武術の稽古を始めて、まず直面するのは、教えてもらっても、いきなりできるようにはならない、という至極あたり前の現実です。
そして、稽古を続ける中で、少し先に進んだかな、と思っても、その先にある、まだまだできない領域が見えてくる。この連続です。
言ってみれば、どこまでも続く、できない状態にいつまでも向かい続ける状態。
こうなると、すがりつきたい自己イメージが生じる余地がなくなるんですね。
何せ、意識や五感を総動員して稽古に臨んでいますが、ひたすら、できない、という現実があるだけなので。その耐性がつくように、回路を作り変えるしかない。
かくして、気がつけば、何十年にもわたって、自己との同一化を目論む為の存在であった、憧れが消え失せていた。それにまつわるものも消え去ってしまった。
そして、思うのですが、憧れがないことは、とても楽です。
お読みいただきありがとうございました。