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(一般質問の全文です。答弁部分はまだありませんので、議会ウェブサイトの動画をご覧下さい)


無所属・市民派、土屋のりこです。

5月に初当選し、初めての一般質問をおこなわせていただきます。
区選管からも公認いただいた、足立でただひとりの「市民派」という立場から、人間と人間の平等、そして個々人の尊厳を大切にする観点から質問をおこないます。


最初に「安心して子育てができる支援策の充実について」です。


第1に、「待機児の解消について」お伺いします。
働く若者の要望として、「子どもを出産し1年から2年ほどは自分の手で家庭で育てたい、そして育児休暇の終わる時に仕事に復帰するため保育所に預けたい」という声があります。ところが区の保育コンシェルジュに来て相談をすると、ゼロ歳児からの持ち上がりで定員は埋まるので、育休明けに入所させることは厳しいと説明されたといいます。
区は28年度予算において496人の定員拡大を掲げ待機児ゼロを打ち出しています。この施策の中で、このような若い親御さんたちの悩みを解消し、若年層が子育てを楽しみながら働き続けることのできる環境整備をおこなっていくことが必要と考えます。

①1、2歳児の保育所入所について、定員確保をどう計画しているか。年齢ごとの待機児解消見通しをお示しください。

②育児休暇明けが年度途中となる場合は多々あり、年度途中の入所需要も多く存在する。中途入所希望に対応する定員確保は、待機児ゼロを実現するには不可欠だと考えるがどうか。


第2に、「父親の育児参加への支援について」お伺いします。
イクメンプロジェクトとは、男性が積極的に育児に関わる環境づくりをめざした厚生労働省雇用均等・児童家庭局による取り組みだが、育児休業取得率は2014年度速報値で2.30%であり、全国的に見ても政府が目標とする2020年度13%には、ほど遠い現状です。
男親による育児に対しての民間調査は、50歳代~60歳代の層と比べて20歳代~30歳代層に肯定的に向き合う傾向が強いと指摘しています。また内閣府によるワークライフバランスに関する調査では、休暇取得状況は休暇取得を上司がどう評価すると感じるかに影響されるといいます。
担税力ある若年層を区内に引き入れ、生産年齢人口の増加をはかるには、こういった若年層の新しい価値観に理解を示し、働く母親を支えるため、父親の育児参加への支援をおこなっていくことが必要です。そこで伺います、

①当区職員における女性、男性の育児休業取得率はそれぞれいくらか。当区では取得日数はどういった分布となっているか。長期取得者の割合はどうなっているか、お示しください。


当区では、母親・両親学級として4回の講座が提供されており、最後の回には父親も参加できるようになっています。食事の栄養のことや胎児期にも外の環境から影響を受けることなど、出産を迎えるまでの家庭生活への気配り・心構えができたと好評で、父親の講座受講回数を増やして欲しいとの要望は根強くあります。

②共働き家庭が増える中で、父親の子育て環境に対する支援をより拡充すべきだがどうか。また広報やウェブサイトで掲出すべきと考えるがどうか。


第3に、いわゆる「情緒障がい」特別支援教室についてお伺いします。
東京都が平成30年度までに全都の公立小学校に、情緒障がいに対応する特別支援教室を設置する方針を示したことを受け、当区においても平成28年4月から順次各校に設置されていくこととなりました。
来年度は区内の小学校のうち23校をモデル地区・実践研究校として先行実施の準備が進められています。
28年度からの一斉導入を準備する葛飾区では、区立小学校49校に対し現行の「通級」指導学級・設置校は7校と当区と比べ充実している現状があり、この7校を拠点校としながら特別支援教室設置を進めていくといいます。
葛飾区より面積も広く人口も多い当区には69校公立小学校があるが、通級は鹿浜五色桜、保木間、辰沼と3校しかなく、千住地区には1校も置かれていない現状です。
特別支援教室への移行が目前に迫る中、体制や家庭と学校の連携など具体的な説明を求める声を多々耳にします。

①特別支援教室設置に向け、平成27年度一般会計補正予算(第3号)に計上された5,000万円の予算によって、どのような整備が進んでいるかお示しください。

現行約200人の児童が通級に通っているが、新制度移行により新たに約200人の児童から特別支援教室へ申し込みがありあす。これまでの当区の通級は、手厚い教師の指導体制があり、個別指導と少集団指導を組み合わせた丁寧な指導がされ、保護者の方の信頼を培ってきました。この蓄積をいかに特別支援教室への移行にあたり維持・発展させることができるか、問われているところです。これまでの2倍、約400人と特別支援教室利用児童が増えるにあたり、これまでの手厚い指導をどう継承するか、保護者の期待に応える行政の手腕が求められます。

