第二章 多重存在 お前は俺 ―小説
「王国、そりゃ結構じゃね?なぁ、罪罰ユダ」
闇の向こうよりその声は木霊した。
ぞくっとする。
背筋に冷たいものが走った。
奇妙な感覚。
同調だろうか、俺と同じ奴がそこにいる。
うまく言えないがそれだ。
そいつは黒いローブにすっぽり身を包んでいた。
不気味に、歪に微笑む口元だけが奴の表情表わしている。
まるで闇に溶けていたかのように突然に、それでいて、ゆっくり、ひたひたと・・・・それはこちらに向かって歩いてきた。
「よう、罪罰ユダ。藍染愛染(あいぞめあいぜん)・・・それが俺の名前だよ。
ああ、そっちから名乗る必要はねぇよ。
俺、お前のことなら何だって知ってッからな。」
「ストーカーかよ、ぞっとしねぇな」
「それ以上だよ。『セルゲイ・レールモントフ』。それとも、ウィル―」
「その名で俺を呼ぶんじゃねぇ!」
ふざけるな!だらだらだらだらと、何がいいてぇ!不愉快だ!
「そう怒るな。」
奴は、そういって俺を制すると、何やら云々とうなずいてにやりと笑う。
「だよなぁ~、お前とあいつは別人だよ。それすらちゃ~んと理解してんだぜ?」
こいつ・・・どこまで。
「そうかよ、お前が、『桃色血走り』が言っていた『愛染さん』か。どうやら、うわさ通りのサディストみたいだな。」
もう、理屈はいらねぇ。
本能的に解る。
こいつがすべての元凶だ!
「サディスト?当たり前だろ?俺はお前なんだぜ?」
「わけわかんねぇこといってんじゃねぇよッ!」
俺は、その手に殺意を込めて疾走した!
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参加中第二章 多重存在 2-19 地下世界 ―小説
感覚がささやく、ここは地上ではない。地下だ。
より、地球の歪みの中心に近い。
それは当然の感覚だ。
重力を操る上で一つどうしても、他の人間にはない新しい感覚が必要となる。
五感、直観を加えるなら六感、それに加えることもう一つ。
それは重力の歪みを感じ取る能力。
例えば、今来ている服。俺にはこの服の持つ質量から生まれる歪みをある程度感じ取れる。当然些細なものだし、それが現実に俺に作用するかと言えばしないだろう。
では役に立たない感覚かと言うとそうでもない。
あの時破壊されたモノレールほどのものになれば、はっきり歪みの大きさから全体の重量まではっきり分かる。
そこから生まれる破壊力も、当然、それに対してどれくらいの歪みを発生させれば、あれを浮かすことが出来るかも、だから、当然のようにあの時、あの一瞬で俺はモノレールを止めることができたし、当然のように『モノレール以外のものを浮かすこともなかった』。
これは、割合すごいことだ。
指定された物体という局地的空間内の重力操作を可能にするなんてことは、普通はできない。
仮に、重力を操れる人間がいたとして、そいつに俺のような感覚が備わっていなければ、そいつはモノレールと同時に自分をも浮かせ、その上、空中で滑稽にもあたふたじたばたしているに違いない。
そして、もう一つ有利な点は、―
「ここより下に何かあるな・・・大きい、何か」
目で見えなくても、ある程度の距離ならば、質量体を感じ取れる。
「いってみるか・・・・」
ひろい・・・ひろい・・・・
そして冷たい空間。だが、寒くはない。
大阪には巨大な地下空間が存在する。あらゆるショッピングセンターや駅が地下でつながっているので、雨の日だって移動しやすい。
しかし、その地下空間よりさらに下に、この大阪が抱えるより大きな地下空間が存在する。
そんなものが噂としてあるかどうかはしらねぇが、いかにもありがちなマンガのネタだ。
「舞台は大方、東京ってのが普通なんだろうがな」
どうでもいい話だけど、こうなって来るとどうでもよくないな・・・・。
俺が、そのエレベーターのUGというボタンに血の紋をつけたのは5分分ほど前のことだ。
エレベーターの制限人数は5人と言うことらしいので、『死体』を入れてギリギリだろう。
『死体』当然、ここの人間だ。そうだな『警備兵』だったんだろう。
四人・・エレベーターの前に2人・・・実に悪質な冗談だと思ったものだ。
全員、銃を装備していた。まぁ、ヤクザだって銃を持ってるしエアガンくらいだって殺傷するには十分だから日本で銃を見ることなんてことは日常的にあり得るかもしれねぇ。
けどよ。
日本の警察が優秀だといった奴は出て来い。
