我が道を行く
題名から想像したのは、年齢を感じさせないほどパワフルで行動的なおばあさんの話。
それは確かに合っていたが、単語の真意は別のところにあった。
作中では、「いつも優しい笑顔を浮かべて孫や家族に静かに寄り添う、おばあさんとしての理想像」をパワフルグランマと言っている。パワフル〇〇は、〇〇として世間体の良い理想像ということのようだ。
主人公は75歳の女優で、ある若い俳優の優しいおばあちゃん役として広く認知される。でも当人は、自分が有名になればなるほど「おばあさんとはこういうもの」という既成概念ができあがっていくことに違和感を覚える。
実際、本当の彼女は「こうあるべき」的な外からの圧力を全く気にしない。やりたいことをどんどんやってしまう。その傾向は作品中盤以降急激に加速していくので、そんなこともやるのね、そこまでやるのね、とびっくり&感心しながら読み終わった。
50代後半の今、75歳がどういう感じかなんてもちろんわからない。個人差もだいぶありそうな
気がする。でも、当然いまより身体能力も気力も低くなっているはず。この主人公は75歳にしては元気すぎではないか、と思う。既成概念にとらわれたくない、というところには大いに共感できた。
柚木麻子
1981年、東京都生まれ