以下、大和岩雄『神社と古代民間祭祀』(白水社、2009年)から引用です。

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住吉大社――星神としての筒男三神


筒男三神と韓鋤の三つ星

p.276
 住吉大社の摂社に星宮がある。祭神は国常立命になっているが、寛政10年(1798)に出版された『摂津名所図会』には、「星宮、坂之井邑にあり。祭神太白星・磐裂・根裂の三星なり」とある。この三星は、卜部兼方が『釈日本紀』に引く『天書』の、金星の太白(筒磐男)、木星の歳星(磐裂)、火星の螢惑[けいわく](根裂)である。『天書』では、『日本書紀』の軻遇突智[かぐつち]を斬って生まれた五神を五星(火・水・木・金・土星)にあてており、したがって星宮の祭神も五星にすればいいのに、あえて三星に限定していることも、筒男三神との関連を暗示していて興味をひく。


オリオン三星と航海

p.276
藤原浜成が宝亀3年(772)頃に撰したといわれる『歌経標式』に載る、久米広足の「春日山峯漕ぐ船の薬師寺[やくしてら]淡路の島のからすきのへら」という歌は、意味不明の歌といわれるが、「からすきのへら」(「へら」は「靴べら」などの「へら」と同じ)を、淡路島の上にかかるオリオン星座と理解すれば、星と航海の関連から、薬師寺が「漕ぐ船」とみたてられたと解される。