ここの小説について
僕は、以前から小説を書いていて、そのたびに文字の力のすごさとか、小説が与えてくれる啓発能力というものをすごく感じていて
ゆえに、小説が小説としての形を保てる形態は化の程度ではない!
とか
これだけの多くのメディアがある中、小説をこのネットで流すのであれば、その機能を最大限に使用したい!
とか、
アマチュア作品で、さらに無料で気軽に読めるということの素晴らしさをこのネットという環境でつたえるには?
あるいは
ネットでしか使えない小説ってなによ!?
と、
常々考えていました。
その上でネットの特性として
せっかくブログの機能で、他のクリエイターさんと交流ができたり、内のメンバーとの小説とリンクできたりするのであればそれを使わない手はない。
ネットというデジタル機器は、小説以外の作品の表現方法(アニメーションや、SE)を簡単に取り込める。
この二点を「まず」取り込んだ小説を描くことを決めました。
そこで、最初の企画
香港幻想
という作品制作が始まりました。
香港幻想は、読んでいくとわかりますが、話を進めていくと分岐点があり
選択肢を選んでもらうことで、幾通りもの物語展開を可能とするものにしました。
ようするに、マルチエンディング型のストーリー
一般的にサウンドノベルでやっていることと同じですね
ブログのリンク機能を使い、ストーリーの大きな変更点に来ると
そこで、その著者のブログに飛ぶことができるので、個人のブログとしてもやりがいが出るし、
そのブログのスキンデザインなどの雰囲気を楽しんだまま読めるというのはいい点だったと思います。
もちろん、未完なので、真に評価できるのは後になってのことでしょうが
もし、この機能が受け入れられるのであれば、メンバー外からの小説書きさんとのコラボや、企画運営も楽しめるのではないかと考えており、結構将来性がある
新しいネット小説の形なんじゃないかと思います。
もちろん欠点もあって、マルチエンディング型のストーリーなので
目次をどういう形式で作ればいいのか非常に頭を悩ましてもいるのですが・・・・。
おかげで、最初から読みなおす羽目になる。この点はいずれ改良しようと思います。
もう一つは、月猫@HOMEですが
これは、小説の挿絵という形を一歩進まして作っています。
つまり、「挿しムービー」
絵だけでなく、アニメーションや、動画を用いるという
たの表現媒体をつかってさらに小説に色をつけようというものです。
これはネットだからこそできることだと思っています。
紙媒体で動画をつけようと思うと、DVDで別個のものをつけることになって、結局小説とは別々で見ることになるのでできないし、それをネットのように共有してみることもできません。
これも新しいネット小説の形として作っていけたらいいなぁと思っています。
やっていることは、サウンドノベルという形式のゲームをネットという場所に持ち込んだだけなのかもしれませんが、現在進行形でアップできることや、融通のきき方に新たな可能性があるのではないでしょうか?
こうして、新しいネット小説のあり方を模索しつつ
拙いながらも
自分たちのできる限りで、高品質なものを上げていければいいなぁと思います。
そして、できればもっと多くの人に、小説という劇場の中で繰り広げられる
言葉の力というものを
共有してもらったり
また新しい概念を啓発したり、されたりしながら
脳みそぐりぐり開発して行こうと思います。
きっと広いネットの世界では、すでに挿しムービー小説は既出なのでしょうが
一応、このブログでは、この形式を
「ビジュアルネットノベルス」(VNN)と
名乗らせていただきます。
これからもどうぞよろしくお願いします。
月猫@HOME 第壱話 「天来月猫」
黒い月が巨大な赤い眼を出現させる―八ヵ月前。
運命は動き出していた。
第一話 「天来月猫」
◆ ◆ ◆
拝啓 みーちゃんへ
以前にもお話しした通り、私は日系ブラジル・・・え~と、何世だったかな?ひぃじいちゃんの時だから4世になります。
今は、おじぃちゃんに日本語を教えてもらって、勉強しています。
この手紙が、ちゃんと意味の通じるような内容になっているかどうか、心配です。
えへへ。
さて、南半球でも南極に近いこっちは、今過ごしやすい季節です。しばらくすると寒い季節がきます。日本とは逆ですね。
ああ、そうそう、それでね。
みーちゃんからのプレゼント届きました。