②必要となる教員数は倍加するがことが見込まれますが、巡回指導員の配置について都の方で確保の目処はついているか。また、区の把握状況をお伺いします。

③現行の通級のよさである個別指導と少集団指導を組み合わせた指導体制は、すべての特別支援教室において維持されるのか。また、申し込み児童の少ない学校の場合はどう対応するのか、お伺いします。

④区は心理支援や学習支援をおこなう学校支援員の募集をおこなっています。選考要項をみると、雇用期間は平成28年4月1日から7月31日までの4ヶ月間で、更新も可能とのことだが、情緒障がい等の配慮を要する子どもたちにとっては、同じ支援員が継続して関わることが情緒の安定に大きな役割を果たし、学習効果も高めることができるものです。支援員の雇用に際しなぜ短期雇用とするのか。期間の定めのない安定的雇用とすべきと考えるがどうか。


第4に、妊婦・胎児への感染症対策についてです。
当区では、風しん予防接種助成は女性のみとされ、男性にはおこなわれていません。風しんを発症するのは9割が成人であり、そのうち男性が8割と報告があります。
荒川区では妊娠希望の女性に加えその同居者にもワクチン接種に対し全額助成が実施されています。先天性風しん症候群は罹患すれば生まれてくる子どもに心疾患、難聴、白内障などの先天異常を引き起こしますが、「予防」は可能です。

①先天性風しん症候群を予防するためには、ワクチン接種は妊婦本人が接種するだけでは不完全です。未接種の妊婦が公共空間ですれ違った人からも罹患することがあるためです。男女共にワクチン未接種世代への啓発を行なうべきと考えるがどうか。

②同居人をはじめ、男性にも風しん予防接種助成制度を整えていくべきと考えるがどうか。


第5に、被ばくから子どもの健康を守る施策についてです。
現在の区内の放射線量は発災当初と比較すれば下がり、綾瀬近辺の東北部を除いて、事故前に近い値となる地点が増えてきています。しかし、被ばくの健康影響は、初期被ばくを含め「累積」で見なければなりません。
都立 産業・技術 研究センターが、大気中・浮遊物の放射線量を測定したデータによれば、2011年3月15日午前10時台に東京都に降り注いだ放射性物質の値がピークを示しました。この時、屋外にいたのか、屋内にいたのかでも、健康への影響はかわってきます。3月15日に東京都内で初期被ばくを受けた人たち、とりわけ当時18歳以下の子どもの健康を見守っていくことが必要です。
汚染が少なく関東地方と同等程度の被ばくとされる会津地方でも小児甲状腺がんの子どもがでていること、2月15日の福島県民・健康調査・検討委員会で、2巡目の検査で新たに12人ががんないし疑いありと診断され、合計で167名、内116人が手術を終えていると報告がされました。検査対象38万人余に対して非常に高い割合です。2巡めで見つかったということは、1巡目検査では問題がなかった子どもにこの2年間で変化が起こっていることを意味しています。
関東圏で甲状腺エコー検査を実施している自治体の中でも、調査結果数を全て開示している北茨城市で、はっきり多発を示しています。18歳以下の子ども7,699人の対象者から3人の小児甲状腺がんが診断されました。状況の変化を踏まえ、我孫子市では甲状腺検査に加え血液検査にも助成をおこなうことが予算化されました。
行政が系統的に健康診断をおこなうことは、放射線・障害の全貌を明らかにすることに寄与します。チェルノブイリ事故後に、ヨーロッパで生じた健康障害が、福島近隣の関東圏では現れるのか現れないのか。人の命、健康を第一に考え、予防の原則にたった施策を講じる必要があると考えます。

①事故当時18歳以下の子どもたちの甲状腺エコー検査を、北茨城市と同等の規模で当区においても行なうべきと考えるがどうか。


第6に、子どもの貧困の数値化についてです。
2012年度日本の子どもの貧困率は16.3%と過去最低を示しました。政府は14年に子供の貧困対策大綱を策定したが、貧困率削減の数値目標は入れられず不十分にとどまっています。
当区は、子どもの貧困対策を全国で先駆けて取り組んできました。最近になり、他県においても独自性をもつ貧困対策が進みだしてきています。
都道府県単位では初の「子どもの貧困率」調査を沖縄県が行い、29.9%と全国平均の約2倍という高い割合であることが明らかにされました。
当区においても、数値で貧困を把握し、数値で改善状況を把握していくことが、実体的な貧困の克服に不可欠と考えます。

