以下、『今昔物語集④』(『新編日本古典文学全㊳』、小学館、2002年、p.25〜27)より。
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巻第二十七
三条東洞院鬼殿霊語[さむでうひむがしのとうゐんのおにどののりやうおこと]第一
今昔[いまはむかし]、此[こ]ノ三条[さむでう]ヨリハ北、東[ひむがし]ノ洞院[とうゐん]ヨリハ東ノ角[すみ]ハ、鬼殿[おにどの]ト云[いふ]所[ところ]也[なり]。其ノ所ニ霊[りやう]有[あり]ケリ。
其ノ霊ハ、昔[むか]シ未[いま]ダ此ノ京ニ京移[みやこうつり]モ無[な]カリケル時、其ノ三条東[さむでうひむがし]ノ洞院ノ鬼殿ノ跡ニ、大[おほき]ナル松ノ木有ケリ。其ノ辺[ほとり]ヲ男[をのこ]ノ馬[むま]ニ乗リテ、胡録[やなぐひ]負テ行[ゆ]キ過[すぎ]ケル程ニ、俄[にはか]ニ雷電[らいでん]霹靂[へきれき]シテ、雨痛ク降[ふり]ケレバ、其ノ男[をのこ]否不過[えすぎ]ズシテ、馬ヨリ下[おり]テ、自[みづか]ラ馬ヲ引[ひか]ヘテ、其ノ松ノ木ノ 本[もと]ニ居[ゐ]タリケル程ニ、雷[いかづち]落懸[おちかか]リテ、其ノ男ヲモ馬ヲモ蹴割[くゑさき]殺シテケリ。然[さ]テ、其ノ男、ヤガテ霊ニ成[なり]ニケリ。
其ノ後[のち]、移[うつり]有テ、其ノ所人ノ家ニ成テ住ムト云[い]ヘドモ、其ノ霊、其ノ所ヲ去ラズシテ、于今[2文字:いまに]霊ニテ有、トゾ人ハ語リ伝ヘタル。極[きはめ]テ久[ひさし]ク成タル霊也カシ。
然[しか]レバ、其ノ所ニハ度々[どど]吉[よ]カラヌ事共[ことども]有ケリトナム語リ伝ヘタルトヤ。