みーちゃんの昔使っていた服ありがとう。これからの季節、コートとか、本当に助かります。
クマさんのプリントされた下着も気に入りました。
とってもかわいいです。
あと、来週の今頃、また、アルゼンチンの方へ引っ越すことになりそうです。
あたらしい住所と連絡先を送ります。
またね、またね。
ミココ・マタギより。
かしこかしこ
◆ ◆ ◆
四月九日 日本国南西部宮城県にて
―こうして、机の前でシャーペンを咥えながら呆けるだけの時間をもう三十分も過ごしている。
左の人差し指は、電報でも打つかのようにトントンと、一定のリズムを刻んでいる。
目の前の枠が三つ並んだだけの紙をずっと眺めてたって…
自分がなりたいものが見つかるわけないって、本当はわかっていたけど…―
どこか、浮世離れした物憂げな眼をした少年は、頭を悩ませていた。部類としては美少年に入るだろう―イケメンと言い換えてもいいかもしれない。
メガネをかけているが、この少年の場合は目が悪いというわけではない。そのアイスブルーに光る瞳に曇りがないのと同じく、彼は目が良すぎるようだ。わざと、視力を落として近くのものを見ている・・・その目線の先。
春休み前に渡された進路希望調査表。ご丁寧に第三希望まで設置された質問項目はものの見事に真っ白だった。明日までに提出しないといけないその書類はあたかも人生の分岐点のように少年には感じられた。
本当は、ただ三年生になったとき、理系のクラスになるか文系のクラスになるかをきいているだけなのだから、適当なことを書いていればいい。
そんなことは、わかっているはずなのに、いざ―
『あなたの夢は何ですか?』
―と、聞かれると戸惑ってしまう。
だって、そんなのは無理だって本当は分かっているのだから。
そう思うと、この枠の中には何を書けばいいのだろう?
決してかなえられない夢を書き込めばいいのだろうか?
それは、本当に夢と言えるのだろうか?
それとも、かなえられる範囲での、望みもしないものを書き込めばいいのだろうか?
それも、本当に夢と言えるのだろうか?
そんなの、どっちも夢じゃないだろ…。
(だったら、僕には夢という存在自体がないじゃないか…。
きっと、夢はかなえられる範囲に夢を持ってるやつだけの前に現れるんだ…それでも…。)
―少年は、宇宙飛行士になりたかった―
単純に星を見るのが好きだったからだ。
でも、子供のころになるのを諦めてしまった。
―僕には到底なれない―
宇宙飛行士になるには、理系の大学を卒業し、自然科学系の研究・設計・開発などに3年以上の実務経験を経て、身体的、精神的に健康であることは当然として、英語ができて、社交性があることが、最低条件。
そこから、公募に対して書類選考と英語検定を受け、それに合格すると、次に一次審査が待っている。
一次審査では、一時医学検査、一般教養試験、基礎的専門試験、心理適性検査をそれぞれクリアし、それに合格すると、今度は二次審査。
二次審査で、二時医学検査と、心理面接検査、英語面接検査、専門面接検査、一般面接検査をクリアする。それでも、まだ宇宙飛行士にはなれない。
そこからさらに、ヒューストンでの長期滞在適性検査と面接試験があり、晴れた宇宙飛行士の『訓練生』になれるのだ。この時点で、300倍から1000倍の高倍率の試験をハイレベルな中で勝ち取らなければならない。(きっと、その中には輝樹みたいなやつがたくさんいるのだろう…だったら、勝てるはずねぇよ―勘弁してくれ。)
当然、訓練生になってからは、訓練が続き、そこから、宇宙飛行士に選ばれるかは運もある。
その時点で。少年の心は折れた。―オワタオワタ。ハイハイ、ワロスワロス―
思い返してみて、改めてこの進路希望調査が馬鹿馬鹿しく思えてきた。
やっぱり、こんなものなんとでも書ける。
儚いな・・・人の夢と書いて本当に儚い・・・
―そんな虚しさを紛らわせるために夜空を見た。
夜空には月が浮かんでいる・・・ふわふわと雲の上を能天気浮かぶ月、そんな月の中に突如として瞬く光を見つけた。
最初は飛行機かとも思ったが違う。
「静止流星!?」
レアものだ・・・窓から身を乗り出して、よく観察する。
静止流星とは正面から見る流星のことで、普通の流星とは異なり、徐々に大きくなって消えるだけのものをさす。
でも、すぐに奇妙な事に気がついた。
月にかぶさるようにして、静止流星が見える―ということは、月と地球との間に、流星があるということである。
それを正面から見ているということは…。
あれは、月から来たということだろうか?
