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挿絵 京都大階段



挿絵


京都大階段で初めて弓端と深戒が出会った時
の挿絵

この時、深戒は一切弓端さんの話を聞いておらず、
頭の中は甘いものでいっぱいになってるのに、
顔は超シリアス

座談会でも述べたんですが
基本的に深戒は
外見とのギャップが激しいキャラなんで、
この絵はそれがはっきり出ていい感じです
N,T氏

ありがとう!

第三章 幸福在処 3-13 帰る場所 ―小説

電気を消して、真っ暗になった部屋で私はベットの中に、流さんはお布団の中に潜り込みます。
「今日は寒いですねぇ・・」
「ああ、でも、今日は話し相手がいる。なぁ、小羽?」
「はい・・・」
「ありがとう。」
「はい・・」
わたしは、布団の中で呟くように言いました。
わたしは、わたしは、あのお風呂場からなぜかずっと涙が止まらなかったのです。
本当は、なんで涙が止まらないかわかっているのに・・その時の私はずっと考えないようにしていました。
「流さん、起きてますか?」
「ああ、起きてる。」
「私はこの窓から見える町と海と星が大好きです。」
「なんだ?突然だな」
私は布団の中から顔を出して目の前の窓から見える夜景を眺めます。
流さんも、もそっと布団をかぶりながらお身を起こし、それを見ました。
不思議な光景。
地上の空の両方に星がきらきら光って、海がその境界を作っています。
闇の中に浮かぶ、二面の相対する世界。
私たちがいるのはどちらの世界でしょうか?
私たちは、どちらの光に誘われているのでしょうか?
「私はこの街が好きです。この窓だから見えている光景、その中に暮らしている人たちが好きです。お父さんが好きです。お母さんが好きです。学校のお友達が好きです。もちろん流さんも好きです・・・・けど」
けど?その時出た言葉は生まれた時からずっと思っていた言葉。


「わたしは、時々どこかに帰りたくなります。」


「小羽の家はここであろ?」
「そうなんです・・・そうなんですよね。」
そうです。
私にはここ以外に帰る場所はないし、ここに帰ってこれるんです。
けれど、ありもしない望郷の念は・・・毎日この両面の星の海を眺めて行くと高まって行きます。
「俺だって・・・・」
突然に、流さんは呟きます。
「俺だって帰りたいよ・・・小羽。」
「はい・・・」
「帰りたいよ、本当は帰りたいよ。小羽。こはねこはねこはね・・・なんで、俺こんなこと、お主に話してるんだろう?わからぬよ、小羽。お主はやっぱり変なやつだ。変なやつすぎて、どうしてであろ?お前とはあったばかりなのに、俺、おれ、ぽろぽろ言葉が落ちてくるぞ・・・・悲しいよ、小羽、帰りたいよ、帰りたいよ、小羽。家に帰りたいよ。」
流さんが、言葉と同時にぽろぽろ涙を流します。
そうですよ・・・、あまりの大人びた佇まいに忘れがちですが、流さんは、本来、小学一年生です。
そんな小さな子供が、親から捨てられて、閉じ込められて、一体幾つの夜を過ごしたのでしょう。
泣かない、泣かない、泣かない
なんて・・・つよいひと・・・
そんなわけ・・・ないのに・・・・。
「流さん、こっちに来てください。」
流さんは、ゆっくりと立ち上がって、私のベッドに近づいてきます。
わたしは、ゆっくりと身を起こし、ベッドの上に座って彼を待ちます。
流さんはベッドの上に乗って、私の前に座ると、俯いて、数瞬迷ってから、体を預けてきました。
わたしは、流さんを抱きとめて言います。
「つらかったですね。」
「うん」
「帰りたいですね。」
「うん」
だから・・・
私は、流さんの手をとります、ぎゅっと・・・握って。
そっと、その手を抱きます。
握った掌は暖かった。
その温かみが、逆に切ない・・・・。
このぬくもりを・・・流さんのお父さんとお母さんは捨てた。
本当に、そんな事が出来るだろうか?
こんなに気丈で
こんなに清楚で
こんなに弱くて
こんなに優しい
そんな温もりを・・・本当に、自分から手放せるだろうか。
「流さん、帰りましょう」

あいやー