういったスキルを学生のうちから習得できるように設計しています。ただし、大人語というのは技術(言語)である以上、理論と実践の両輪が必要であり、最終的にモノを言うのはやはり実践、もっと言えば場数です。講座では理論を教授した上で実践練習をする進め方ですが、重要なことはそこで得た大人語を大学での学びに積極的に活かし、真の実践を積むことです。大学での学問や大学生活というのはこの意味で非常に重要だということです。そのような意識を持って大学生活を過ごせば「良い思い出」とともに卒業するのではなく「良い経験を積んで」卒業することができるようになります。学生達によれば、普通に多磨で暮らしていると大人語の存在自体を知覚できないそうです。そんな学生達に、是非一度本講座の受講をお勧め致します。

 

外大の先輩達は大器晩成タイプだと書きました。卒業したての頃は子供だったものが、社会に揉まれて大人語が身についてきた頃に、時代が求めるグローバルの学識が相乗効果で発揮された結果、晩成するものだと読み解けます。「外大生×大人語=最強」ということです。今まで社会は外大生が大人になる時間、待っていてくれましたが、これから先の時代は正直わかりません。大器晩成という言葉は死語になり、敗者の弁になる可能性が高い。今よりずっと厳しい世界になっていくと思っていた方が身のためでしょう。

 

スキルとしての外国語は数年以内にAIに代替される可能性が極めて高いですが、外国語を学ぶ過程で得られる世界の人達の背景を理解する技術は貴重です。グローバルの学識を持つ外大生は、最強になれる可能性を秘めています。その力を、もっともっと伸ばす講座へ。さらなる充実を図ります。