落下地点は不明だが、たとえ、月の石だとしても大気圏で燃え尽きてしまうに違いない。
うう、儚い・・・もったいないなぁレアものなのに・・・、まぁ、燃え尽きず地球に落ちて被害が出るより百倍ましだろうけど。
瞬間、光が瞬いた、雷かとも思ったが、空は晴れたままだ。
「え?」
流星が、方向を変えていた。少年の真上を飛んでいく・・・少年は見たことも聞いたこともない現象に目を丸くした。
「こんなこともあるんだなぁ…」
そうおもって、空を見つめ続けていると、ふわふわと落ちてくるものがあった。雪のようなそれは光っている。少年は気になって、裏庭に出た。
裏庭に出ると、その光はゆっくりゆっくりと、こちらに落ちてくる。
まさかとは思うけど…、そう思って手を伸ばすと、光はすっぽりと、少年の手の中におさまった。
(熱くない…)
掌を開いてみてみると、そこにはピンポン玉程の大きさの立方体。
(うげ、なんて厨二病的展開・・・そこまで望んでねぇよ)
少年は冷静に突っ込む。現代社会の高校生はリアリストなのだ―少年の持論だが。
とにかく、観察。
手に入れた謎の物体Xは堅くも柔らかくもない、大気圏を突破してきたにもかかわらず、熱くもない。だからと言って、特別冷たくもないのだが。
さて、これをどうしようか?
と、考えるがどうにも思いつかない。
仮に、この謎の物体X―仮名:マサキニウム(早速名前をつけてみた)を、国内国外に問わず発表したところで、地球人類はそれを信じるだろうか?
(ありえねぇな…)
とりあえず、大学に入った時の研究テーマに持っておこうか?
というところで結果は落ち着き、部屋に戻って謎の物体X―正式名称:マサキニウムを無造作に机に放り込み。
例の無意味極まりない進路希望調査にシャーペンを走らせて、ちゃちゃっと電気を消してその日は寝ることにした。
―第一志望 宇宙飛行士 以上! ―
進学科二年A組浅茅正樹(あそう まさき)。
◆ ◆ ◆
次の日の朝、正樹は、いつも通り朝5時に起き、いそいそと学生服に着替えて、家族の朝ごはんを用意する。
母が死んでからというもの、こればっかりは自分の役割であると自負している。
とりあえず、ご飯は昨日焚いておいたので、味噌汁を作っておいて、昨日の酢の物の残りと一緒に、鮭でも焼けばOKだろう。
(ああ、そうだ。輝樹は昨日しのぎの帰りだから、食欲旺盛だろう。よし、卵焼きも追加だ。)
ちゃちゃっと手際よく、朝ごはんを作り終えると、バッグを持って走り出した。自身の朝食は、効率を重視してカロリーメイトだ。個人的にチョコレート味がお勧め。
今日は、始業式なので昼飯の準備は必要ない。
「さてと・・・」
こうして陸上部の朝練に出るのが、正樹の朝の風景だ。
だが、そうした日常的風景の中に異常事態がすでに発生していたのだ。
◆ ◆ ◆
始業式が終わって、先生が春休み中の宿題やら、プリントやらの回収と、あらたなプリントの配布に来るまでの間、生徒たちにとっては春休みにあった出来事を語り合う絶好の機会だ。
だが、今日に限っては違った。
話題は今日の朝のニュース。
どうやら、ブラジルに隕石が落ちたらしい。それだけなら特に話題になるものではないのだろうが、落ちた質量の割に小規模なクレーターと、その真ん中に、恐ろしく深い穴ができていたらしいということがミステリー的な魅力として皆の興味を集めているようだ。
正樹としては、隕石には興味があるところだが、早朝から家事をこなし学校に来ている彼がそのニュースを見れるはずもなく、その話題に自分から乗り込んでいく勇気はなかった。
「ん?つまらなそうにしてるね、正樹。珍しい、こういう話好きでしょ?」
そう言って、笑顔で俺に声をかけてきたのは、幼馴染の天縁尊(あまより みこと)だ。
長くい漆を塗ったようなきれいな黒い髪を、ふわりと揺らしながら、おれの前の椅子に座る。その白い肌のせいで、髪の毛一本一本まできれいに見える学内一の美少女。
にんまりとほほ笑むその笑顔が、どういう訳か得意そうだ。
