おはようございます
あきです
三菱一号館美術館のルドン、ロートレック展の続きです
ルドン、ロートレック、ゴーギャンらその時代のアート界の寵児達が参加したのが出版人アンドレ・マルティ編纂の版画集、レスタンプ・オリジナル
「レスタンプ・オリジナル」第2年次の表紙(1894年)
レスタンプ・オリジナルとは
1983年から1985年の2年半にかけて、毎回10枚ずつ年4回、第9回まで、毎回100部限定で出した版画集
なーるほど、この版画集に参加した超個性派芸術家にフォーカスを当てたのがこの展覧会でした
ロートレックから印象に残った作品を少し
有名だし、雑誌等でどこででも見られるけれど、やはりこの大きさを感じられるのは別格
約2メートル×1.2メートル
大きいですよ
でね、気になっているのがこの左の黄色いひらひら!
なんだろう・・・
と思って調べたら、アルビのロートレック美術館所蔵のデッサンにあったのを見ると
どうやらランプを上から見た図のよう・・・
これがあるのと無いのとではポスターの印象が全然違ってくるので、やはり構図を取るのが天才的なんだな
(ジャポニスム、浮世絵の影響を受けたとしてもね^^)
この紳士の前のめりの感じ、奥方たちのちょっと後ろに引いた感じ
この場の雰囲気を切り取るのが本当にうまいなと思う1枚です
後期は、このイギリス人紳士の輪郭の刷りが空色だったんですよね
この色がまた雰囲気を醸し出していて良かったですね
なんだろうと思ったら、踊るドレスのひらりと舞う姿
躍動感とこの金箔をブラシで撒いたような刷りの見事さに見入った一枚です
常に足を振り上げ踊るフレンチカンカン
こんな平面的な輪郭だけのポスターなのに音楽と足音も聞こえそう
ジュール・ルナール「博物誌」表紙(1899年)
繊細な作品も多くて見逃せませんでした
このカタツムリの首の伸ばし方!
ロートレックは十字軍から続く旧家の御曹司
その名を汚さぬよう一時期サインを
Lautrec ではなく Treclau としていたという
アナグラムみたいと言ったら、1号に「簡単すぎるアナグラムだね」と笑われましたw
でも、このサイン「13世の椅子」のリフレインというコンテ絵でしか見つけられなかったのが残念でした
他にもあったのかしらね^^
そして、ナビ派のボナールが紹介した工房で石板画の技法を身に付けたという
こんなところでベルナールのみならずナビ派ともつながりがあったのね^ ^
ゴーギャンの珍しい自摺り作品
町田市立国際版画美術館でも見ましたが
「ノアノア」ナヴェナヴェ・フェヌア(かぐわしき大地)(1893~94年)
左:自刷り 右:ルイ・ロワ版
タヒチ時代のゴーギャンは好きでないのでこのくらいで笑
そしてルドン
ルドンの木炭の黒い作品
今まであまり好きではなかったのですが、今回むかーし昔に買い揃えたThe Great Artistを引っ張り出してみたりして
彼の人生に今までより少し深く触れてみました
生まれてすぐ親から引き離され、寂しい荒野で育ち、病弱で孤独な子供時代を経て、そのまま寄宿学校へ
内気で馴染めない彼が向かったのが絵の世界
ドラクロワの熱狂的信者のスタニスラス・ゴランにデッサンを学び、ルドンも信奉者に
植物学者アルマン・クレボーと知り合い、植物と動物の境の曖昧な部分への興味を持ち
そして奇怪な画風の版画家ロドルフ・ブレダンから版画を学びます
デカダンスの聖書と言われるユイスマンスの「さかしま」
主人公の俗世間から遠ざかり隠遁生活を送る貴族がモローやゴヤの絵と共にコレクションしていたのがルドンの木炭画でした
ここでデカダンス的、象徴的と評価されるようになったといいます
でも周りが騒いでも本人はずっと内向的なまま、大事な友人の死や幼少期を過ごした場所との決別などの不幸を経て
静かに自分なりの生活を送っていたようです
そんな生い立ちや絵の学び方を見ていくと
この顔の付いた植物は彼または彼に似たものそのものなのだと気付きます
物言えぬ、感情を表さぬ、でも生きている存在なんだよ、見てますよと静かに主張
そう考えるとどの作品も気味悪いものではなくなり、寧ろ愛おしく思えるから不思議です
ルドンの描く人の横顔も何処となく仏陀の静かに沈思する姿に似ているかと
そして評価されていろいろな人と交わるにつれ、1894年を境に花開くのが色彩豊かなルドンの絵
ドムシー伯爵邸を飾った室内壁画にウットリだったように、今回もこの屏風にウットリ♡
2号と共に小さく感嘆の声を上げてしまいました^ ^
枠が竹細工のように見えたのもあって少し東洋的
色味を抑えた琳派の作品のようにも
そしてやっぱり花の絵がいい
モロ好み♡
そしてグラン・ブーケ
3回目に訪れた時はなんとこの部屋と前室は観覧者が私一人きり…
ドムシー家の奥様になった気分でしばらくこの絵を眺めてました♪
室内を暗くしてあります
劣化を防ぐためもあるんだと思うのですが、当時の食堂は蝋燭の光だけで灯りを取るということから、当時見えたそのままの姿を再現という意味もあると前回のルドン展(2018年)で聞きました
やはり素敵でした
そして、4回目にして初めて気付いたルドンの絵
蛍光色にも似たパステルのオレンジの色味が大事なんだわと
このオレンジ色、どの絵にもすこーしずつスパイスのように散りばめられてるんですよね
他の作品を見ると蛍光塗料っぽい青色もポイントになってますね
画像だとわかりにくくてごめんなさい
その頃パリで活動した日本人画家の作品もあり、評判の浦島! 洋画排斥の時代になんとか日本的な画題をということだったようですが個性的だわ…^^;
浦島(1893~95年)
逆にこれは好きと思えたのがこちら
若い娘の肖像(1880年)
昔の絵の方が好きですわ
最後の部屋ではドニやシダネルの作品も
なでしこを持つ若い女(1896年)
月下の川沿いの家(1920年)
ドニも好きだけど、このシダネル良かったな〜♪
9年前に今は無きメルシャン軽井沢美術館でシダネル展やってたようですが
またどこかでやってくれないかな^^
でもなんと言っても最後の部屋のセリュジエのこの作品には、ルドンへの深い敬愛の念が込められていて泣きそうな気持ちになりました
消えゆく仏陀ーオディロン・ルドンに捧ぐ(1916年)
この仏陀を見守るイモリ?水の中にいるのでイモリでしょうか
自分ら後に続くものの姿?
何か意味を含ませているのでしょうね
とにかく深い海の青と光る波の銀色が美しい最後に相応しい一枚でした
日本のみならず世界中から読んでくださって、ありがとうございます。来られない方のためにもできるだけ分かりやすくと思っていますが、図録を写しただけなので、この深い海の青その他の色も思うように出なくて…本当に残念です
ネットでの検索でも難しいかな…
多分またフラリと訪れそうです^ ^
美術館前の庭も冬にシフトしてきましたね
皆様にとって素敵な1日になりますように♡