①当区における子どもの貧困率はどれほどかお示しください。

②貧困の実態を数値で把握し、改善の数値目標を出していくべきと考えるがどうか。


第7に、貧困の連鎖を断ち切る奨学金のあり方についてです。
新年度予算に、育英資金貸付事業における返還免除制度が新設されました。もう一歩、踏み込む対策を求めたいと考えます。
日本学生支援機構の学資金「貸与」制度に関しては「所得連動・返還型・奨学金制度の創設について」の第一次まとめが2月10日に示されました。
背景にあるのは、奨学金とは名ばかりで「学生ローン」化している実態であり、困難を抱えた人を経済的・精神的・肉体的に更に追い詰める深刻な状況となっている実態だ。返済の大きな負担は、自由な職業の選択、結婚や出産・子育て、親元からの独立といった大切な人生の選択肢を大きく制限する結果を生み、大きな社会問題となっています。そこでお伺いします。

①28年度当初予算で示された「償還免除」型育英資金では、成績要件4.0以上が付されていますが、経済的に困難な状況にある学生を「救済する」ための制度設計に「高い成績要件」は必要ありません。少なくとも平均的な数値で十分だと考えるがどうか。

②現行制度は、必要とする人が多いにも関わらず利用者が少ない点が度々指摘されてきました。その理由の一つに連帯保証人を複数取る制度の問題があると、利用を検討したことのある区民の方から指摘されています。人的保証を取ることは、返還困難となったときに連帯保証人も巻き込んで問題を広げるだけで貧困対策に逆行するものです。保証人条件を緩和すること、減免措置、住民税非課税者等に対する返済猶予など制度設計の見直しも進めるべきと考えるがどうか。


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次に、「公共運営のあり方について」お伺いします。

足立区に事務局が置かれる日本公共サービス研究会は「民間でできなかったことを民間でできるようにする」と打ち出し、当区においても専門定型業務の外部化が進められてきています。
区は全国自治体の先頭を切り専門定型業務の外部化に取り組んできているが、民間委託の全面化には大きな疑問を感じます。
2月22日放送のクローズアップ現代「広がる労働崩壊~公共サービスの担い手に何が」という番組は、自治体が推し進めるコスト削減の背景で、経済的に追い詰められる労働者が増えていること、地域経済に疲弊をもたらしていることが報じられ、公共サービスの担い手の問題は社会問題として関心の高まっているテーマです。

(1)まず、公(おおやけ)における雇用施策について、です。

①「民間でできないことを民間でやれるようにする」ということは、公共サービスの産業化を意味します。全国的に底辺への競争―低賃金化の下で国内消費が拡大しない状況に対し、50兆円とも言われる市場を民間大企業に用意するのが政府の狙いであり、足立区政はそれを忠実に執行してきているように受け止めています。民間委託は、区民の生活をよくする区民サービスの拡充ではなく、大企業への市場提供が優先された施策と思われるが、どうか。


②本来、自治体の公的責任を明確にした各種業務は、区民の生活実態にあわない「低位の国・基準」の欺瞞性を明らかにし、憲法25条の要求する生活水準を達成するために、地域特性を生かし独自の政策基準を設定し、横だし・上乗せの加算措置によってその実現をめざすものです。こうした業務を市場に出して産業化し、営利を追及する企業に委託すること自体が憲法や地方自治法等に違反します。実際の業務を産業化し偽装請負にならないようにするためには、自治体の専門的業務を単なる単純・定型業務として個々のパーツに分解し、行政判断の入らない業務として無理に標準化・規格化された分業労働として固定することになります。そうしてしまうと、一連の業務として、区民の生活実態に即した疑問や改善する判断が入り込む余地が奪われ、公的責任を保てなくなるのではないでしょうか。今後委託を進める中で、業務を改善し、国基準を上回る自治体独自の基準を作り出す、自治体労働者の区民の立場に立った業務の改善・創造をどう保証していくのか、問います。