なんなんだ?と、思うと、手にした新聞紙をひらひらと、こちらに見せつけている。
「どうせ、朝のニュースなんて見てないだろうから?もってきたの」
無言で、新聞紙に手が伸びる正樹だったが、すっと、それは遠のいた。
「正樹、お礼は大事」
「うう、ありがとう。尊」
どうにも、昔から、尊にはかなわない。幼馴染ということで、お互い弱みを握りあっているということもあるが、尊の笑顔は逆らうことを拒ませる何かがある。
そうして、改めて、新聞に手を伸ばそうとしたとき
「お久しいなぁ!!!正樹!!!」
自分の机の横に突然赤いじゅうたんが敷かれた。
その赤い絨毯の丸められた端っこは、教室の端まで伸びていき、教壇に相当な勢いでぶつかった。
正樹は、絨毯が転がってきた方向を見たが、そこには誰もいなかった。
「どこを見ている!正樹!僕がそんな安易な事をするわけがないじゃないか!」
声は前方から聞こえた!瞬間、赤いじゅうたんの端っこが、伸びきった掃除機のコードのように急速にまき戻り、正樹の前で止まる!
「よう!」
「誰だお前…」
丸められた赤い絨毯の端から人の顔がニョキっと伸びた。
「『誰だお前?』とは、心外きわまるなぁ!君の永遠のライバル『GREAT金丸』では・な・い・かッ!!!」
ばばっと、勢いだけはよく、絨毯に簀巻きにされたままの不審人物が、立ちあがった瞬間、学校内には似つかわしくない執事服の老人が横に付き、パチンッと、指を鳴らすと、さらに給仕服の女性が二人、一人は手に花かごを持って、あたりに花を振りまき始め、もう一人は、後ろで古風なラジカセをかけながら、落ちた花を箒とチリトリで掃除し始める―律儀だ。ど~でもいいが、ラジカセから流れているのはワルキューレの騎行である、どこのブンドルだ。
「めんどくさい、死ね」
「ひどいな!お前ッ!!!」
必死に抗議する不審人物。
「いい加減、地の文の表記を金丸に治せよ!お前ッ!!!」
必死に抗議する金ナントカ。
「諦めたよ…」
あからさまがっかりする不審人物(戻る)。
「とにかくだね、僕を忘れるとはひどいんじゃないかね?去年から同じクラスだったじゃないか!」
「ああ、去年いたな、そんなやつ。で、なんでお前ここにいるんだ?」
「今年も同じクラスだよッ!つーか、一年のころからの持ちあがりクラスなんだから変わるわけないだろう!?」
「いや、おれが聞きたいのは、なんでお前がこの世界に存在してしまったのかって事で…」
「存在しちゃいけませんかねッ!?」
「ああ、ゴキブリの存在程度には感じるな」
「害虫ですかッ!?僕は!!!」
「バルサンで死ぬあたり、まだ害虫の方がましだ」
「そろそろ持ち上げてくださいッ!!!」
涙を流しながら訴える、不審人物。
「はっ、ハッ、ハクション!!!え~い、こらよっとっと」
突然、くしゃみをする不審者、ぐじゅぐじゅと鼻のあたりが赤くなっている。
「おい、汁を飛ばすな、馬鹿だ移る」
「あんた、何処まで僕が嫌いなんだよッ!!!」
それは、誤解だ。スルメイカ噛んだ後の口臭くらいには好きだというのに。
くっせぇ~。
「なんだ、お前、風邪か?」
「いや、どうやらこの歳で花粉症らしい。あんまりひどいから、完全密閉した核シェルターの中で最近暮らしてるんだけど、一向に収まらないんだ。検査しても、スギ花粉とかのアレルギー反応は出ないし…、ハッ!?もしや、僕は死ぬのか!?」
(死んでくれれば、それはそれでいいのだが、とりあえず、その花粉症の原因は今撒きに撒きまくっているオシベ付の花のせいだとなぜ気がつかない?―面白いから言わないが。しかし、核シェルターとは規模のでかい馬鹿だな…)
「あっ、ティッシュ切れてる。あ、尊ちゃん、その新聞借りるよ」
「え?」
ぱっと、尊の手から新聞をとった不審者が、それでチーンと鼻をかむ。
そのまま、クシャッと新聞紙を丸めてぽいっと捨てた。
ブチッっと何かが切れる音と共に
俺は無言で、花かごから花を鷲掴み、馬鹿の鼻の穴に限界量以上の花を突っ込んだ。