お前たちの言う銃刀法違反は、よりにもよってMk46Mod1なんてアメリカ軍採用式の機関銃ミニミの派生形なんて激悪なもんをこの日本に持ち込ますのか。
おかげで本当に死にかけた。一瞬の判断で重力場を展開していなかったら確実に死んでいた。
「たく・・・」
いよいよ、事態が大きくなってきた。
話は戻るが、そんな冗談めいた地下世界につづく、軍用軽機関銃を持つ兵士に守られていたエレベーターは五分前から目的地に達してはいない。
いっそのことこのエレベーターの速度が異常に遅いことを祈るがそれはないだろう。
おれは相当深いところまで来ている。
重力感覚がそれを告げる。
そして目的地の巨大さも・・・・。
―チン
案外軽い音と共に、ゆっくりと扉がひたいた。
そこは、けして太陽の当たらぬ場所。
「何だ・・・コレ」
そこは幻想的な空間だったのだろう。それは間違いがない。
そこは地上と言う空に覆われた一つの世界だった。
洞窟・・・ではない。地下世界と呼ぶにふさわしい。
エレベーターから降りた俺が『見下ろした』景色の向こうには地平線があったのだ。
最初は壁だと思った。土気色のそれは地上と言う天井の延長。
そこに植えられた、大量の水槽。
それが文字通り・・果てまで続いている。
目を凝らせば巨大な塔のようなものが天井に突き刺さっている。
おそらく、あれはエレベーター。ならばここもその一つなのだろう。
エレベーターを降りたら、すぐそこには下りの階段、学校の非常階段のような簡素なつくり、ただ高さはもっとあるだろう。せいぜい学校の校舎なんてよくて四階建てだしな。
俺はその階段をゆっくりと降りていく。
一定の間隔で響く金属音。足音は、甲高く世界に響く。
下に行けばいくほど分かる。
冷たい・・・だが、寒くはない。
ひやりと、空気が頬をなでる。風などないはずのその土地でただ一人大気を振るわし続ける。
はぁ・・・
吐く息が白くなってきた。
それと同時に、階段が終わりを告げる。
水槽。
巨大な水槽。
その中に・・・人間が浮遊している。
一列に、どこまでも・・・・。
水水水水水水水水水水
人人人人人人人人人人
槽槽槽槽槽槽槽槽槽槽
水 水 水 水 水 水 水 水 水 水
人 人 人 人 人 人 人 人 人 人
槽 槽 槽 槽 槽 槽 槽 槽 槽 槽
水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水水
人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人人
槽槽槽槽槽槽槽槽槽槽槽槽槽槽槽槽槽槽槽槽槽槽槽槽槽槽槽槽槽槽槽槽
永遠と続く。
きっと、この景色の向こうにも延々と続くだろう。
目の前にある真実は告げていた。
ドッペルゲンガー。
二重存在。
霊的な存在。
魔法使い。
はん、とんだ勘違いだ。
ドッペルゲンガ―?
そんな低俗な霊が、自由意志を持って他人の振りなどできるはずはない。
二重存在?
二重どころの騒ぎじゃない。
霊的存在?
そもそも普通に殺されてんじゃねぇかよ、吉野巫女。
魔法使い?
へっ、これは明らかなる『科学使い』の住み家だ。
人、人、人
この一列の水槽全て同じ人間じゃねえか!
同じ顔した人間がぷかぷかぷかぷかぷか、なんてばかげた数だ。
こんなもん、調べるまでもねぇだろ。一目瞭然だ。
「クローン人間・・・」
バイオメトリクスのその最たるもんはDNAだもんな、当然ちゃあ当然か?
法律で禁止されているものをこうも簡単にやってのけるんだ。
もはや一企業の謀とも思えねぇ・・・この計画。
警察だってきっと上の方でグルだ。
と、なれば・・・・。
「やっぱ、ありやがった。」
クローン人間、吉野巫女シリーズ。
全員、全裸。
うし!・・いやいや。
だが、これではっきりしたろ。
どう言う理由かはわからないが、
あの時、体育館倉庫で殺されていた吉野巫女・・・
おそらくクローン体。
クローン人間とはいえ、記憶も何もかも後天的に獲得した物事に関しては、本人とは全く別人なのだ。
当然、本人になり済ますことなんてできない。
おおかた実地の生活試験の過程でへまをこいて処理せざるおえなかったんだろう。
しかし・・・・。
俺は改めて、周りの広さを確認した。
「・・・この数、クローン人間だけの国家でも作ろうってのか?」
実験サンプルにしては、『保存している量が多すぎる』。
「王国、そりゃ結構じゃね?なぁ、罪罰ユダ」
闇の向こうよりその声は木霊した。