③「民間でできないことを民間でやれるようにする」ことを徹底すればどうなるでしょうか。米国ジョージア州サンディ・スプリングス市は、富裕層のみが独立し作られた市ですが、市の運営にあたり、警察と消防を除くすべての業務を民間に委託し、10万人都市でありながら公務員はたった9人です。裁判長も必要な時のみ短期雇用で、時給は100ドルだそうです。そうして切り捨てられたのは、貧困層への社会サービスに他ならず、富裕層と貧困層の分断はアメリカ社会において深刻な問題となっています。当区においても、そのような究極の民間委託をめざすものなのか。民間にさせない業務はあるのか、あるなら何があるのか。その範囲と基準をお示しください。


④区は外部委託のメリットとして、人件費の抑制、高い接客水準などのサービス向上をあげますが、愛想がよくなるだけでは住民サービスが向上したことにはなりません。旧都立・日比谷図書館は蔵書の豊富さ、専門職員の豊富な知識があり、地理的便利さからも利用者に大きく貢献してきました。ところが2009年区立にかわり指定管理者制度が導入され、図書館機能は著しく低下しました。入館すると「いらっしゃいませ」と言われますが、職員は図書のことは知らず、利用者の問い合わせに答えられない。蔵書も深さ

が失われ、専門的な書がなくなってしまったと多くが嘆いています。同じことが当区の業務全般に起きてくることを懸念します。民間に委託し数年たつと公務員で業務を熟知する職員はいなくなり、委託先の業務執行をチェックできなくなってしまう危惧がある。区職員の業務スキル維持をどうはかっていくのか、問います。


⑤当区において直面する保育士不足、介護士不足などに対し公的機関による雇用創出を促進し、身分保障をおこなうことが根本的解決に必要と考えます。
前田健太郎・東京大学・大学院教授が著書『市民を雇わない国家』において分析するように、日本の公務員数は世界で最も少ない方に属します。労働力人口に占める公務員の割合は、OECD諸国では、ノルウェー30%、フランス20%、アメリカ15%と、5%程度の日本は最も低い。さらに足立区は東京23区中一番低い。加えて、外部化により公務員を減らすことは、地域における雇用の不安定化を促進するという懸念をもちます。自治体が雇用を創出すること、「市民を雇う」ことは福祉政策の一環に位置づくものです。
保育士定着策としては28年度当初予算において「住居借り上げ」や「奨学金支援」等が打ちだされています。いいことです。いいことではありますが、根本的な対策ではありません。
北欧諸国に習い、保育士の公的身分保障という「民間でできないこと」を区がすることにより、住民の生活が向上し、職業的安定を創出していくことができると考えます。教育、医療、福祉という行政の関与の強い領域において、公的労働を拡大していくべきと考えるがどうか。


(2)次に、国民健康保険業務外部委託の問題点についてです。

①資格業務においては、加入・脱退時における加入者の内容と住民票における家族構成を照合し、無保険者が存在しないことの確認、今後の扶養関係や当面の生活資金のめどなどの個人・現況の聴取、場合によれば生活保護受給へのアドバイスも含めた指導が重要です。そういった業務の横断的な対応は、委託されればどのように保障されるか、問う。


②賦課業務において、保険料算出のため各世帯、各個人の各種「所得」を把握し、課税担当課などとの連絡・調整や膨大な賦課 関係資料にふれる必要が出てきます。給付業務では、高額 療養費や一部 負担金の減免 等の「医療費」負担能力、レセプト「診療報酬」明細書の病歴・記載内容、第三者行為における損害賠償をともなう事故など、個人の特定秘密ともいえるプライバシー情報にふれることになります。委託により個人のプライバシー保持をどう担保するのか、問う。


③国民健康保険の民間委託は、皆保険制度の根幹を揺るがすのではないかと不安視する声があります。画一的な業務システムによって、本来職員が行ってきた国民健康保険法に基づいて、無保険者を出さない、医療 棄民者を出さないとしてきた公的「健康保険」制度の運用と実践が失われてしまうのではないかと考えられるがどうか。


④民間に委託するということは、区の業務が「利潤原理」で執行されることを意味します。民間企業は利益を最大限あげ、株主の利益を実現することを目的としています。区の業務を受託した企業は、受託費から人件費を主とする経費を引いた差額を利益とし、それを拡大していくことを「株式会社」として目標とします。当然人件費は抑制されるし、窓口運営においても住民サービスの向上が最優先とはされないと思われるがどうか。


以上答弁を、よろしくお願い致します。

ご清聴ありがとうございました。