◆ ◆ ◆
一方 浅茅家
双子の弟、正樹に比べて輝樹の朝は遅い。
輝樹は、若干16歳にして、すでに極道・浅茅組の若頭を務めている。そうでもありながら、異例ではあるが、同時に彼は高校生でもあるのだ。そんな境遇もあり、輝樹には、早い朝というのは恵まれないことなのだ。
弟に比べて、身長は少し高い、顔は正樹がイノセンスだとしたら、こちらは、ワイルドな印象が持たれる。双子にしては似ていない部類だと思う。体も正樹に比べるとしっかりとしている。双子を決定的に分けたのは、やはりその生きざまだろうか?夜の世界に生きてきた輝樹という少年は、夜の世界に適応した成長を遂げたのだろう。
ぐっ、っと、大きく伸びをすると、日の日差しを浴びに輝樹は裏庭に出ていた。
欠伸とともに、首のストレッチをしていると、庭に異常なものを見つけた。
(たくっ、ここ最近、こういうくだらねぇのは無かったのになぁ)
彼の目線の先には、犬神家のワンシーンのように、地面から生えた人間の下半身が、まるで倒立でもするかのように、まっ直ぐと伸びている。
おそらく死体だろう。生きていたとしても、上半身があれだけ埋まっていれば呼吸は出来まい。
そういった異常な光景でこそあったが、夜の世界の厳しい側面を目をそらすことなく見続けていた輝樹にとっては、もはやあわてて取りみだすようなことでもなかった。
近寄ってみてみると、腐っていないし、肌はまだみずみずしかった。足から尻のラインを見たところ、女だと思う。痛々しいが、パンツにはクマのプリントがされていた。
(どうすっかなぁ、この、様子からするとすぐに匂いだすこともないだろうけど、今から学校行かなきゃなんねぇし、かたずけるのは大変そうだな…。とはいえ、見られるのも・・・)
そう思って、とりあえずガレージから、ビニールシートを引っ張り出しておく、それを適当に死体にかけておいた。
う~ん、不自然。
朝のほにゃららの様にテント張りでいかがわしい。
(まぁ、気にするほどでもないか)
とりあえず、輝樹は何かを成し遂げた気になって、満足げに正樹の用意した朝食をとると、舎弟であり、片腕でもある東路(ひがしろ)に、車を出すように言って、学校に向かった。
◆ ◆ ◆
輝樹が学校について、教室に入ると、そこには始業式をすでに終えた生徒たちが、ワイワイと騒いでいた。どういうわけか、正樹が伊神金丸(正式名称)=グレート金丸=不審人物=バカね丸の、口と鼻と目に、花を突っ込んでいる。どうしてこういう状況になったのかは、想像しがたいが、正樹が新たなスタイルの生け花を考案しようと思い立ったのなら止めなくてはならない。そのセンスは、シュワルツネッガーが、萌えキャラを演じるくらいセンスがない、と―いや、アリか?しかし、お付きの人間も、主人の生命の危機にまったる動じることなく、助けようともしないのはイタリア兵の国に対する忠誠心くらいの忠義心が垣間見える。
「おう、正樹」
「ん?なんだ、輝樹。朝飯ちゃんと食ったか?」
と、せっせと―もう詰めるところなどないと思うが―それでも隙間を探しながら、金丸に花を突っ込んでいく、正樹。
「食べたよ。つか、食わないとお前怒るだろ?」
「当たり前だ。あんな遅くまで夜中歩き回ってる不健康優良児君が、朝飯も抜いて体でも崩したら、東路の禿が増えるだろ?」
ツンデレ的優しさが垣間見えそうだが、絶賛クラスメイトを拷問中のこいつが言っても、それが優しさだと受け取れるのは尊くらいだろう。おれには到底無理だ―と、妙に納得する輝樹。ついで、言うと正樹は現在、花のおしべだけを抜き取り、目の粘膜という粘膜にこすりつけている。哀れ金丸は、自分の出した鼻水と涙でおぼれそうだ。それ以前に花束でおぼれている。
(花束でおぼれるって、きれいな言葉なのにな)
現実はかくもグロテスクなものだろうか?哲学である。
と、そこに担任の先生が入ってきた。
全員、ぞろぞろと、着席を開始する。
