hino×saku 「彼女が決意に至るまで」
朝、目が覚めて、太陽とご対面するのが、清々しいだなんて
まるで、自分じゃない見たい。
モニター画面にくぎ付けになって、太陽が西へ傾くころに起きる私にとっては、三時のおやつが朝食だったのに。
それもこれも彼女のせい。
それもこれも彼女のおかげ。
だから私は彼女が大好きだった。愛していて、恋していた。
朝・・・布団の中で、私が起きると、彼女の暖かさとにおいの中でまどろむ
それは、冷えた空気ほど心地よくなるのだから、私は冬が好きになった。
幸せってこういうのなんだ・・・なんて、そんなことを思い浮かべてにやにやしてもぞもぞして、その時の私はその逆を考えなかった。
朝、目が覚めて、太陽とご対面するのが、清々しいでなんて
まるで、彼女みたい。
そう、思った時
・・・涙が出た。
もう、私は私一人でわたしじゃなくなったんだ。
sakuraちゃんが私の一部になってしまった。
彼女がいて、わたしになったんだ。
わたしはもう、sakuraちゃんなしじゃわたしじゃないんだ。
だって、もう、わたしじゃないみたい。
sakuraちゃんがいないのに、sakuraちゃんのにおいもぬくもりも、
もう、お布団にないのに
それでも、朝が好きだなんて、やっぱり変だよぉ
ボロボロ泣いた。涙は止まらず、流れてよどまず、ぽつぽつ落ちる。
そのたび、彼女の残滓が残る布団の上に、・・・・水玉模様を描くのだ。
◆ ◆ ◆
彼女のいないお布団の中は、からっぽだった。
何もなくて、切なくて
ひどく、怖くて、泣きたくなるのだ。
もはや、彼女は半身なのだ。
彼女なしではわたしじゃないのだ。
sakuraちゃんなしじゃ、私、hinokiはダメなのだ。
それなのに、私は、彼女と出会う前の私には戻らなかった。
料理もしたし、洗濯もしたし、朝だって、ほら、ちゃんと起きれる。
私自身が彼女の残滓であるかのように、私はsakuraちゃんから貰った生活を繰り返し繰り返しトレースする。
そうすることで、彼女が帰ってくると信じていた。彼女とのつながりを確かめていた。
ここ最近そう気がついた。全然変じゃなかった。
ようするに、私は私の中のsakuraちゃんと一緒にいるから、昔の私に戻らないのだ。
そして、その上、私は、私の中のsakuraちゃんと一緒にいるから、sakuraちゃんが欲しくて欲しくて、辛くて、辛くて、切り裂かれるようなこんな思いでいるのだ。涙とため息と、ただの静寂とに埋もれそうになっているのだ。
◆ ◆ ◆
冬は終り、春が来る。
彼女と一緒に通うはずだった、大学にも、やはり彼女の影はない。
それでも、どこかで、彼女の影を眼で追う自分がいた。
ふと、駅のホームにいるような気がして
家に帰れば、私を迎えてくれるような気がして
朝食を食べながら、テーブルの向こうに・・・・彼女がいるような気がしてたんだ。
大学生活はつつがない。
というより、やる事がない。
私は、ひたすら、彼女がいればそう過ごしたであろう経過をたどり続けた。
そうこうして、春は終りに近づき、桜が散る事に
ようやく私は、sakuraちゃんは、帰ってこないと気付いてしまった朝。
涙は、枯れて出なくなった
◆ ◆ ◆
どうして、彼女はどこかに行ってしまったのだろう。
私を残して行ってしまったのだろう。
何も言わずに消えたのだろう。
私が悪かったのか?
そうだそうに違いない。
私は彼女の何も理解してなかった。
彼女はあんなにも私にすべてをくれたのに、
私からは何もあげれてなかったのだから、
彼女が憤慨するのも当然だ。
だから、自業自得というか、自爆に等しい事だった。
◆ ◆ ◆
彼女は帰ってこない、でも、そしたら、私に残ったのは彼女の残滓だけ?
それも、いつまでもつの?
時が彼女の影をどんどん消していく!こわい!こわい!こわいっ!!
ダメダメダメ!ダメだっ!今すぐ彼女を探さなきゃ!sakuraちゃんを探さなきゃ!
あってあやまらないと!そして、大好きだって何度も言うの!愛してるって何度も言うの!何度だって確かめ合うのっ!
◆ ◆ ◆
彼女の実家をようやくみつけた。
羽白家は、黒かった。
というより、・・・・・・煤だった。
彼女のいなくなったあの日から、ずっと、煤だった。
「おう、ぬしぬし、そこのぬし」
突然声をかけられ振り返る。
が、誰もいない。
「違う主、下じゃ下。おぬし、よほど自分より大きい奴しか相手にしとらんのか?振り返ると同時に、見上げる人間なんぞ初めて見たぞ」
と、声のもとをたどって、見降ろすと、金髪の子供がいた。赤い赤い眼をした子供だ・・・・・・が。
「アニメのコスプレ?」
なんかファンタジーもののアニメに出てきそうな巨大な肩当てを身にまとい、マントにくるまった、二次元世界の住人がそこにはいた。
「ふむ、「アニメのコスプレ?」のう?あれじゃろ?わしもフランスのジャパンフェスタで見た事があるぞ?所謂仮装行列の類であろ?」
コスプレイヤーの皆様に謝れクソガキと言いそうになったが、それは子供に対してあまりに狭量なので、とりあえず相手にせずに立ち去ろうとする。
「いや、待て、ぬし?羽白という苗字は知らんかの?」
「え?」
「羽白じゃ、羽白。珍しい苗字じゃから心当たりくらいあるじゃろ?」
私は、ただただ呆然とするばかりで、「あ、・・・ええと、その」と繰り返した。
相手の子供は、うぬ?っとつぶやいて、こちらの返答を待っている。
私はそれに何とかこたえようと、ただ、最早、炭になった、羽白家の残骸を指差した。
「おお、これはこれは。見事見事。よく燃えたのぉ?あれか?誘導魔法か?ふむふむ、確かに、これは羽白家。なるほどなるほど、これは全く燃えてはおらぬ」
も・・・燃えてない?
「ああ、主、主も『わしが見えて』羽白の関係者であるのだから、魔法使いのなのじゃろう?ほれ、家一棟建てる故、手伝え。」
「あ、あの・・・・」まったく異っている意味がわからない。
「それとも、主、この業界で、本当に魔王のわしを知らぬわけじゃあるまいの?」
知らない、知らない、まったく知らない。
まったく知らない世界への扉が、この時開いた。