始業式のため。出席番号の関係上、輝樹は正樹の前に座ることになる。ついでに、正樹の後は、当然尊。そして、尊の後は、盛大に(いろんな意味で)花になった伊神金丸である。
◆ ◆ ◆
ひとしきりのプリントをファイリングすると担任の教師から、最後に新しい時間割が配られる。
そうして、HRが終わると、みんないそいそと帰る用意を始めた。輝樹にいたっては、プリントをケースに挟むだけなので常に帰宅の態勢ができている。ついでに、春休みの宿題は、組員が解いたらしい。絶対にスーパ万能人間輝樹自身が解いた方が早いとは思うが、そこんところは本当に輝樹はめんどくさがりなのだ。
なお、金丸は、いまだに花をいろんな穴からあふれさしている。それでも平然と帰宅するあたり、奴の環境適応能力は、やはりゴキブリの比ではなかったか・・・。
聞けば、花を突っ込まれてから花粉症が治ったらしい。確かに、定期的にアレルゲン(花粉)を摂取することでアレルギーをなおす療法があるが、こんなむちゃな量と用法で治るとすれば医学は、彼を人間として扱うことは出来まい。
とにかく、学校からの帰り道。
「ひゅひゅひゅ、みなひゃんごひへんひょう(ふふふ、皆さんごきげんよう)」
そういって、また赤い絨毯の上を歩いて、上から花をかけられながら歩いていく様子は、どこか強靭さを感じてしまうから不思議なものだ。
「それじゃね!正樹、輝樹!」
「おう」
「うぃ」
尊は長い髪を揺らしながら手を振った。
正樹と輝樹も軽く挨拶する。
まだまだ日は高く、桜並木からふりつもりピンク色の花びらが、きれいに尊を彩りながら、その影を小さくした。
双子兄弟二人っきりになると、正樹は聞かなければならないことがあった。
「輝樹、お前なんで進学科にしたんだ?」
そう、この進学科へは一年から二年にあがるとき、進学しない人間は普通科に変わることができる。輝樹は、組の若頭。本人もこの世界で生きていくと言い張っている。
なら、本来、授業時間の多い進学科にいる必要はないのだ。
「あん?そりゃ、お前と尊がいるからだろう?」
と、平然と答える輝樹。
「ふーん」
そのあとは、晩御飯は何にするかなどの話で盛り上がった。
◆ ◆ ◆
家に帰り、まずはじめに正樹がしたことは洗ったベッドのシーツや服を干すことだった。
裏庭に出て、大きめの物干し竿にかけていく。
「よし!」
洗濯物をかけ終わると、ぐっと伸びをした。さて、掃除を始めようか?そんなことを考えながら、ふと、みると、裏庭の端にビニールシートがテントを張っていた。
本来ならば、ガレージにあるはずのものである。
(輝樹のやつか?なんだよ、何に使ったかしんねぇけど、片づけろよなぁ…)
そんなことを思いながら、ビニールシートをめくると、あり得ないものが見えた。
クマさんパンツ…。
クマさんパンツ…。
大事なことなので二回言いました。
理解がしがたいので、全景を明らかにする…。
「おうわっ!?」
死体だ。犬神家よろしく、人間の下半身が地面から生えている。犬神家のあの名シーンは水からだったが、その表現がぴったりくる。
家がこういう家業である以上、今まで何回かこういう場面に出くわすだろうなぁ、というのは覚悟していたし、無駄に動物の死体とか送ってきたやつもいたのでパニックこそおこしていないが、吐き気がした。
(まず、警察に電話だよな。その前に、さすがにこのままじゃ酷過ぎるか…)
そう思って、掘り起こそうとする。
(たしか、スコップくらいあったよな)
そう思って、振り返ったところに輝樹がいた。
その時、正樹に嫌な発想が浮かんでしまった。
隠された死体―突然後ろに現れた輝樹―発見した正樹。
「まさか、お前がッ・・・」
「みたな・・・正樹・・・」
・・・・・。
・・・・・。
「で、悪いけど、スコップてどこにあったっけ?」
「ああ、納屋の方だったかなぁ」
なんつって。
輝樹がこの家に死体を埋める意味がわからん、輝樹ならもっとうまくやるだろう、輝樹なら、すご腕のごみ処理屋を知ってるだろう、輝樹なら死体を透明にするのなんてわけない、輝樹なら、ザオリクの一つくらい使えるはずだ―ともろもろ以下省略するが、計89項目から成る根拠から輝樹が犯人のはずはない、と正樹は断じた。
「正樹、あとから舎弟に処理させるからいいよ、掘り返すのは」
「はぁ?このままじゃあんまりだろ?」
輝樹としては、『お前のキレた時のド鬼畜拷問も相当だ』とか、昔話に出てきそうなご飯の大盛りほどに言いたいことはあったが、とりあえず従っておくことにする。
(まったく、根はいい奴め)
と、輝樹は、既にこの世界に入って亡くしてしまった感情を正樹が普通に持っていることに、ため息がつくほど感心する。
そんなわけで、死体を掘り返す。
その過程で、双子兄弟たちの頭に無数の『???』が蓄積されていくことになる。
まず最初に、掘り返す前に死体に触ると・・・。
「おい、輝樹…これ、硬くない」
そんなはずはない、少なくとも輝樹が学校に行く前に発見しているのだ…ゆうに三時間はこのまま、ビニールシートを被せていても野晒し、死後硬直が始まっていないわけがない。
とりあえず、掘っていくことにする。
ザックザックザック
「なぁ、正樹、こいつしっぽが生えてるぞ」
ちょっとほったら、パンツの間から、蒼くてフワフワしたものが出てきた。
当然、それが尻尾だとわかったのはもうちょっと先のことだが、明らかに尻の付け根から出てるような気がする(消して見たわけではないが)。しかも触ってみるとちょっと暖かい。
ごくり。
本当に、じかに生えているか確かめたくなるが、双子のメンツ的な何かがその行動を規制した。たとえて言うならそれは最終防衛ラインで、犯罪者と変態紳士との北緯38度線というか、なんだかわけのわからない感情に、手がちょっと汗ばんだ。
だが、二人は、すぐにこれが仏さんだという事を思い返し、自分の愚かしさ恥じて、今度は無心に掘り進める。
ザックザックザックザック
下乳が出てる時点で上には何もつけていない状態であるということがわかり、OTZ状態で本気で悩む正樹と、それを肩をポンポンと叩きながらなだめすかす輝樹。
「輝樹・・・僕、変態じゃないよな。死者への弔いのために掘ってたはずだよな。いやらしいことのためじゃないよな」
「何本気で悩んでんだよ、意識しすぎだお前。だから早く童貞捨てとけって言ったんだよ。女をふってばっかりいるからこうなるんだ」
「予想できるか!こんな事態ッ!」
もっともな意見である。
二人は気を取り直して掘り進める。
ザックザックザックザックザック
全部掘り当てたところで、二人はさらに混乱した。
「耳…」
「猫耳・・・」
―何故ッ!?―
出てきたのは、蒼い髪をしたパンツ一丁の猫耳美少女。
「なぁ、これなんだ?正樹」
「人形だろう、JK(常識的に考えて)」
「あるいは、新手のオリ○ント―」
「それ以上言うなよ」
と正樹は、危険なワードに念を押しておく。
だが、このままにしておくわけにもいかない。
輝樹は足を無造作に引っ張り持ち上げた。
その手に伝わった感触は、やっぱり死体とも人形とも思えないほど柔らかくあたたかい。
正樹が、興味本位で、少女の頬をつついてみた。
その瞬間。
少女が突然動いた。
あわてて手を放す輝樹!
少女は顔をぶんぶんと横に振ると、長い潜水から出てきたときのように
「ぷっはぁっ!」
と、大きく息をした。
「人形じゃない!?」
「生き返りやがった!」
少女は、長いこと土の中にいたせいか、まだ、めがしぶしぶとしており、めをこすると、目をつむったまま突然―。
「みゃあ~」
と、鳴いた。
「・・・猫?」
正樹がまの抜けた感想を漏らす。
少女はようやく、まぶたについた土を取り終えたようで、、呆けた顔で声を発した正樹を見た。
とたん、少女は得意げな顔となり、ビシッと正樹を指差し宣言する。
「みゃあは、猫でも月猫ですッ!」
この日より、世界は急速に回転し始めていたことに
兄弟は、いまだ気づいていなかった。


